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2015年2月

自主的な残業に対して残業代を支払わなければならないか   2015.02.22

会社が指示していないのに残業をした場合でも、残業手当の支払いが必要なのでしょうか。

 

労働時間の定義:

労働時間とは以下のふたつを指します。

①会社が働くように義務付けている時間

②形式的には会社は働くことを義務付けていないが、実質的には義務付けているのと同じとみなされる時間

 

①の時間はいわゆる「所定労働時間」です。9時から18時まで勤務、休憩12-13時であれば、「9時から12時まで」、「13時から18時まで」が①の時間に当たります。

 

②は例えば以下のような時間を指します。

・昼休憩時間中に電話番をさせている時間

・始業前に作業着に着替える時間

・始業前の機会の点検やパソコンの立ち上げ、終業時の後始末の時間

・強制参加の研修や教育の時間

 

これらのいずれかに該当すればそれは労働時間なので、会社はその時間分の給与を支払わなければなりません。

 

では自主的な残業はどうかというと、たとえ会社が残業を命令していなかったとしても、「黙示の指示」をしている場合は労働時間に当たるとされています。

 

黙示の指示とは次のような状態を指します。

・所定時間内ではとうてい終わらない量の仕事を与えている

・会社が残業状態を知りながら黙認している

 

この場合は、たとえ会社が命令していない残業であっても労働時間となり、残業手当の支払いが必要になってきます。この「黙示の指示」をしている状態でないか、自社の状況をチェックしてみてください。

 

 

協調性のない社員を解雇できるか   2015.02.20

社内行事に参加しない、協力して行うべき掃除などの雑務をしないなど、協調性がない社員を解雇することはできるのでしょうか。

 

一般的には、単に協調性のなさをもって解雇することは難しいでしょう。

判例では「協調性のないことが業務を遂行する上で重大な障害となっている状態」でなければ解雇は難しいとしています。

「協調性の無さが重大な障害である」とする場合は、以下の点に注意しなければなりません。

 

前提:

就業規則などの解雇理由に「協調性がない場合は解雇とする」などの規定があること。

 

必要なポイント:

1、その行為が繰り返し行われていること

2、その行為が起きた日時を記録していること

3、会社がその者を教育・指導するなど、改善のための努力を行っても改善が見られないこと

4、会社が教育・指導をした事実・日時を記録していること

5、その行為により業務の遂行に具体的な支障があった事実を記録していること

6、その者より勤務態度が悪い者を不問にしていないこと

 

裁判では会社には広く従業員を教育指導する義務があると考えられます。会社として「これだけの指導をして協調性を促したのだが更生せず、結果的に○○という損害や支障が出た」と言えなければ解雇は難しいと考えてください。

 

一方で、協調性とは何かを定義し、その行動を客観的に評価した結果昇給・昇格などの処遇に影響させることはできます。協調性のなさが会社にとって問題であることを理解させるには、人事評価制度とリンクさせて指導することも有効でしょう。

 

 

 

 

 

法定労働時間の原則と例外②   2015.02.11

毎月月末は忙しいが、月初から中旬は忙しいような業種の場合、「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間の原則だけでは柔軟な対応ができません。そのため労働基準法では、「変形労働時間制」という例外的な制度を認めています。

変形労働時間制は以下の種類に分かれます。

 

1、1ヶ月単位の変形労働時間制

「1ヶ月単位で労働時間を日ごとに設定し、1カ月平均で見れば法定労働時間を上回っていなければOK」というものです。

例えば暦上の日数が31日の月(所定労働日数22日)において、

①    前半の10日は1日10時間働く

②    後半の12日は1日6時間働く

という月間カレンダーを定め、就業規則その他で対象者や対象期間などを定めます。

この場合①の期間中は「1日8時間、1週40時間」を超えていますが、月間平均をすると平均約39時間で、週40時間以内に収まっています。このように1ヶ月の内に繁閑の差がある業種の場合、この制度の導入が検討できます。

 

2、フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、「1ヶ月の総労働時間のみあらかじめ設定し、始業、終業の時刻は従業員が自由に決めてよいことにする。1ヶ月で締めたときに法定の労働時間を上回っていなければOK」という考え方の労働時間制です。フレックスタイム制の場合、「各自の好きに出社や退社ができる時間帯=フレキシブルタイム」と「絶対出勤しなければならない時間帯=コアタイム」を設定することもできます。毎日同じ時刻に全員が出社する必要がない業種の場合、効率的に働くことができるでしょう。

 

3、1年単位の変形労働時間制

変形期間を1ヶ月超~1年とする変形労働時間制です。季節によって繁閑の差がある業種であれば効率的な労働時間を設定することができるでしょう。1年単位の変形労働時間制の場合、労使協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。

 

4、1週間単位の変形労働時間制

その他1週間単位の変形期間を定めることも可能です。小売業、旅館、料理店および飲食店の小規模事業に限り認められます。

 

変形労働時間制の導入については専門家の意見を聞きながら正しく行ってください。

法定労働時間の原則と例外①   2015.02.09

原則:

法定労働時間については原則として1日、及び1週間単位で以下の通り定められています。

 

1日       8時間まで

1週       40時間まで

 

逆に言うと、この時間を超える労働時間を設定することはそもそも違法であるということになります。例えば毎日9時から19時まで(休憩1時間)の勤務は1日8時間を超えているため原則から外れることになります。

 

例外:

ただし、この法定労働時間には以下のような例外があります。

 

①    規模や業種による例外

従業員10人未満の「商業、映画・演劇業(映画製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業」については、1週44時間までの労働時間設定が認められます。これは、週の法定労働時間が48時間だった時代の名残で、法定労働時間の短縮の影響がとくに大きいとみられる中小企業については要件を緩和する必要があったためです。詳しくは以下の業種が44時間制の対象となります。

 

商業      

卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、駐車場業、不動産管理業、

出版業(印刷部門を除く。)その他の商業

 

映画・演劇業      

映画の映写、演劇、その他興業の事業(映画製作・ビデオ製作の事業を除く。)

 

保健衛生業          

病院、診療所、保育園、老人ホーム等の社会福祉施設、浴場業(個室付き浴場業を除く。)、その他の保健衛生業

 

接客娯楽業          

旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

 

自分の事業場の法定労働時間が何時間であるかによって労務管理のやり方が変わってきますので、ご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

定額残業制導入の注意点   2015.02.05

時間管理や計算の煩わしさから、残業代を含めて基本給で支払うという方式をとることがあります。しかしこの場合、たとえ「この給料は残業代込だから」という説明を従業員にしたとしても、それだけで実際に発生した残業代を支払ったことにはなりません。残業代を定額で支払う際は次の点に注意してください。

 

1、残業代を他の給与と明確に区分する

残業代を定額で支払う場合、まず「どれが残業代相当分なのか」を明確に分けておく必要があります。「総支給30万円、残業代込」としているならば、例えば「基本給25万円、定額残業手当5万円(合計27時間分)」などの表現にあらためてください。定額残業手当が何時間分の残業に当たるのかも明記する必要があることにも注意してください。

 

2、就業規則と雇用契約書、給与明細に制度を明記する

会社のルールブックである就業規則、その他給与明細や雇用契約書にも定額残業代のルールについて明記しましょう。定額残業代は「○時間分の残業分を固定で払うという基準を定め、残業が少なくても減額なし、残業が多くてオーバーする分は別途計算して払うと」いう趣旨ものでなくてはなりません。

 

3、実際に時間管理をする

定額残業代であることを主張するには、実際に労働時間が管理され、「定額残業代で定める時間を超えているかどうか、超えているとすればどれだけ超えているか」を毎月チェックしている状態でなくてはなりません。タイムカードや出勤簿がない状態では定額残業制が運用されているとはみなされないため注意が必要です。

 

定額残業制の導入には専門家の意見を聞きながら進めましょう。

 

 

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