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2013年1月

退職時の年次有給休暇まとめ取りは拒否できるか?   2013.01.16

会社は、退職者が残っている年休をまとめてとることを拒むことはできるのでしょうか?

 

回答:有給休暇取得を原則として拒否できませんので、指定に従って与えなければなりません。ただし、引継ぎ不備などの明らかな不利益があった場合、別にペナルティーを与えることは可能です。

 

 

(時季指定権・時季変更権の前提)

有給休暇については、原則として会社は社員が請求するだけの日数を与えなければなりません。これを労働者が持つ「時季指定権」といいます。

一方で、その有休取得が会社の正常な運営を妨げる場合は、有給休暇を別の日に変更する権利があります。これを会社の「時季変更権」といいます。

この時季指定権と時季変更権の内どちらの言い分が優先されるかというと、個別の有休取得案件によって異なります。

 

では、退職する社員について、会社は時季変更権を使うことはできるでしょうか?

時季変更権は、あくまで「ほかの時期には休暇を与えること」が前提となっています。会社を辞めた人間には、休暇を与えることはできないため、退職する社員には、時季変更権は使えないと考えられます。

 

本来、年次有給休暇とは

「労働者に賃金を得させながら、一定期間労働者を就労から解放することにより、継続的な労働力の提供から生ずる精神的肉体的消耗を回復させるとともに、人たるに値する社会的文化的生活を営むための維持・回復も主要な目的の一つなのです。

 

会社としては、辞めることが決まっている社員には労働力の維持・回復を期待する必要もなく、むしろ、残りの期間は休まず出勤して十分な引継ぎを行ってもらいたいと考えるでしょう。しかし、年次有給休暇は一定の要件を満たすことにより当然に発生する労働者の権利です。この権利を使うことを会社が一方的に制約することはできません。

 

 

(有休休暇を買い上げることができるか)

会社は原則として、社員の請求するだけの日数を与えなければなりません。

ただし、法定の休暇日数を上回る部分があるとすれば、その部分については就業規則などの規定にもとづいて、買い上げるなどの方法をとることが可能です。

 

たとえば、労働基準法で定める最低に日数が10日の者に対して、15日が付与されているような場合には、5日分を買い上げの対象とすることができるのです。

 

以上、退職時の有給休暇についてでした。

管理職には残業代を払わなくてもよい?   2013.01.15

「管理職には残業代を支払わなくてよい」という考え方が巷にはありますが、本当でしょうか。

(法律根拠)

労働基準法では、第41条で「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」といいます)については、「労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しない」となっています。

週40時間・1日8時間といった労働時間の制限や、週1日は休日を与える義務があるといった労働基準法の規定が適用されない。つまり、管理監督者には、この条文を根拠として「時間外労働手当や休日労働手当を支払わなくても良い」ということになっています。管理者は「経営者と一体的な立場」にあって、自分自身が労働時間についての裁量権を持っているので、労働基準法で保護する対象としてふさわしくないからというのが理由です。

 

(管理監督者にあたるかどうかの判断)

よく誤解されていますが、「役職がつけばそれが管理監督者」ではありません。役職名・肩書きには関係なく、実態で判断されます。通達によると、管理監督者とは、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされています。具体的には以下の4つを基準として判断されます。

①重要な職務と権限が与えられていること 

企業の経営方針や労働条件、採用の決定に関与していて、経営者と一体的な立場にあることが求められます。例えば「採用決定に関与している」「社員の人事考課の重要な決定をなす」「社員の勤怠管理を担う」「経営戦略などの作成に関与する」などの職務を行っているかどうかで判断されます。

出退勤について管理を受けないこと

始業・終業時間を拘束して、遅刻・早退の際に給与を減額したり、懲戒処分の対象としているような場合は、自由裁量がないと判断されて管理監督者とは認められません。ただし、管理監督者であっても深夜勤務手当の規定の適用は除外されていませんので、タイムカード管理をしているだけで管理監督者として認められないとは限りません。

③賃金面で、その地位に相応しい待遇がなされていること

管理監督者という立場にふさわしい給与が支払われているか否かも判断のよりどころになります。通達でも「定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等」とあります。

④現場に出て他の一般労働者と同様の業務を行っていないこと

管理監督者として「監督される側」の作業を行っていることは、管理監督者でない根拠を強める事になります。例えば、工場長だがラインに混じって作業をしている場合は管理監督者として認められない可能性が高いでしょう。

以上の3つの点について総合的にみて、管理監督者であるかどうか判断されます。

以上の事から、日本の労働環境に置いては「管理監督者として認められる管理者はほとんどいない」と言えるでしょう。

 

以上、管理監督者についてでした。

配置転換による給与を引き下げ   2013.01.15

配置転換(人事異動により、従業員の勤務地・職務などを変更すること)により手当をなくしたり、給与を引き下げたりすることはできるのでしょうか。

 

回答:部署の異動や仕事の内容変更に伴って給料の額を変更することはできますが、変更は慎重に行う必要があります。

 

 

給与条件引下げがみとめられるか否かは、賃金のどの部分が、どんな理由で変動するかがポイントになります。

 

その部署や仕事の変更による「手当」の変更は、場合によっては部署移動によるメリットとも認められ、合理性は認められやすいでしょう。

例えば、営業部員が事務職に配転になったために、その人は営業手当をもらえなくなるという場合、その営業手当が「営業職を行う上で必要な出費」として支給されていたのであれば、配転によって、その社員のその出費もなくなるため不当な賃下げにはあたらず、配転命令は有効とみられます。

 

一方で、生活給である基本給が大幅に下がるようなときは、いかに使用者の裁量権が認められているといっても「権利の濫用」とされ、配転命令は認められない可能性が高いでしょう。

 

社員がそれまでついていた職務がなくなることとなり、雇用を維持するためにはどうしても基本給の減額を伴う配転を行わなければならないなどの特別な事業がある場合には、その内容を対象者に十分に説明し、納得を得ることが必要でしょう。

 

以上、配置転換による給与引き下げについてでした。

広告と別条件での労働契約について   2013.01.11

求人広告と異なる条件で労働契約を結ぶことができるか?

 

求人広告と異なる条件で労働契約を結ぶとき、広告の内容通りの労働条件を結ぶべきでしょうか?

これは、かならずしもその通りの労働条件にする必要はありません。

 

 

[広告掲載の条件は見込みである]

求人広告に記載された賃金額はあくまでも見込みであり、必ずしも広告どおりの労働条件で受け入れる必要はありません。

 

 

[労働契約申し込みの誘引]

一般に会社が社員を雇い入れようとする際には、新聞や求人雑誌に求人広告を出したり、ハローワークに求人票を提出したりします。

当然これらには、求職者が応募するかどうかを検討するために賃金や労働時間などの条件を提示します。

 

こうした募集にかかわる行為は、法的には「労働条件申し込みの誘引」と考えられ、求人広告などを見て求職者が応募する行為は「契約の申し込み」となります。そして、この契約の申し込みを受けた事業主が、採用面接などの段階をへて採用を決定した時点で、はじめて労働契約が成立します。つまり、求職者が応募してきた時点では、まだ労働契約は結ばれていないのです。

 

[実際の条件が違いするのは問題である]

求人広告で示した条件で雇い入れる必要はないとしても、求人者は提示された条件を判断材料として応募したのですから、あまりに条件が違いすぎることも問題です。

 

ですから、広告や求人票などの条件は一応の目安であるといってもなるべく実際の労働条件もこれに合わせることができる程度に柔軟な対応をするのが望ましいといえます。

 

実際の判例でも、求人広告は就職申し込みの誘引なので、採用面接で広告の賃金額を異なる合意があれば「労働者を保護する特別の事情がない限り、その合意に従って賃金額が決定される」とされており、広告の条件と面接で合意した条件が異なることは何ら問題がないとされています。

 

ただ、「求人者はみだりに求人票記載の見込み額を著しく下回る額で賃金を確定すべきではないことは信義則から明らかである」という制約があることを覚えておきましょう。

 

以上、広告と別条件での労働契約についてでした。

試用期間について   2013.01.10

本採用の前に試用期間を設けるとき、試用期間はどの程度の長さまで認められるか?

 

 

一晩的には1ヶ月から6ヶ月くらいの期間が設定されます。

 

 

[試用期間]

会社が本採用を決定する前に、社員の職務遂行能力や適性などを判断する期間を言います。

 

 

[試用期間の長さに法の規制はない]

試用期間の長さについては、法の規制はありませんが一般的には1ヶ月から6ヶ月くらいの期間が設定されます。

なかには1年間の試用期間を設ける例も見受けられますが、社員の立場が不安定であることから、あまり長すぎる試用期間は無効とされることがあります。

 

また、試用期間中であっても、雇い入れの日から14日を経過すると、解雇予告が必要です。さらに、「おおむね6ヶ月を経過すると、最低賃金法の適用除外者でなくなるとする」という判例もありますので、注意が必要です。

 

 

[試用期間が不当に判断される場合]

(例1)すでにパートタイム社員として務め、正社員と同じ業務について2年間務めている人を1年の試用期間ののち、正社員として採用する場合。

 

すでに一般社員と同じ業務について相当の期間が経過しているとういう事実があるので、適性を判断するには、ごく短い期間で十分と考えられます。したがって、設定した試用期間は不当に長いものと判断される可能性が高いです。

 

(例2)試用期間の本来の目的を逸脱し、賃金を低く抑えることを目的とした試用期間

 

実際、あるメーカーが1年を超える試用期間を設けて争われた判例では、まず、試用期間中の労働者は、賃金や雇用の面で不安定な地位に置かれることを認め、1年を超える試用期間は公序良俗に反すると判断しています。

 

つまり、1年を超える試用期間は必要以上に長すぎると認めたわけです。

もちろん、業種や職種、本人の経歴など、様々な要因によって必要とされる試用期間の長さはまちまちですが、使用者は、試用の目的に沿った形で試用期間を設ける必要があります。

 

以上、試用期間についてでした。

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