2012年11月
会社都合で休業をする場合の補償について 2012.11.15
不景気や業績悪化による会社都合の休業の場合、従業員の賃金を補償しなくてはなりません。そのための「休業手当」とはどのようなものでしょうか。
休業手当とは
労働基準法では、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合、(会社の都合により従業員を臨時に休業させた場合)使用者は休業期間中、その労働者に、平均賃金の60%の手当を支払わなければならないとされています。
労働契約にしたがった就労の意思がある労働者に対して、会社の都合で就労させずに賃金を支払わないことを安易に認めず、労働者の生活保障をはかるための規定です。
民法によると債権者の責めに帰すべき事由がある場合は、賃金の全額について請求することができるとされています。
しかし、民法は任意規定ですので、当事者の合意、つまり就業規則や労働協約、労働契約があればこれを排除することができるのです。
なお、労働基準法は強行法規ですから、当事者の合意があってもこれを下回ることはできません。
使用者の責めに帰すべき事由とは、
工場の焼失、機械の故障、原材料不足、資金難、生産過剰による操業短縮、監督官庁の勧告による操業停止など、かなり広範囲です。
使用者の責めに帰さない事由とは、
天災事変による不可抗力などで、この場合は使用者に休業手当の支払い義務はありません。
この休業手当は、労災による休業(労災保険による補償)、従業員の自己都合による欠勤とは別物として考えなくてはなりません。
以上休業手当についてでした。
通勤手当不正受給について 2012.11.14
Q、通勤手当不正受給についてどのような対応をしたらよいでしょうか?
事前に電車で通勤すると届け出た者が、会社に偽って自転車で通勤していることが判明しました。どのように対応したらいいでしょうか。
A、不正受給のため、差額返還やその他ペナルティを検討しましょう。
社員からすれば、比較的簡単にできる行為であり、気軽な気持ちでやってしまう場合もあるようですが、通勤手当を意図的に不正受給しているとなれば、一種の横領ですので、厳しく対応ができます。
そもそも通勤手当とは、実際に通勤にかかる費用を会社が支給する仕組みなので、使っていないならば返還を求めてもよいでしょう。
そして、本来費用としてかかっていない通勤手当を受給しているとなれば、「会社に経済的損害を与えてはならない」という労働契約上の信義則に違反するため、その点で懲戒などペナルティを検討できます。
返還と処分
会社が社員の不正な行為により過払いとなった賃金の返還請求をする場合は、民法上の不当利得返還請求権に基づいて行うことになります。
労基法上では賃金の支払い請求権は2年(退職金5年)で消滅しますが、民法上の時効に従うこととなり、過去10年以内の不正受給分までさかのぼって返還請求することができることになります。
加えて懲戒処分として、賃金の減給処分をすることが考えられますし、また、降格、出勤停止などの処分をすることも考えられます。
労災との関係
万が一、届出と違う経路での通勤途上に交通事故に遭遇した場合、労災保険上の通勤災害として認められない可能性もあります。通勤災害による給付の対象が合理的経路の途上での事故などに限定されており、届出と違う経路での通勤が、合理的経路であったとはみなされない可能性があるからです。その意味でも正しく通勤経路を申告させるよう徹底しましょう。
以上、通勤手当不正受給についてでした。
合意退職に関する書面について 2012.11.13
Q、トラブルの結果話し合いで決着がつき、合意により退職する従業員には、どのような手続きをするべきでしょうか。
A、退職に関する合意書(退職合意書)を必ず書面にして残しましょう。
退職理由や退職日など、口頭だけで約束すると、問題社員の本人は後になって「解雇された」と勘違いし(またはそう認識し)、解雇の合理性についてトラブルに発展する可能性がります。そのトラブルが起きた時には、退職合意書が重要な証拠となります。
合意書の内容としては、以下の事項を記載してください。
l 退職日
l 退職理由(合意退職によって、契約を解消すること)
l 合意した退職の条件(場合によっては合意金として金銭授受を必要とすることもあります)
l 今後、法律的争う余地がないこと。(債権債務関係がないこと)
以上について、会社側の立場から作成しています。
上記項目の内最も重要なのは、「今後、法律的争う余地がないこと。(債権債務関係がないこと)」を合意したという記録を残すことです。この文言があることで、「トラブル蒸し返し」が起こらないようにすることができます。
労働者側が異議申し立てを行う相手先は多くあるため(労働審判、訴訟、労働局のあっせんなど)、書面で「異議申し立てはしないこと」を明確にしておく必要があります。
また、場合によっては、在職している従業員に影響を与える(不当解雇されたと言いふらす、賃金不払いの訴えを共同で行うよう働きかける)などの行為も想定できます。
そのような心配がある場合には、
「退職にあたっての本合意書の内容については、乙は第三者に他言してはならない」
という文言を入れるのも一つの方法でしょう。
この合意書は2部作成し、1部を会社保管、1部を相手方へ渡します。
この書面によって、無事に円満退職であることが確認されます。
書面の作成は専門家の意見も聞きながら慎重に行ってください。
以上合意退職に関する書面についてでした。
給与から親睦会費、互助会費、社員旅行積立金などを天引きするときの手続きについて 2012.11.12
給与から親睦会費、互助会費、寮費や食費、財形貯蓄金などを天引きすることがありますが、その場合どのような書類が必要でしょうか。
(賃金控除協定)
労基法には「賃金の全額払いの原則」が定められています(労基法第24条)。
つまり、給与から勝手に諸費用などを天引きすることはできません。ただし、以下の場合は賃金からの天引きが認められています。
1、法律によって控除すべきもの
例:社会保険料、雇用保険料、所得税など
これは特段の手続きの必要なく当然に天引きすることができます。
2、労使協定により控除すると定めたもの
法定控除に該当しない冒頭の「親睦会費」「互助会費」「寮費」「食費」「財形貯蓄金」「社員旅行積立金」などは、会社と労働者代表との間に
「◯◯と△△の金額を毎月の給与から控除します」
という協定を結ぶことで天引きが可能となります。
(注意点)
この協定書については決まった様式はありませんので、任意の様式にて協定締結をしてください。必要な要素としては
・締結日
・控除する項目
・どの賃金から天引きするか(毎月の給与、賞与など)
・協定の有効期限
です。
なお、この協定書は労働基準監督署へ届け出る必要はありませんので、会社で保管しておいてください。
以上、賃金控除協定についてでした。
再就職手当について 2012.11.11
雇用保険の「再就職手当」とはどのようなものでしょうか。
(概要)
再就職手当は、失業保険(具体的には「基本手当」をもらっている(あるいはもらう資格のある))失業者が安定した職に再就職したときに、基本手当の残額の一部が「支度金」的に支払われるものです。
(前提)
再就職手当をもらうためには基本手当をもらえる資格のある人(「受給資格者」といいます)である必要があります。
離職後ハローワークで失業認定を受け、受給資格者証の発行を受けていなければなりません。
また、基本手当の支給残日数が少なくとも全体の1/3以上残っていることが必要です。
※その他支給要件があります。
(いくらもらえるか)
再就職手当は次の計算式により計算されます。
1、3分の2以上残して早期に再就職した場合
基本手当日額 × 支給残日数 × 60%
2、3分の1以上残して早期に再就職した場合
基本手当日額 × 支給残日数 × 50%
例:
基本手当日額 5000円
支給残日数 90日の場合
5000 × 90 ×60% =270,000円
失業保険基本手当をもらい切る前に再就職が決まることは雇用情勢上も喜ばしいことであるため、この手当により早めの再就職を促しています。
(その他注意点)
自己都合退職により給付制限期間(3ヶ月の基本手当がでない期間)がある場合、失業認定の待機期間の7日経過日後1ヶ月については、「ハローワーク等の紹介による」再就職である必要があります。言い換えると、当初1ヶ月は「知人の紹介などにより勝手に再就職せず、ハローワークを利用して決めないといけない」ということです。
以上、再就職手当についてでした。
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