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2013年11月

着替えの時間は労働時間か   2013.11.28

始業前、会社の制服に着替える時間、または仕事が終わって私服に着替える時間は労働時間にあたるのでしょうか。

 

例えば、始業時刻が9時であれば、早めに出社して制服に着替えるというケースは珍しくありませんが、その着替え時間について労働時間と見なされれば、時給相当分の支払いをしなければなりません。

 

裁判例上、着替え等準備時間については以下のような解釈がなされています。

 

【「三菱重工長崎造船所事件」(最高裁平成12.3.9判決)】

この裁判は、作業服への着替え時間が労働時間に該当するかどうかを争ったものですが、これによると、

労働時間に該当するかは「労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否か」により客観的に定まるもので、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないとしています。

判例によると「労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当する」と、あります。

この考え方によれば、

 

①  着替えることが労働の準備にあたる行為で、

②  職場で着替えなければならない状況で、

③  使用者から義務付けられている場合(従わない場合のペナルティがある場合も含む)

 

は、労働時間ということになり、その時間の賃金を請求できることになります。

 

【周辺的行為については当事者間で定めるという考え方もある】

一方で、準備や片づけ、着脱衣などの行為を直接的労働とは分けて考え、当事者間で労働時間であるか否かを取決めできるという解釈もありますが、裁判の場では前述したように「客観的な状況がどうであるか」を優先される可能性が高いといえます。

着脱衣や事前掃除などの行為については、このように労働時間性を主張される可能性があることを意識したうえで、指揮命令を行うことをお勧めします。

 

 

 

社員が行方不明になった場合の対処法   2013.11.27

社員が行方不明になった場合には、当然まずは安否確認、状況の把握に努めてください。

本人への連絡は電話、メール、書面などの方法で手を尽くし、加えて親類などに対しても現状の伝達をするべきでしょう。

 

連絡の手順

電話やメールで一向に連絡が取れないのであれば、特定記録郵便など受け取りを証明できる方法で書面連絡を試みましょう。書面内容としては

 

・  連絡が取れなくて苦慮している旨

・  担当者宛に連絡を求める旨

・  受け取りから相当程度余裕を持った期限を設定して、期限内に連絡がない場合は、退職取り扱いとなる旨

 

を盛り込むとよいでしょう。

本人への連絡が付かない場合は、念のため同様の連絡を親類に対して行うと尚よいでしょう。

 

手を尽くしても連絡が取れない場合

この場合は、就業規則の定めに従い退職処理をすることもやむを得ません。

このときには就業規則上の規定が重要になります。2週間以上の無断欠勤に対して「解雇」取り扱いとする旨規定する事もできますが、実際に解雇となると「客観的合理性」が求められるため、後で本人が出社してきたときに合理性で争うことになる可能性が残ります。解雇に対しては法的制限が多く有るため、できれば「出勤の意思がないものとみなして自己都合で退職取り扱いとする」方向で規定整備をした方がよいでしょう。

行方不明者に対応するためには、具体的に就業規則に以下のような規定を定めます。

 

例:社員が次の事項に該当した時は自然退職とする

原因の如何を問わず、社員が会社に届出た連絡先にて会社との連絡不能となった状態(行方不明)が2週間以上経過したとき

 

ただし、長年真面目に勤務してきた社員と、入社間もない社員とでは、同じ行方不明でも意味が違ってきます。事案により個別に検討しましょう。

給与の引き下げ方   2013.11.20

いったん決定した給与を引き下げることは簡単ではありません。

労働条件の一方的な不利益変更はできないため、社員の同意を得ることが求められます。また、実施する場合には、引き下げの必要性につき、合理的な理由を説明しなければなりません。

 

合理的な理由とは

給与引き下げも止む無しと言うためには、単に業績不振というだけでは十分でなく、あらゆる手を尽くして給与引き下げを避けようと努力をしたがそれでも避けられなかったと客観的数値で説明できなければならないと考えましょう。

具体的には、給与引き下げの前に

 

・役員報酬のカット

・残業の抑制

・賞与の減額、カット

・人件費以外の経費削減

 

のような対策を行った上で、最終手段として給与引き下げを行うと、その合理性を説明しやすく、従業員の同意も得やすくなります。

 

同意はどのように取り付けるか

 同意は、原則として全員の個人同意が必要となります。同意書を作成する場合には、①手当ごとの細かい変更金額や、②変更日を記載するようにしましょう。

また、本人の氏名欄をパソコンで印字すると、いかにも会社側が同意を前提で用意したように見えるため、できれば本人の自署をしてもらいましょう。

※自社に労働組合がある場合には組合との団体交渉を経て労働協約を締結すれば、個人同意は必要ありません。

 

手当のカットはしやすい

基本給を下げることは難しいですが、手当を支給基準に従ってカットすることは合法です。例えば重要な職務を担当する社員に「特殊勤務手当」を支給していた場合、重要職務がなくなった場合は、当然に手当をカットすることが出来ます。経済情勢の変動に柔軟に対応できるよう、手当をはじめとした給与制度の見直しを検討されるのもよいかもしれません。

 

派遣社員が仕事中にけがをした場合の派遣先会社(受け入れ会社)の対処法   2013.11.19

派遣社員の労災は、「派遣元会社」が適用されます。

派遣社員が仕事中にケガをしたり、仕事が原因で病気になってしまったりした場合には、派遣会社の労災保険を使うことになるので、労災の給付関係申請は派遣元会社に任せてください。

 

ただし、実際に派遣社員が安全・健康に働くことができるように配慮するのは、現場を監督している「派遣先会社」の責任であることに注意が必要です。

派遣先会社の責任としては以下のようなことがあります。

 

1、労働基準監督署へ労災の報告義務

派遣社員が労災に遭った際は、正規の従業員と同じように、労働基準監督署へ労災が起きた旨を報告しなくてはいけません。とくに4日以上の休業を伴う労災の場合は、死傷病報告書という様式の届け出を速やかに行ってください。

 

 

2、労働基準監督署の立ち入り調査対応義務

労災が発生すると、労働基準監督署が状況確認のために会社へ立ち入り調査を行うことがあります。これは、安全配慮義務違反がないかを調査される趣旨のもので、とくに大きな労災事故が発生した場合に行われます。

 

労災の報告義務に違反すると「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」ということもあります。派遣受け入れ会社としては、悪気なく労災報告を忘れてしまうこともあるようです。現場での安全配慮義務、ならびに労災の報告義務は派遣先会社にあることを十分認識してください。

 

 

 

社員の副業を禁止してよいか   2013.11.08

副業については、法律の制限はありません。つまり会社が許可すれば社員が副業を行うことはできます。しかし、社員は労働、つまり働くことの対価として給与を受け取っていますので、対価にふさわしい労働力を提供する義務があります。

その意味で、副業の疲れなどにより本来期待する労働力が提供されないような場合、会社はその副業を禁止することができます。

 

副業を禁止する場合、就業規則の服務規定にその旨の文言を明記しましょう。服務規定に入れておくべき内容は例えば以下の通りです。

・健康に留意して、良い心身状態で勤務するように努めること

・会社の許可なく他社の役員、従業員又は個人事業主となり、営利を目的とする業務を行わないこと

・会社の許可なくアルバイトなどをしないこと。ここでいうアルバイトとは、営業上の技術を使用して個人的に報酬を得る行為を含む

 

就業規則上で、許可のない副業を禁ずるよう規定し、許可を求められた場合はその副業が

 

①    疲労などにより本来業務に支障を与える程度

②    本人の家庭事情

③    副業の内容が会社になんらかの不利益を与える可能性(情報漏えい、コンプライアンス的観点など)

 

以下の視点で見て許可に問題ないかを審査検討するとよいでしょう。

 

 

 

ペナルティーについて:

副業が発覚した場合、懲戒処分を行うかについては、次のような項目を総合的に判断して行う必要があります。

 

①    副業を行うことで、本来業務にどのくらいの影響が出ているか

②    競業他社での副業かどうか

③    副業により、自社の秘密漏漏洩の危険性があるか

 

ただし、アルバイト等副業行為とあまりに釣り合わないペナルティーをしないように注意する必要があります。懲戒解雇が有効となるような副業行為は、背任的に自社のノウハウを漏えいさせている場合や、競業行為を意図的に行うような悪質なものに限られるでしょう。

 

なお、副業を許可制や禁止にしている場合でも、パートや短時間勤務者について、別段の配慮が必要となります。これらの社員は、その雇用形態上、他社との「掛け持ち」を想定しているケースもあります。正社員の副業とは違った基準で、ある程度副業を認めてあげる配慮が必要でしょう。

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