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2014年5月

正社員とパートで賃金格差を設けることは法律違反になるのか   2014.05.17

平成20年4月1日からパート労働法が改正され、パート社員の差別的取り扱いが禁止されましたので、パートタイム労働者の差別的な取扱いをすると労働基準監督署から是正指導を受ける可能性があります。

 

ただ、ここで差別的取扱いを禁止されているのはすべてのパートではなく、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」に該当するものだけです。その「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」に該当するかどうかは、以下の3点から判断されます。

 

①    職務内容が同じであるか

仕事の内容、責任の程度、期待される業務等から判断されます。

 

②    転勤やその他人事異動の取り扱いが同じであるか

正社員には転勤範囲に制限がなく、パートには制限が設けられていたとしても、実質的に差がない場合には同一と判断されます。

 

③    契約期間に期間の定めがないか

有期契約であったとしても、何度も更新された場合には、期間の定めがない契約と判断されます。

 

3点ともすべて正社員と同じ場合は、パートであることを理由としての差別的取扱いが禁止されます。別の言い方をすれば、1点でも正社員と異なっていれば、差別的取扱いとはみなされないことになります。職務内容が同一であるパートがいたとしても、「人事異動の有無や範囲」までも正社員と同一ということはほとんど考えられません。そのため、パートと正社員に賃金格差があったとしてもただちに是正指導を受けることは少ないでしょう。

 

ただし会社は、処遇を公正にしようとするなら、仕事の能力に合わせて賃金設定をすべきでしょう。その意味では、「パートだから」という理由での賃金格差が本当にふさわしいことかを確認してみることは労務管理上必要であると言えます。

 

 

 

 

フレックスタイム制を採用する際の注意点   2014.05.14

フレックスタイム制とは、清算期間(通常1ヶ月)において、一定の労働時間数を労働することを条件として、始業・終業の時刻を労働者の判断に任せる「柔軟さ」を特徴とした制度です。

フレックスタイム制は、通常「コアタイム(絶対に勤務しなければならない時間帯)」と「フレックスタイム(裁量により勤務できる時間帯)」とに分けて定められますが、必ずしもコアタイムを設定する必要はありません。ただ、現実的に深夜にわたるフレックスタイム設定は割増賃金支払いの面からみても運用が複雑になるため、多くは昼間の時間帯をコアタイムとし、出社時刻あるいは退社時刻の融通をきかせ、効率化を図る目的で運用されることが多いようです。

 

メリット:

この制度のメリットは、労働者の家庭環境や生活リズムに対して柔軟に労働時間を設定できる点でしょう。子育てや介護中の労働者、居住地が勤務地から離れている労働者などが、効率よく労働時間を設定できること、個人ごとの繁閑に合わせて早く帰ったり、遅く出社したりできることが利点として考えられます。

また、企業側からしても、上手に運用すれば硬直した労働時間により発生する「暇な時期のムダな時間」「忙しい時期の残業による割増賃金の支払い」などを回避できます。

 

デメリット:

一方で、フレックスタイム制のデメリットは、時間管理が煩雑になり管理者側が大変になること、また勤務がいいかげんになる従業員が出る可能性があることでしょう。

誰が何時に出てくるかわからなければ来客や電話応対にも支障を来しかねませんし、出社時間をいちいち確認する作業にも手数がかかります。

仮に出社予定時刻を労働者に確認をしたとして、その出社予定時刻に遅れたからといって、それがコアタイムに間に合っていれば遅刻として取り扱うことができません。どのように規律を守っていくかが課題になってきます。

 

フレックスタイム制を導入する際には

 

・導入により業務上のオペレーションにどのような負担が生じるか

・導入によりどのようなムダが省ける可能性があるか

・社内の規律が守れなくなるリスクにどう対応するか

 

をあらかじめ考える必要があるでしょう。

 

不正を働いている可能性のある従業員の身辺調査はどの程度許されるか?   2014.05.14

解雇に対するハードルの高さ

労働基準法および労働契約法では、解雇には客観的合理性と社会通念上の相当性が必要であり、それらがない解雇は解雇権濫用として無効とされます。わかりやすく例えると、10人に聞いて9人程度が『これは解雇止む無しだ、解雇する以外にない』というほどの理由がなければ、解雇は難しいということだと考えたほうがよいでしょう。

 

金銭的不正に対しては厳罰傾向がある

そんななか、判例上は「従業員の着服、横領など金銭的な不正」については、金額の多少にかかわらず厳格な判断をする傾向があります。会社の備品を横領したり、不正経理などにより自己の便宜を図るような行為については、懲戒解雇有効とされた判例がいくつもあります。

 

証拠をつかむための身辺調査はどの程度許される?

もちろん、懲戒解雇をするためにはその証拠がなければなりません。そこで、不正現場を抑えるために探偵を雇って身辺調査をしたり、ビデオカメラを設置することは問題ないのでしょうか。

このような身辺調査や監視については、なんでも許されるものではなく、慎重に行う必要があります。

裁判では、会社側の対応に信義の点で問題がなかったかも考慮されます。例えば、個人のプライバシーを著しく害するような方法、高圧的な方法等での調査は「不正調査としてもやりすぎだ」という判断をされる恐れがあります。

 

例えばロッカールームで盗難が相次いだ場合に監視カメラを設置するならば、その設置を周知し、さらにロッカールームが女性のものであれば、映像確認も女性がするなどの配慮をしつつ慎重に行うべきでしょう。

 

就業規則の作成と届け出   2014.05.13

就業規則の作成と届け出

 

◆事業場単位で10人以上の場合、作成は必須

 

パートタイマー・アルバイトを含め常時10人以上が働いている事業場では、就業規則は必ず作成しなければなりません。その際に、①必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、②会社で定めてある場合には必ず記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります。具体的に、どのようなことを記載しなければならないかは下記のようになります。

 

①   

ア、始業・終業の時刻

イ、休憩時間・休日・休暇

ウ、交代勤務がある場合、就業時転換に関する事項

エ、給与に関する事項

オ、退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 

②    (記載例)

ア、退職手当に関する事項

イ、安全・衛生に関する事項

ウ、表彰・制裁に関する事項

エ、臨時の給与・最低賃金に関する事項

オ、事業場の従業員すべてに適用される決まりごと

 

◆インターネット等で出回っているひな形の使用は危険

就業規則は業種や企業規模によって、実態に即したものを作る必要があります。また、インターネット等で出回っているひな形や、他社のものを流用すると、労働者の権利ばかりを過剰に保護するバランスを欠いたものになる恐れもあります。

社労士などの専門家に依頼し、実態に即したふさわしい規定づくりをしましょう。

 

◆作成後にすべきこと

1、従業員へ周知

就業規則を作成、変更を行ったらまずは従業員へ内容を周知します。方法としては、閲覧でもよいですし、従業員を集めて説明会を開くのも良いかと思います。

 

2、従業員代表の意見を聴く

就業規則を従業員へ周知したら、従業員の過半数が選んだ従業員代表の意見を聴き、意見書にその「意見」を記載し、署名捺印をもらいます。この時、万が一従業員に反対されたとしても、あくまでも「意見を聴く」に留まるので、反対だという意見をもらえればそれで問題ありません。ここでは、従業員代表の「納得」までは求められていないのです。

 

3、労働基準監督署に届け出

 

届けるものは、以下の3点です。(原本とコピーを持参してコピーに受領印をもらい、会社に備えておきます)

 

・就業規則(変更)届

・意見書

・就業規則

 

以上で、就業規則の作成から届け出までの一連の流れが終了となります。会社にしっかりとしたルールを作成することにより、従業員が気持ちよく働けることとなるでしょう。

 

賃金の定義について   2014.05.12

1、      賃金の定義について

 

賃金とは、正確にどういった定義がなされているかご存知でしょうか?通勤手当って賃金になるの?お客様からもらったチップはどうなの?と言った疑問をお持ちになったことはございませんか?

 

労働基準法11条では「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者支払うすべてのものをいう」とされています。つまり、「労働の対価」として使用者が労働者に支払うもの全てを賃金と呼びます。

 

また、賃金の支払い方に関しても労働基準法第24条1項および2項で取り決めがされています。これを賃金支払いの5原則とも呼び、具体的には下記のようになります。

 

~賃金支払いの5原則~

【1】    通貨払いの原則:賃金は通貨で支払うこと

【2】    直接払いの原則:賃金は直接本人に支払うこと

【3】    全額支払いの原則:賃金はその全額を支払うこと

【4】    毎月1回以上払いの原則:少なくとも毎月1回は賃金を支払うこと

【5】    一定期日払いの原則:賃金は「毎月25日」というように、その支払期日を特定すること

 

~例外~

ここでお気づきになったかたもいるでしょうが、「【1】通貨払いの原則」は、守られていませんよね?おそらく、大多数の方が銀行振り込みになっていると思います。また、旅行積立金など給与から天引きされているとしたら、「【3】全額支払いの原則」に反してしまいます。

ところが、そのことが労働基準法違反になってしまうかというとそういうわけではございません。

本人の同意を得ることを条件に賃金の銀行振り込みが認められていますし、労使協定を締結した場合に、旅行積立金などの給天引きが可能となる為です。そのほか、法令に定めのある所得税、住民税、社会保険料などの天引きも含め、これらを「賃金支払いの5原則の例外」と呼びます。

 

2、      使用者には給与明細の発行義務

給与を支払うという行為は、法律上「賃金債務を弁済する」ということになります。弁済である限り、「そのお金が何に支払ったものか」を明示する必要があるため、給与明細を発行する必要があるわけです。また、働いている社員からすれば、合計額を見ただけではどれが基本給で、どれが手当で、どれが残業代なのかがわかりません。就業規則や賃金規則のとおりに支払われているか社員がチェックするために、給与明細が必要になると理解しておいてください。

また、賃金規定に残業代として手当を支払う定めがあるにも関わらず、給与明細に手当を支払った記載が明示されてない場合、従業員側から手当が未払いなのではないかと主張されてしまう可能性が出てきます。残業時間に対して、いくら支払っているかを証明として残すためにも、給与明細を発行することは必ず行ってください。

 

 

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