労務コラム

転勤命令について   2013.03.25

社員を転勤させるとき、会社は一方的に勤務場所を変更できるのでしょうか?

 

回答:

完全に勤務地を限定していれば同意なしの変更はできないが、そのような特約がなく、就業規則や雇用契約書に転勤の可能性が記してある場合には、常識的範囲の転勤命令ができます。

 

(解説)

労働契約を結ぶ際には、「就業の場所」や「職務の内容」など重要な労働条件が明らかにされることになっています。転勤の可能性についてはこの際に明示すべき事柄のひとつです。その労働条件明示の際に、「勤務場所限定」としていたのであれば、転勤命令は認められないでしょう。

 

逆に、そのような特約をしていない場合で、長期の雇用を見込んで期間の定めのない契約(いわゆる正社員としての雇用契約)を結んでいるようなときは、一定の期間が経過して条件がそろえば、会社は業務命令として社員の職務内容や勤務地を変更する権限を有すると考えられています。

 

その条件とは、次のようなことです。

1、 就業規則、雇用契約書などに、転勤を命じる場合があることを明記していること

2、 業務上の必要性、合理性があること

3、場合によっては前例があること

 

まずは、(1)就業規則や雇用契約書に転勤の可能性について記載されていることが求められます。そして(2)人員の適正配置や、会社組織編成の変更、組織活性化等の目的で人員を移動する必要性がある、対象者の選定に一定の合理性があることも必要でしょう。さらに、(3)その会社で同じように転勤命令が慣習化されているという状況も場合によっては必要です。

 

これらの条件が整っている場合、原則として社員は特別な事情がない限り転勤命令を拒否することはできません。

ただし、次のような場合にはその転勤命令は無効となることもあるでしょう。

1、 業務上の必要性もなく転勤を命じる場合

2、 ほかの不当な目的で転勤を命じる場合

3、 その転勤命令が、社員に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせることになる場合

転勤については会社はその命令権をもつものの、持病を持つものや家族の介護をしている者など、私生活上特に配慮が必要な社員に対する転勤命令は慎重に判断する必要があるでしょう。

 

以上、転勤命令についてでした。

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