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2015年7月

完全歩合給の給与制度の問題点   2015.07.31

最近では実力主義・成果主義を重視する会社が増えてきました。 会社の本音としては利益を生む人材にしかお金を出したくないということでしょう。完全歩合とはつまり、働いて成果を上げた分だけ一定の計算によって給料が支払われるというものです。

 

しかし日本の法律に照らし合わせてみると、完全歩合給というシステムは労働基準法違反になってしまいます。

 

○完全歩合給は違法か

 

完全歩合給という労働条件で求人をかけている会社を見ると、ほとんどの募集条件が「営業」あるいは「販売」であるが、物が売れなければ給料もゼロにしたい、という会社の都合を表していると言えるでしょう。しかし、日本の法律では利益が全く得られなかったとしても、働いた労働者に給料を支払わないということは許されません。

 

法律では、「売っただけお金を得ることができるというルールで働いている労働者について、会社はその人が実際に働いた時間分についても最低賃金額以上支払わなければならない」という決まりがあります。従って、その人のおかげで会社が儲かったかどうかに関わらず、働いた人に対して会社はその分のお金を支払わなければならないのです。

 

 

○最低賃金額とはどのくらいの金額なのでしょうか。

 

上記における最低賃金は地域別・職種別に1時間あたりの最低額が決まっています。従って歩合給の仕事で成果を上げられなかったとしても、会社は労働時間×最低賃金という最低限の金額を労働者に対して支払う必要があることになります。

 

 

○「最低賃金」ではダメな場合も

 

会社は最低賃金さえ払っていればよいのかというと、必ずしもそうとは限りません。

 

なぜならば、国では「実際の給料とあまり差がないくらいの給料が保障されるように保障給の額を定めるべき」と決めているからです。

同じ会社の他の社員に比べて極端に低いような場合は、法的に問題ありと判断される可能性もあります。一般的には、休業補償と同じ通常の賃金の60%程度が給料の最低ラインと決められているようです。

昼休みの電話番は労働時間か?   2015.07.17

休憩時間と似ているのですが「手待ち時間」と呼ばれるものがあります。これは,昼休みに電話番をやっているときや、商店・飲食店などで来客を待っている時などをしている時間のことです。手待ち時間は、法律上休憩時間ではなく労働時間とみなされています。

 

自由に使用できなければ休憩とならない:

昼休みに,職場でお弁当を食べながら電話番をしたという経験がある方もいるのではないでしょうか。昼休みに電話や来客があった時,社員はすぐに対応しなければならないため,自由な時間とはいえません。社員が自由に使用できない時間は休憩時間ではなく、手待ち時間=労働時間と見なされます。

このことは、実際に電話がかかってこなかったとしても、「労働から完全に解放されているわけではない」ため、手待ち時間とみなされるでしょう。

(なお,警察官や消防士などは,その職務の特殊性から手待ち時間が労働時間とみなされない場合があります。)

 

対策

電話番が必要であれば、当番制を取り当番時間分の休憩を別途に与える、もしくはその当番時間分の賃金を支払うなどの対策が必要です。とは言え人手の少ない中小企業では対策は簡単でないかもしれません。電話番をしてもらっていることを労って、代わりに早く帰れる日は帰ってもらうなど、心理面でのケアも心がけてください。

 

掃除時間は労働時間か?   2015.07.17

社内の掃除や着替えなど、働く前の準備や後片付けの時間は労働時間なのでしょうか。

 

労働時間には次のような判断基準があります。

 

①    朝の掃除、準備

この場合、仕事前の掃除が会社に命じられていたり、当番制によってやらざるを得なくなっている場合など、会社からの命令だと考えることができる場合は労働時間となります。

ボランティアで行っている場合には労働時間になりません。

 

 

②    作業準備時間、後片付けの時間

仕事を進めるために必要な作業であれば、労働時間となります。

 

 例:デパートなど、開店と同時に全員が職場につき、お客様を迎えるための開店準備作業をする場合や、閉店後、翌日の仕入れを決めるために後片付けを兼ねて売上と在庫を計算したりする場合など

 

 この場合も労働者の意思で業務を行う場合は労働時間になりません。

 

③    更衣時間

会社内において着替えを行うことを会社から強制されている場合には、

会社の命令であると考え、労働時間となります。

 

④    仕事前の朝礼の時間

仕事前の朝礼の時間に関しても、「会社の命令なのかどうか」で判断されることになります。

また、命令ではないにしろ朝礼に参加するかどうかで会社からの評価が変わってくる場合は労働時間となります。朝礼で当日の仕事の説明をする場合にも同様です。

 

以上をまとめると、準備や後片付けを労働時間とするかどうかは、会社に命じられたことか、仕事を進めるために絶対に必要なことかどうかで変わってくるという事です。

 

仕事が始められる状態で始業時間になり、終業時刻になって後片付けを始めるのは当たり前のことのように思えます。

 

しかし、そのための準備や片付けの時間が労働時間に当てはまった場合、給料の支払いが必要になってしまいます。労働時間を決める時には、「世間一般の常識」だけではなく、このような「法律で決まっていること」があることに気をつけましょう。

割増賃金について   2015.07.10

 労働者は労働が1日8時間を超えた時間(時間外)について、通常の賃金の計算方法よりも割増してお金を受け取ることができます。また午後10時~午前5時の深夜時間に働いた時間についても同様です。この場合の計算方法は以下の場合に分けられます。

 

①    1日8時間を超えた労働時間が1ヶ月60時間以内の場合→2割5分以上で計算

 

②    1日8時間を超えた労働時間が1ヶ月60時間を超えた場合→5割以上で計算

※中小企業については適用が猶予されているため2割5分以上

 

③    午後10時~午前5時に働いた場合→2割5分以上で計算

 

④    法定休日に労働させた場合→3割5分以上で計算

※法定休日:労働基準法などの法律で決められた休日のこと。

 

割増するお金の計算のベースとなる賃金には、家族・通勤手当などの賃金は入れません。

 

 

例:会社指定の労働時間が午前8時から午後5時(休憩1時間)までの実働8時間、

1か月45時間、1年360時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を3割

とする大企業の場合

 

 ○1か月45時間以内の時間外労働について

 

17時から22時→1時間当たり賃金×1.25 (時間外労働)

 

22時から5時→1時間当たり賃金×(1.25+0.25) (時間外労働+深夜労働)

 

5時から8時→1時間当たり賃金×1.25  (時間外労働)

 

 

 ○1か月45時間超~60時間以内又は1年360時間超の時間外労働について

 

 

17時から22時→1時間当たり賃金×1.30 (時間外労働)

 

22時から5時→1時間当たり賃金×(1.30+0.25)(時間外労働+深夜労働)

 

5時から8時→1時間当たり賃金×1.30(時間外労働)

 

 

 

○1か月60時間超の時間外労働について

 

17時から22時→1時間当たり賃金×1.50(時間外労働)

 

22時から5時→1時間当たり賃金×(1.50+0.25)(時間外労働+深夜労働)

 

5時から8時→1時間当たり賃金×1.50(時間外労働)

 

 

○法定休日労働の割増率

 

5時から22時→1時間当たり賃金×1.35(法定休日労働)

 

22時から5時→1時間当たり賃金×(1.35+0.25)(法定休日労働+深夜労働)

 

 

学生が内定を辞退した場合、内定者への損害賠償請求はできるか   2015.07.10

内定辞退は会社にとって困ったことですが、内定辞退について学生に損害賠償請求ができるかというと、厳しいのが実情です。

 

内定は「解約権を留保した始期付雇用契約」という法的な性格があります。

入社日(例えば4月1日)から働くという『始期』と、従業員として不適格であると入社日前に分かった場合には、会社が内定を取り消すことができる『解約権』が含まれています。つまり内定は、期限や会社の解約権などの条件が付いた雇用契約であると言われています。

 

したがって内定辞退についても普通の雇用契約の対象と同じように考えることができます。

 

雇用契約終了は2週間前に言えばよい

契約期間が決まっていない労働契約では、2週間前に会社を辞めることを伝えれば、会社を辞めることができます。

従って、内定した場合でも、学生は入社の2週間に入社を辞めることを会社に伝えれば入社を取りやめることができます。この場合、学生の会社に対する損害賠償は発生しないでしょう。逆に2週間前という期限を守らず、突然内定を辞退して、会社に損害を与えてしまった場合、会社に対して損害賠償を支払わなければならない可能性があります。ただ、まだ働いていない入社前の学生が内定を辞退したからといって、すぐに会社に大きな損害が出る可能性は低いです。なので、学生に対して損害賠償が命じられることは珍しいと考えられます。

 

学生が入社直前に内定を辞退したとしても、会社に損害賠償しなければならない場合は珍しいですが、社会の常識からいって、できるだけ早く会社に辞退の旨を伝えるにこしたことはないでしょう。

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