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2016年11月

退職勧奨と解雇の違い   2016.11.30

退職勧奨とは、会社からの労働契約解除の「提案」を言います。提案するのも自由であると同時に、その提案に社員が応じるかどうか(退職するかどうか)は当人の意思にまかされ、社員が「合意」することをもってはじめて退職となります。

 

一方、解雇は本人の意思に関係なく「一方的に」労働契約を打ち切るものです。一方的な契約解除であるため、法律で「客観的合理性と社会通念上の相当性がないと解雇無効」と、その要件が厳しく設定されているというわけです。

 

上記のような違いがあるため、退職に関する平和的解決のために退職勧奨措置が取られることが少なくありません。ただし、両者には明確に定義に異なりがありますが、処分が用いられる場面は似ています。どちらも「やめてほしい事情がある」わけです。

 

退職勧奨とはそもそも退職を強要するものではないため、原則として制約はありません。どんな事情であっても構わないわけですが、実際には多くの労働者は給与収入が唯一の生活手段でしょうから、退職勧奨により退職を提案する場合、それなりの事情(会社の経済事情、人員過剰、業務への適性など)を説明し、理解・納得してもらう必要があります。

 

ただし、退職することを説得するための手段、方法が「社会的相当性を欠く」場合は、違法な退職勧奨とみなされることがあります。

 

社会的相当性を欠く退職勧奨とは、次のようなものです。

 ・強迫、詐欺に類する行為があった場合(部屋に閉じ込めて説得したり、大声で怒鳴ったりした場合)

 ・暴力行為があった場合

 ・仕事を減らすなど、嫌がらせ行為があった場合

 ・退職を断っているのに執拗に説得を繰り返す場合

 

違法な退職勧奨による退職は、「無効」もしくは「取り消される」こととなります。専門家の意見を聞きながら慎重に行う方が良いでしょう。

会社のお金を横領・窃盗した社員の取り扱い   2016.11.29

現金を取り扱う部署では、従業員の金銭上の不正にも特に注意しなければなりません。また、会社の備品を不正に持ち帰るような行動も取り締まる必要があります。従業員が現金を横領したり、会社の備品を盗んだりしたことが発覚した場合、会社はどのように対応すればよいでしょうか。

 

まずは事実確認

当然ながら、横領や窃盗が事実であるかどうかを確認することが最も優先します。確たる証拠がない段階で問い詰めた場合、しらを切られ、不正の隠蔽をされてしまう可能性もありますので、しっかりと調査をしてください。

証拠が確かに存在する場合は、当人と面談し、不正が事実であることを認めさせる必要があります。事実を認めさせる方法としては、口頭でなく「顛末書」など書面で行うことが望ましいでしょう。顛末は「横領・窃盗時期、回数、金額、方法、使途、返済の意思の有無、返済の時期、方法」など、できるだけ詳細に書かせるとよいでしょう。

 

処分決定

顛末書並びにさらなる周辺事実の調査をした上で、当人に対する処分を決定します。処分が下るまでの間は、証拠隠蔽などを防ぐため自宅謹慎を命じることも検討してください。

金銭の横領や窃盗は「刑法犯」です。したがって刑事告訴するかどうかという問題が生じます。刑事告訴するかどうかは、横領・窃盗した金銭の額や頻度、横領・窃盗した金額の返済の有無などによって判断することとなります。

 

多くの就業規則には「窃盗や横領」の類の刑法犯は大きく信頼関係を損なう事案であるため、「懲戒解雇事由」として規定されています。温情で諭旨退職扱いにすることはあっても、秩序維持のため、原則としては厳しく処分を行うべき事案です。

 

いずれにせよ、慎重な調査と冷静な判断が必要ですので、社労士など専門家にも意見を聞きながら処分検討をしてください。

平成29年1月からの育児・介護休業法改正について   2016.11.28

政府が目指す「一億総活躍社会」に向けての施策として、育児や介護をしながらでも働けるようにと、平成29年1月から育児・介護休業法が改正になります。

 

育児に関する法改正

 

(育児休業改正1)有期契約労働者の育児休業取得要件緩和

今までは、契約社員については「子が1歳になった後も雇用が継続することが見込まれる場合」に限り育児休業が取得できましたが、改正により「子が16ヶ月以内になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでない場合」は育児休業取得が可能になります。つまり、更新の可能性がある契約社員については育児休業を取れるようになります。

 

(育児休業改正2)育児休業の対象となる子の適用範囲拡大

今までは、法律上の親子関係にある子のみが育児休業対象でしたが、改正により特別養子縁組の監護期間中の子や、養子縁組里親に委託されている子等も新たに対象となることになりました。

 

介護に関する法改正

 

高齢化社会の進展により、介護のために離職せざるをえないいわゆる「介護離職」など、介護の問題が大きくなっています。それを受けて、介護休業関係の法改正も行われます。

 

介護休業とは

「労働者(日々雇用される者を除く)が、要介護状態(負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)の対象家族を介護するための休業」を指します。

対象家族の範囲は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、又は、同居し、かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫です(対象家族の適用範囲は今後見直しがなされる予定です)。

 

(介護休業改正1)介護休業の分割取得が可能に

介護休業の分割取得が可能になります。今まで対象家族1人について通算93日まで原則1回しか取れなかったものが、3分割して取得することができるようになります。

 

(介護休業改正2)介護休暇を半日単位で取得可能

今まで1日単位で取得していた介護休暇を半日単位で取得することができるようになります。介護休暇とは、介護のために年間5日まで有給休暇とは別に取得できる休暇(有給・無給は会社ごとに定める)です。

 

(介護休業改正3)介護休業給付金の給付率アップ

一定の要件を満たす介護休業について雇用保険制度から「介護休業給付金」が支給されますが、その給付率が休業前給与の40%から67%にアップします。

インターネットのブログやSNSの発信を会社が取り締まることができるか   2016.11.25

ブログ、facebook、ツイッターなどSNSが普及し、ネット上にいろいろな書き込みが手軽にできるようになりました。このことにより「会社の悪口を書く」「同僚同士のいじめや誹謗中傷が起こる」「会社の秘密情報をばらす」などの新たな労務問題の発生リスクが高まりました。企業はSNSについてどう対応したらよいでしょうか。

 

ポイントは「企業秩序」:

各人には原則として憲法で保障された言論の自由がありますので、個人的な信条や感情をブログなどで表現することについて会社は制限をする立場にありません。しかし、社員には集団行動をする上で団体の秩序を守る義務が当然に課せられていると解されるため、「会社のブランドイメージを壊す」「書き込みの内容が事実に反しており、風評被害を招く」、「機密情報を漏洩する」、「社内不和を招く」恐れがある場合など、「企業秩序を乱す」場合は、懲戒処分(ペナルティー)の対象とすることが考えられます。

行き過ぎたSNSの使用に対しては、懲戒処分により抑止する方策を考えましょう。

 

懲戒の対象と考えられる書き込み内容とは、以下のものが挙げられます。

・事実に反するもの

・批判内容が社会的に相当な範囲を逸脱して不穏当な誹謗中傷となるもの

・機密情報を漏洩するもの

・上司・同僚の個人攻撃をしているもの

 

就業規則に根拠条文を追記する:

まず、就業規則に懲戒の根拠となる以下のような規定を整備します。

 「正当な理由なく、会社の名誉又は信用を損なう行為をしないこと」

 「インターネット上に、会社や会社の社員に関する事項を掲載しないこと」「秘密情報を漏洩しないこと」「犯罪行為を自慢するような反社会的動画などを掲載しないこと」 など、できるだけ禁止行為を列挙しておきましょう。

 

内容によっては会社の信用を失墜させたことを理由として、行為をした社員に対し損害賠償請求をすることも考えられます。

能力不足の社員を辞めさせることはできるか   2016.11.24

経営者・マネージャーの目から見て能力の低い社員がいたとしても、一旦雇用した従業員を簡単に辞めさせることはできません。

日本の労働基準法その他判例では解雇に対して大変高いハードルがあり、「あれこれ手を尽くしたけれど、解雇以外の方法がない」という場合でなければ解雇は認められない事情があるからです。

さらにその解雇が合理的だったとしても、30日以上前の予告または解雇予告手当が必要であるなどの付随する企業負担があるため、「解雇はできるだけ避けたほうがよい」という意識を持った方がよいと考えます。

 

この前提を踏まえた上で、能力不足社員をやめさせたい場合、実務的には最低限、次のステップを踏むことが必要です。

1. 「就業規則の解雇の事由」に、能力不足についての解雇が記載されていること

2. 能力向上のために、そのような教育的指導を複数回にわたって行ったこと

3. 配置転換、出向等を何度か行い、本人に見合った職種に就かせるよう努力したこと

4. 降格、減給などの措置を並行して、退職勧奨を行ない、状況に応じて退職加算金も考慮すること

5. 指導実績や配置転換措置などに関する事実(企業の解雇回避努力)を文書で記録・保管しておくこと

 

能力不足が採用後に発覚した場合、このように膨大な労力がかかります。ということは、採用時にできるだけ能力不足を見抜く必要があると言えます。能力不足を見抜くためには、「自社にとって必要不可欠な能力は何か、どのようにその能力を測ることができるか」を採用時に定義し、採用活動に当たることが必要でしょう。

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