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2013年7月

仕事を覚えるまでの賃金を低く設定してもよいか   2013.07.31

研修中や試用期間中など、賃金を低く設定しても、前もって求人票に記載していれば基本的には問題ありません。ただしその際には、最低賃金を下回らないように注意しましょう。

 

未経験者であって仕事が出来なくても、都道府県又は産業別の最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。2013年7月現在の最低賃金の最高額は東京都の850円、最低額は島根等の652円ですが、毎年上昇傾向にあります。これは、最低賃金で働くと生活保護受給者の収入を下回ってしまう場合があるからです。最低賃金の上昇は、大人数のパートを雇用している会社にとってはコストアップに直結する重大な問題となります。

 

しかし、最低賃金以上の例外があります。労働基準監督署からの許可を得ることで、次にあげる人は適用除外となります。

 

①    精神又は身体の障害により著しく労働能力の無い者

②    試の使用期間中のもの

③    基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち、厚生労働省令で定めるもの

④    軽易な作業に従事する者

⑤    断続的な業務に従事する者

 

また、未経験者を採用する場合には「トライアル雇用奨励金」の活用も可能です。ハローワークからの求人募集する際の助成金です。3ヶ月間の試用期間で双方のマッチングを図り、最大12万円支給されます。

未経験者、もしくは経験が少ないことが要件となっていますので、経験者の方が同業他社に転職する場合は対象となりません。なお、この助成金はハローワーク経由で求人を出し、ハローワークに「トライアル雇用が適当だと認められた」人が対象となるので注意しましょう。

 

「退職証明書」の意味と記載に関する注意点   2013.07.30

会社では、退職者や退職願を受理した従業員から請求があった場合には、すぐに「退職証明書」を発行しなければならないということが義務付けられています。

この「退職証明書」とは、労働基準法で以下の様に定められたものです。

 

根拠となる条文:

(退職時等の証明)

第22条

労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

つまり、前職で働いていた条件などを証明するものです。労働力の移動への障壁が低くなりつつある現在では、再就職先でこの退職証明書の提出を求めるケースもそう多くはないと思われますが、それでも「退職者本人が求めれば」会社はこれらを証明しなければならないという決まりになっています。

 

 

退職証明書に記載する内容:

退職証明書に記載する内容は下記のとおり法律で決められていますが、「退職者が請求していない項目は記載してはいけない」という点に注意が必要です。

 

1、 勤務していた期間

2、 業務の種類

3、 会社での地位

4、 給与

5、 退職の事由(解雇の場合はその理由も含む)

 

例えば、5、退職の事由について「書いてほしくない、証明してほしくない」と退職者から申出があれば、その内容は記載してはいけないことになります。

 

ちなみに、退職証明書を請求できる期間が決まっています。

請求できる期間は退職後2年以内です。

この点で、退職しても2年間は、元従業員の情報は保管しておかなければならないということになります。

 

ノーワーク・ノーペイの原則   2013.07.20

労働者の労働に対して、会社は給与の支払い義務があります。逆に労働がなかった部分に関しては、会社は給与を支払う必要はありません。これをノーワーク・ノーペイの原則といます。従業員が遅刻や欠勤をした場合、会社はその部分に関し、給与を支払わなくても良いのです。

 

公共交通機関が原因で遅刻をした場合は、遅刻扱いにしないという会社もありますが、法律でそのように取り扱うことが定められているわけではありません。従って、どのような理由であれ、遅刻分の給与を支払わないことに問題はありません。

しかし、「遅延証明書があれば遅刻扱いにならない」と考えている場合が多いので、事前に周知させておくことが大切です。

 

しかし、このノーワーク・ノーペイの原則にも例外があります。「働けない原因」が会社にある場合です。もともと、出勤予定であったのに働けなくなると、従業員は1日分の給与を受け取ることが出来ず、給与がもらえないことは従業員の生活を脅かすこととなります。よって、休業の責任が会社にある場合には、1日につき平均賃金の60%以上を「休業手当」として支給しなければなりません。

 

「休業手当」の支払い義務が生じるのは、「働けない原因」が会社にある場合にのみです。地震や台風などの天災事変の不可抗力によるものや、法令に基づく休業(新型インフルエンザに罹患した従業員を休ませる等)は、会社の責任ではないので、「休業手当」の支払いは必要ありません。

 

では、経営悪化によって従業員を休ませる場合はどうでしょうか。原料や資金不足による休業、親会社の経営難により資材が獲得できず休業、監督官庁の勧告による操業停止、いずれも原因は会社にあるとされます。したがって、経営悪化の休業は「休業手当」の支払い義務が生じます。

 

以上、ノーワーク・ノーペイの原則についてでした。

仕事中にケガをした場合の対応について   2013.07.19

仕事中にケガをした場合は労災となります。

従業員が仕事中にケガをしたり、仕事が原因で病気になった場合、これは「業務上」の災害となります。どのような場合に「業務中」となるのでしょうか。

 

業務上の判断基準:

「業務上」かどうかは次の2つで判断します。

1、 業務遂行性

仕事をしている最中であったか

2、 業務起因性

ケガや病気の原因が仕事にあるか

 

補償内容:

労災には例えば下記のような補償があります。

・労災で病院にかかったときの診察料

・その間会社を休んだ際の休業補償

・障害を負ってしまった場合や死亡してしまった場合の金銭的補償

 

労災はアルバイトも対象となるか:

労災の対象となる従業員はパートタイマーやアルバイト、月1回しか勤務しないような従業員までも含まれます。

 

判断が難しい「病気」の労災認定:

ケガであれば、すぐに労災かそうでないか判断がつきやすいですが、問題は病気です。

たとえば、勤務中に脳梗塞で倒れてしまったとき、その原因が仕事なのかすぐにはわかりません。近年注目されているうつ病などの精神疾患もその判断が難しいでしょう。

病気による労災認定については、長時間残業やパワハラ・セクハラ等ともつながる問題であるため、慎重な対応が求められます。

 

労災をかけていれば安心とは限らない:

会社には労災加入義務だけでなく、労働者の安全に気を付ける義務(=安全配慮義務)があります。

この意味で、労災が起きてしまった場合、「労災=会社が安全に気を付けなかった責任がある」という図式が成り立ち、特に障害や死亡にまで至ってしまった場合、安全配慮義務違反という理由から、本人やその家族から損害賠償請求をされる可能性があります。この場合損害賠償額は近年特に高額化する傾向にあるため、安全配慮にも十分に気を付けたいところです。また、労災上乗せ補償などの保険加入も検討してみてください。

通勤途中の災害も補償されます。

 

社会保険調査では何を調べられるか   2013.07.10

社会保険調査とは、年金事務所が会社に対して社会保険料を適切に納めているかを確認する調査です。この調査は、加入漏れや給与変更に伴う保険料変更手続きのし忘れなどの不適切な処理を発見し、正しい保険料を徴収するために行われます。

調査で確認される主なポイントは、①加入漏れと②報酬金額です。

 

(①加入漏れの確認)

まず、タイムカードから出勤状況がチェックされます。社会保険の加入基準は正社員の4分の3以上ですので、基準を超えて働いているパートがいないかチェックされます。一般に正社員は法定労働時間上限の「週40時間労働」のことが多く、この4分の3である「週30時間以上」働いている形跡がある場合、加入漏れの可能性を指摘されるでしょう。

さらに、源泉税納付書、賃金台帳、算定基礎届などの過去の届け出書類から、社会保険に加入すべき社員がきちんと加入しているかチェックされます。例えば源泉所得税納付書で30人の給与支払実績がありながら、社会保険加入者が10人であるなら、残り20人が社会保険非該当であるかを説明できなければなりません。

 

(②報酬金額の適性の確認)

また、報酬金額が正しく届出されているかも要チェックです。例えば給与額が30万円でありながら社会保険の標準報酬月額が20万円であるなら、その10万円の差額は指摘を受ける事項となるでしょう。

 

未加入者が発見された場合、過去2年遡って保険料負担が発生することがあります。保険料は本来、会社と社員が折半するものですが、会社の不手際で未加入であった場合、社員から折半の同意を得られるかはわかりません。

調査で指摘されたことを無視し続けた場合は、最悪財産を差し押さえられることがあります。無視をした以後は立ち入り調査の対象となり、ずっと目を付けられます。調査の結果、多額の保険料納付義務が発生したものの支払を無視し続ければ、差し押さえの可能性もあります。

 

会計検査院の調査

また、年金事務所が独自に行う調査のほかに、会計検査院の調査もあります。会計検査院の調査は、年金事務所が適切に業務を行っているか調査するため、非常に厳しくなります。社会保険調査の案内通知書を見れば、年金事務所か会計検査院のどちらの調査かが判断できます。会計検査院の場合、「今後加入を検討します」という回答は通りません。その場で書類を書かされる場合もあり、経営が苦しい会社にとっては死活問題となります。

社会保険調査に当たった場合上記の調査項目を中心に事前確認をしてください。

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