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2012年9月

就業規則の不利益変更について   2012.09.04

就業規則に書かれている賃金・勤務時間・福利厚生などの労働条件は、使用者が
一方的に変更することはできません。例えば、以下は労働者の同意が必要です。

ペナルティーによらない賃金の減額
労働時間・日数の増加
休職・特別休暇などの規定の見直し
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【根拠】
(労働契約法第9条)
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者
の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。

つまり、一方的に就業規則を変更するだけで労働条件を引き下げることはできな
いのです。
ただし、以下の様に例外があります。

(労働契約法第10条)
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業
規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程
度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等と
の交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである
ときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるとこ
ろによるものとする。
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【判断ポイント】
この場合の合理性を判断するポイントは以下の通りです。

1.労働者が被る不利益の程度

2.使用者側の変更の必要性の内容・程度

3.変更後の就業規則の内容自体の相当性

4.代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況

5.労働組合との交渉の経緯

6.他の労働組合又は他の従業員の対応

7.同種事項に関するわが国の社会における一般的状況

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「会社全体で利益が出ているのに給与を引き下げる」「福利厚生を減らす」な
ど、不利益の程度が大きい場合、不利益変更に合理性がないと判断される可能性
が高くなります。

一方で、既存の就業規則やルールが、業界水準や会社規模から見ても高待遇であ
り、そのアンバランスを是正するための変更である場合、合理性があると認めら
れることもあります。

いずれにせよ、労働条件の変更については、個別の労働者の合意を取り、または
説明をしっかりとして慎重に行うほうがよいでしょう。

以上、就業規則の不利益変更についてでした。

傷病手当金について   2012.09.04

労災でない私生活上の病気や怪我により会社を休んだ場合、健康保険から「傷病
手当金」が支給されます。



【傷病手当金の条件】

傷病手当金は、被保険者(健康保険の加入者)が以下すべての条件に当てはまっ
た際に支給されます。

① 病気やけがのために働くことができない
② 会社を休んだ日が、連続して3日間ある(いわゆる待機期間)
③ 4日目以降も休み

ただし、休んだ期間について事業主から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を
受けた場合には、傷病手当金は支給されません。



【いくら支給されるか】

支給額は、病気やけがで休んだ期間、1日につき、標準報酬日額の2/3に相当する
額です。なお、働くことができない期間について、ア、イ、ウに該当する場合
は、傷病手当金の支給額が調整されることとなります。

ア.事業主から報酬の支給を受けた場合

イ.同一の傷病により障害厚生年金を受けている場合
(同一の傷病による国民年金の障害基礎年金を受けるときは、その合算額)

ウ.退職後、老齢厚生年金・老齢基礎年金・退職共済年金などを受けている場合
(複数の老齢給付を受けるときは、その合算額)

ア~ウの支給日額が、傷病手当金の日額より多いときは、傷病手当金の支給はあ
りません
ア~ウの支給日額が、傷病手当金の日額より少ないときは、その差額を支給する
こととなります


【支給の例】

標準報酬月額20万円、9月1日~9月3日有休消化、9月4日~9月30日無給で休んだ場合

20万円÷30×2/3×27日分=119,880円

上の例で、待機期間の3日は有給・無給を問いませんので、有休消化した場合も
「待機」として扱われます。ただし、連続して3日の待機期間が必要ですので、
飛び飛びに休んだ場合は「待機」として扱われません。



【その他注意事項】

1.医師の証明について

傷病手当金の支給申請には、以下2点が必要です。

① 医師が労務不能と証明すること
② 会社が給与支払なしと証明すること

①をもらうには、証明書発行の手数料がかかります。傷病による休業期間があま
りに短い場合(例えば給付対象が1日しかない場合など)、その証明書発行手数
料を差し引くと実質的支給額が少なくなることがあります。



2.申請のタイミングについて

また、傷病手当金は、前述②のように「会社が給与を支払っていない証明」が必
要なため、給与締日の途中までの医師証明を取っても、その月分の給与締日が来
て、給与支払額が確定しなければ申請できません。できれば、会社の給与締日に
合わせて医師の証明を取ることをお勧めします。

以上、傷病手当金についてでした。

出産・育児にかかる給付金について   2012.09.04

社員の方がご出産される場合、国からどのような給付金が出るのでしょうか。



【健康保険】※協会けんぽの場合

① 出産育児一時金
この給付はいわゆる分娩費用として、出産時に一括で支給されます。金額は42万
円で、産婦人科の窓口で本人が手続きをします。この出産育児一時金は、妊娠85
日以上の出産に適用され、死産の場合等でも支給されます。また、当該出産した
方が社会保険に加入している場合も、配偶者の扶養に入っている場合も支給され
ます。

② 出産手当金
この給付は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産の予定日)以前42日
目(多胎妊娠の場合は98日目)から、出産の日の翌日以後56日目までの期間のう
ち「休んでいて且つ給与支払いがない場合」に支給されます。

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金額は、出産した方の
標準報酬月額÷30日×2/3 × 休業日数
という計算式により計算されます。
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たとえば、標準報酬月額20万円で、98日休んだ場合は
20万円÷30日×2/3×98=435,120円
が支給されます。



【雇用保険】

出産した方が過去2年間に12ヶ月以上雇用保険に加入していた場合、雇用保険か
ら「育児休業基本給付金」が支給されます。これは、「原則として子が1歳にな
るまでの期間」で、且つ「休業しており、給与支払いがない場合」に支給され、
その金額は以下の計算式にて求められます。

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産前休暇前6ヶ月の平均給与月額×1/2×休業日数
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たとえば、休業前の平均給与月額が20万円、子が1歳まで全て休業した場合
20万円×1/2×約10ヶ月=約100万円
が支給されます。実際の申請は2ヶ月に1回、管轄のハローワークに行います。

これらの給付の恩恵があることを考えると、安易に寿退社をするともったいない
ということがわかります。
以上、出産・育児にかかる給付金についてでした。

高額療養費制度について   2012.09.04

入院などで医療費が高額になった場合、健康保険制度から給付があります。

(高額療養費制度とは)
 重い病気などで病院等に長期入院したり、治療が長引く場合には、医療費の自
己負担額が高額となります。そのため家計の負担を軽減できるように、一定の金
額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。

(自己負担限度額)
自己負担限度額の計算方法は以下の通りです。

(一般の被保険者の場合)
80,100 円+(総医療費-267,000 円)×1%

例:総医療費が100万円、自己負担額30万円の場合
80,100円+(100万円-267,000円)×1%
=87,430円
30万円-87,430=212,570円が高額療養費として支給

(上位所得者の場合:標準報酬月額が53万円以上の者)
150,000 円+(総医療費-500,000 円)×1%
例:総医療費が100万円、自己負担額30万円の場合
150,000 円+(100万円-500,000 円)×1%
=155,000円
30万円-155,000=145,000円が高額療養費として支給

(自己負担額に算入できるもの)
・	保険適用される診療に対し、患者が支払った自己負担額が対象となります。
(自己負担額に算入できないもの)
・	差額ベッド代
・	病衣代
・	食費
・	先進医療にかかる費用等

(いつ申請するか)
高額療養費の計算単位は暦月ですので、一ヶ月ごとに自己負担額を計算し、前述
の基準額を超えるようであればその月ごとに申請することができます。また、こ
の高額療養費の請求時効は2年ですので、過去のものを数ヶ月分まとめて申請す
ることも可能です。
一方、長期入院などであらかじめ医療費自己負担が高額になることがわかってい
る場合、「健康保険限度額適用認定申請書」という書類を事前に出すことで、高
額療養費基準額以上の窓口負担がないようにすることもできます。

以上高額療養費制度についてでした。

従業員の健康診断について   2012.09.04

会社は従業員さんの健康にも配慮しなければなりません。自らの健康を測るため
の健康診断について、法律ではどのように決まっているのでしょうか。

(労働安全衛生法上の健康診断)
労働安全衛生法という法律では、以下の健康診断を実施することが義務付けられ
ています。

1、雇入れ時の健康診断
従業員を雇い入れる際、健康診断を受診させなければなりません。ただし、従業
員が入社日前3ヶ月以内に健康診断を受診している場合、その受診結果を証明す
る書面を提出すれば、当該項目については省略することができます。

2、定期健康診断
1年に1回、定期に健康診断を受診させなければなりません。この場合の健康診
断は原則として会社の負担で行わなければなりません。この健康診断は、従業員
の一般的な健康維持増進を目的にしているため、当該健康診断中の賃金支払いは
義務でなく、労使の話し合いに委ねられています。
必要な受診項目は以下の通りです。
① 既往歴及び業務歴の調査
② 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
③ 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力
をいう。)の検査
④ 胸部エックス線検査及び喀痰検査
⑤ 血圧の測定
⑥ 血色素量及び赤血球数の検査(貧血検査)
⑦ 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清
グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミル
トランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(肝機能検査)
⑧ 低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋白
コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査
(血中脂質検査)
⑨ 血糖検査
⑩ 尿中の糖及び蛋白の有無の検査(尿検査)
⑪ 心電図検査


3、特定業務(深夜業など)を含む勤務をしている従業員の健康診断
労働者が深夜業を含む勤務形態、又は坑内や著しい寒冷地や暑熱地で働いている
場合など特定の業務形態の場合は、その業務への配置換えの際、ならびに6ヵ月
に1回の頻度で健康診断を受けさせなければなりません。
この場合、前述の定期健康診断と違い、業務遂行のために特殊な環境下での労働
を求めている以上、その費用を会社が負担するのはもちろんのこと、健康診断中
の賃金も会社が負担するべきとされています。

4、有機溶剤や石綿などを取り扱う有害業務従事者に対する特殊健康診断
有機溶剤や石綿など特定の化学物質等を取り扱う業務に従事する労働者にはそれ
ぞれ特殊な項目による特殊健康診断を受診させなければなりません。この健康診
断についても、特定業務の健康診断と同様に会社費用負担、ならびに受診中の賃
金支払いが必要です。

以上、健康診断についてでした。

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