2012年5月
解雇予告手当とは何か① 2012.05.23
労働基準法は、解雇に「合理的な理由が必要である」と「予告が必要である」という二つの要件を定めています。これらは、解雇には労働者の生活の安定を脅かす可能性があり(多くの労働者にとっては賃金が唯一の収入源である)、その点で雇用契約は特に慎重に保護される必要性があるからです。
そのうち「解雇予告」は、いわば「再就職先を見つけるための期間」を設けるものですが、次のようなルールがあります。
1、
①30日以上前に予告するか
②平均賃金の30日以上分の解雇予告手当を支払うか
③予告と予告手当を組み合わせるかのいずれかが必要である
一般に「1ヶ月前予告」や「1ヶ月分の解雇予告手当」と誤解されがちですが、正確には「30日以上」です。つまり、解雇予告時期によっては1ヶ月前予告では法律違反となり得ますのでご注意ください。
また、「解雇予告手当には残業代などの手当を含めないでよい」という誤解も起こりがちですが、計算根拠となる平均賃金の計算には残業代その他手当を含めますので、手当を除かずに計算をしてください。
因みに解雇予告手当は「精神的苦痛」「残業代」等と比べて金額が正確に算出できるため、解雇を巡る労使トラブルの際に労働者側が主張しやすいものです(退職した労働者からの「内容証明郵便」の文面に解雇予告手当がしばしば登場します)。
以上解雇予告について①でした。
解雇を損得で考える 2012.05.23
解雇を「するか」「しないか」という場面に直面したとき、 経営者・担当者は何を拠り所にその決断をすればよいのでしょうか。
解雇をめぐる事案には大抵多面性があるため、その決断は慎重に行わなければなりませんが、 それを「損得」という二元論で考えた場合には、次の各要素を対比させて考えることができます。
(解雇を是(得)とする理由)
1、下記の例のように、その者を雇い続けることで回避できるリスクがあるから
- 素行に問題があり企業秩序維持に著しい支障をきたす
- 生産性が著しく低く、雇用継続が人件費の無駄以外の理由を持たない
- 業務上外の素行不良事実を看過すると企業モラルの低下が起きる
2、財務上や、ワークフロー上の無駄が減ることで効率化を期待できるから
(解雇を非(損)と考える理由)
1、法律要件たる「合理性・相当性」が十分でない場合、解雇無効を巡る訴訟が起きるかもしれないから
2、残業代未払いなどの法律違反が明るみになり、さらなる金銭ダメージが起こるかもしれないから
3、助成金が不支給になるなどの副次被害があるかもしれないから
会社は上記を踏まえて、状況に則した判断をしなければなりません。
以上「解雇を損得で考える」でした。
解雇について①重要な2つのポイント 2012.05.10
こんにちは、カウンター&パートナーの柳原です。
今日は解雇について。
解雇について①
「日本では解雇をしにくい。だから正社員雇用は慎重にしなければ・・・」と巷で言われていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか。本稿では、解雇にまつわる法律について解説します。
解雇の有効無効については、次の二つが重要なポイントとなります。
1、解雇は、「客観的にみて合理性があり」、「社会通念上の相当性がある」ことを求められる。
客観的な合理性の有無とは、『解雇という重いペナルティーに見合うほどの事実があったか』と解釈できます。その事実は「労働者の問題(横領や無断欠勤など)」と「会社の問題(業績悪化など)」に分類され、過去の判例を拠り所にしてその合理性を判断することになります。
また、社会通念上の相当性とは、「いわゆる一般人10人に解雇の是非について聞いてみたとして、8人~9人が『解雇止むなし』と考えるかどうか」と解釈できます。
上記を満たさない場合は、解雇無効(効力なし)となり、その人との雇用関係は継続することになります。
2、解雇が有効だったとしても、多くの場合「事前予告」をしなければならない。
1の要件をみたす解雇であったとしても、急なクビをするとその人の生活に支障がでる(かもしれない)ために、30日以上前の予告が求められるわけです。※予告についてはさらに詳細な決まりごとがあります。
「合理性・相当性」と「予告」。労使トラブルを防ぐためにも、解雇のことを考えるときにはまず思い浮かべて欲しいポイントです。
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