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2016年11月

協調性がない社員を辞めさせることができるか   2016.11.16

組織運営上「協調性のない行動をする人」の問題は避けては通れない課題です。

会社組織も団体行動であるため、協調性がない行動は時に企業秩序を乱すことになりますが、労務管理上はあくまでも「その行動が現実的に組織運営に支障をきたしているか否か」という基準で対応を考えなければなりません。

 

パターン1:社内イベントへの不参加

会社全体の懇親会や忘年会・新年会、決起集会、運動会などの社内イベントに参加しない場合はどうでしょうか。

社内イベントの場合、そのイベントが「実質的に強制的なものであるかどうか」によって取り扱いが異なります。会社が参加を強制している場合や、強制とは言わないまでも不参加者に低い評価を下すなど実質的に強制性のあるイベントの場合、そもそもそのイベントが「業務である」とみなされるでしょう。業務であれば賃金が発生しますし、不参加=欠勤となり、欠勤に正当な理由がなければ懲戒処分も不可能ではありません。

一方でイベント参加が任意である場合、会社としてペナルティーを課すことは難しいでしょう。

 

パターン2:庶務業務への協力拒否、業務伝達の不備

全員で分担すべき庶務業務を拒否する場合や、業務上必要なコミュニケーションを取ろうとしない行動については、会社が就業規則に根拠を規定することにより懲戒処分を行うことも可能です。しかし頭ごなしに否定するばかりでなく、まずは当人の言い分を聞き、その上で現実に起きている組織運営上の不都合を理解させ、周囲と協調性を保つことを指導・要請したほうが良いでしょう。

 

解雇は難しい

協調性がない行動によって書面で注意指導しても改善しない場合は、懲戒処分を検討します。まずは、譴責、減給といった軽い懲戒処分を行い、それでも改善しない場合には、出勤停止、降格処分と次第に重い処分をしていくことになります。それでもよほどの事情がなければ、協調性不足を理由に解雇することは難しいと考えてください。

確定拠出年金とは何か   2016.11.15

「確定拠出年金」が話題となっています。多くの金融機関でも商品として取り扱いを始めているようです。これは平成29年の1月から法改正が行われ、確定拠出年金に加入できる対象者の範囲が広がるからなのですが、そもそも中小企業では確定拠出年金制度そのものに馴染みがなく、そのメリットが理解されていません。

 

公的年金との比較

確定拠出年金とは、強制加入である国民年金・厚生年金と比較するとわかりやすいでしょう。国民年金・厚生年金は世代間の助け合いの仕組みで、「今のお年寄りなどの年金に充てるため、現役世代が大きな貯金箱に共同でお金を入れている」構造になっています。つまり、誰がいくらお金を入れたかは記録されているものの、個人ごとにお金が積み立てられているわけではありません。その大きな貯金箱に入った莫大な資金は、政府機関が運用方針を決めて運用していますので、個別の被保険者はそのお金をどのように運用するかを決めることができません。

 

一方確定拠出年金は、「掛けている本人が掛け金額及び運用方法を決めることができる年金」です。掛け金は個人ごとに明確に区分して積み立てられ、本人の運用方法を選択できます。つまり、各個人ごとに貯金箱を持つ構造になっているわけです。本人の運用次第で将来の年金給付が増えたり減ったりします。

 

現行の法律では、老後などのための資産形成は「公的年金は強制加入させ、その上で、企業または個人の任意で確定拠出型年金などを上乗せして掛ける」という構造になっています。

 

確定拠出年金のメリット

確定拠出年金(特に個人型)の大きなメリットは「税制面の優遇措置」でしょう。掛け金として拠出した金額が「全額」所得控除となり、課税所得が減額されます。民間の生命保険などの保険料は一部しか損金扱いにならないことを考えると税制面でのメリットは小さくありません。また、運用に対する利益に対しても非課税となり、給付を受ける際にも、年金として受ける場合は公的年金等控除が適用され、一時金として受ける場合は、退職所得として税制上の優遇措置が取られています。

 

確定拠出年金のデメリット

逆にデメリットは、「原則として60歳までお金を引き出すことができない」ことでしょう。流動性が低くなるため、本当に余剰なお金がある場合に確定拠出年金を検討したほうが良いかもしれません。

パートタイマー従業員の社会保険適用拡大について   2016.11.14

平成28年10月1日からパートタイマー従業員の健康保険、厚生年金保険の加入の適用拡大が行われるように法律が改正されました。

 

従来は「4分の3要件」:

9月までは、正社員と比べて1日または週の所定労働時間および1月の所定労働日数がおおむね4分の3以上であれば、パートタイマーであっても社会保険適用をする旨定められていました。週40時間制の会社であれば週30時間以上が一つの目安になっていました。

ところが、法律条文上「おおむね」「被保険者として取り扱うことが適当な場合は総合的に勘案し」など、加入の基準が曖昧であることの問題点が指摘されていました。

 

改正後は20時間以上で社保加入、ただし当面は大企業のみ:

平成28年10月1日以降は、同一事業主の適用事業所(法人番号が同一の事業所)の厚生年金保険の被保険者数の合計が1年で6か月以上、500人を超えることが見込まれる場合は、特定適用事業所としてパートタイマー従業員の社会保険強制適用拡大の対象となります。

 

対象者は下記の要件1~4の方です。

1.週の所定労働時間が20時間以上である

2.賃金の月額が8.8万円(年収106万円)以上である

3.勤務期間が1年以上見込まれる

4.学生を適用除外とする

 

 ちなみに10月1日からの特定適用事業所でない500人以下の事業所での被保険者加入基準新基準では「1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が4分の3以上」と明確になります。

パートタイマーが働きを制限される根拠   2016.11.13

多様な働き方が認められる現在において、正社員以外にもパートタイマーとして活躍する人もたくさんいます。しかし、公的ルールによって働きが制限されることがあります。それは、「収入が少ないことを根拠に税金や健康保険・年金上の優遇を受けられる」ことに起因します。

 

優遇措置1:税法上の扶養

まず税法上の扶養という措置が挙げられます。これは所得税に関する基準で、基礎控除38万円、給与所得控除65万円、この2つを合わせると103万円になり、この103万円の枠内でパートタイマーが収入を調整すれば、配偶者などに「税法上扶養されている」とみなされることになります。

税法上の扶養であれば、配偶者側が扶養控除を受けることができ、当人は所得税が非課税となります。

 

優遇措置2:健康保険上の扶養

次に健康保険上の扶養という措置です。一般に「130万円の壁」と表現されますが、これは「年収が130万円以下であれば配偶者が加入している健康保険の被扶養者になれること」を指します。健康保険上の被扶養者となれば、当人の健康保険料は扶養者が加入して居る健康保険の保険料によってまかなわれるためかかりません。※国民健康保険など、被扶養者概念がない制度もあります。

 

優遇措置3:国民年金の3号被保険者

健康保険上の扶養と同じ収入要件で、厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者は国民年金の3号被保険者となることができます。これは、「国民年金保険料を当人が納付しなくても、保険料をかけたことにしてもらえる」という優遇を言います。

 

これらの仕組みから、パートタイマーの方は自らの収入を調整しなければならず、有能なパートタイマーの活躍が制限されているとも言えます。この被扶養者基準について法改正の議論もなされています。

インフルエンザ等感染する病気にかかった社員への対応   2016.11.12

体調不良により急に仕事を休む社員がいると現場に支障をきたしますが、インフルエンザ等感染する病気にかかった場合など、他の従業員に伝染しないように無理に出勤させず休ませた方が良いこともあります。インフルエンザなどで社員を休ませた場合、賃金等の処遇においてはどうすれば良いでしょうか。

 

法定伝染病とそれ以外では対応が異なる:

法定伝染病の場合、労働安全衛生規則第61条第1号において「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾患にかかった者」については「その就業を禁止しなければならない」と定められています。言い換えると、会社は病気の拡散を防ぐために病気の社員を出社させてはいけないということです。

 

<病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾患>

 結核、梅毒、淋病、トラコーマ、流行性角膜炎

 上記に準ずる伝染性疾患(感染症予防法18条)

  一類、二類、三類感染症の患者※

※エボラ出血熱、ペスト、鳥インフルエンザなど

 

これらの病気については、法律で出社させてはいけないと定められているため、当然に給与の支払い義務はありません。また、会社都合で休ませた時に発生する「休業手当」の支払いも不要となります。

 

インフルエンザは対象外

ところがインフルエンザ等(はしか、風疹、ノロウイルス等)は、感染症予防法の分類上、就業禁止の対象となるべき法定伝染病には該当しませんので、会社ごとに対応方針を決める必要があります。

通常は病気が社員へ拡散することを防ぎたいでしょうから、休業を命じることになるでしょう。その場合会社都合による休業になります。したがって、最低でも休業手当(平均賃金の60%)の支払いが必要となります。

もっとも、有給休暇を当人が取得して100%給与を受け取る権利もあります。

法定伝染病とそれ以外では就業禁止の根拠及び賃金の支払いの取り扱いが違うので注意が必要です。

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