労務コラム

夏休みや冬休みを有給扱いにできるか   2017.12.20

有給休暇の取得率を上げるために、夏休みや冬休みを「有休消化」として処理することはできるのでしょうか。

 

法律で定める休日

法律的にはお盆も年末年始も休日にする義務はありません。労働基準法で規定しているのは「1週間に1日、または4週間に4日以上の休日を与えなければならない」ということに過ぎず、たとえ祝日でもお盆でも、年末年始でも労働日とする事ができます。

 

有給休暇の原則

一方で有給休暇は、「労働日だけれど働く人の権利として休める日」です。この考え方に基づくと、会社が一方的に「夏休みの代わりにお盆時期に有休を使え」「年末年始に有休を使え」と決めることには問題がありそうです。

 

計画有休という仕組み

労働基準法では「有給休暇の計画的付与」という制度を定めています。

有給休暇の計画的付与制度は、有給休暇の取得率を高め年間労働日、年間労働時間を短縮することを目的として導入された制度です。年次有給休暇の5日を超える部分については、労使協定により事業所全体で一斉にとる等の計画的付与ができます。

 

具体的には次の手順が必要です。

 

1 就業規則に定めること

2 労使協定を締結すること

3 労働者が持っている有給休暇の権利のうち、少なくとも5日は本人に「いつ取得するかを決める自由」を与えること



今まで年末年始やお盆が会社の休日だった場合は、計画有休の導入の際に

 

①休日を労働日とする

 

②その上で、「もともとは休日だった労働日」を計画有給の指定日とする

 

という順序になるため、①が労働者に不利になるため労働条件の不利益変更となります。

不利益変更は労働者の同意が必要になりますので注意してください。

在宅勤務のみなし労働時間制度   2017.12.20

在宅勤務者は、プライベートな場所である家で仕事をするわけですから、労働時間を明確に区分する事が難しいでしょう。そんな時には「みなし労働時間制」による労務管理が適しているかもしれません。

 

労働基準法

法律では次のようにされています。

 

労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときには、所定労働時間労働したものとみなされます(労基法38条の2第1項)。ただし、その業務を遂行するためには所定労働時間を超えて労働することが通常必要になる場合には、その業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされることになります(同項但書)。

 

かつては営業や外回りの社員に対して適用されてきましたが、インターネット・スマートホンが普及した今では営業社員の労働時間を「算定し難い」場合ばかりでもなくなってきました。


みなし制の適用要件
①事業場の外、つまり会社でない場所で労働がなされることです。労働の一部が事業場外で行われ、残りが事業場内で行われる場合は、事業場外での労働についてのみ、みなし計算がなされます(昭63.3.14基発150号)。

 

②労働時間を算定しがたいことが第二の要件となります。労働時間を算定しがたいかどうかは、使用者の具体的な指揮監督や時間管理が及ぶか否かなどにより判断されます。行政解釈によれば、

 

a.業務を行うグループの中に時間管理者が含まれる場合

b.通信手段を用いて随時使用者の指示を受ける場合

c.訪問先や帰社時刻などにつき具体的な指示を受けてその指示どおりに業務を行い、その後事業場に戻る場合

 

会社の時間管理が及ばないとは言えないという事です。

在宅勤務については、前述のbに該当するか否かという点がポイントでしょう。在宅勤務のメリットは「子育てや家事などプライベートの用事と並行できる」ことですから、時間管理を厳格に行いすぎると在宅の良さを消してしまいます。労働量を計測して、ふさわしい労働時間を「みなし労働時間」として規定する事も一つの方法だと思います。

社員を雇った時の書類をきちんとしよう   2017.12.20

近年、働く社員からの権利主張をされる事が多くなりました。「言った 言わない」で揉めないように、雇った時に書面を交付してトラブルを予防しましょう。

 

労働基準法第15条

労働基準法15条によると、会社が労働者を雇用するときは、賃金や労働時間等の労働条件を書面などで明示しなければならないとされています。明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除することができます。さらに労働条件が違う場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合、使用者は必要な旅費を負担しなければならないと決められています。

 

内容として、「書面で交付するもの」と「口頭で良いいもの」があります。 


書面の交付による明示事項
(1)労働契約の期間
(2)就業の場所・従事する業務の内容
(3)始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換(交替期日あるいは交替順序等)に関する事項
(4)賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項
(5)退職に関する事項(解雇の事由を含む)

中小企業では、特に有給休暇、労働時間、賃金が揉め安い箇所でしょう。

転勤があるかないか、賞与についても気をつけたほうが良さそうです。



口頭の明示でもよい事項

(6)昇給に関する事項
(7)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法、支払時期に関する事項
(8)臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項
(9)労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
(10)安全・衛生に関する事項
(11)職業訓練に関する事項
(12)災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
(13)表彰、制裁に関する事項
(14)休職に関する事項

なお、(1)~(6)は必ず明示しなければならない事項で、(7)~(14)は制度を設ける場合に明示しなければならない事項です。

「会社側の」面接のマナー   2017.12.20

労働市場は大きく「売り手市場=応募者が優位にたつ状態」に舵を切っています。採用コストは今後ますます上がっていく事が予想されます。

 

そんな状況下では、せっかく面接の約束を取り付けた応募者にはいい印象を持ってもらう必要があります。最近では、面接官の態度や雰囲気で入社を決める事もあるようです。

会社側の面接マナーとはどのようなものでしょうか、整理してみましょう。

 

1 心構え

まず、応募者と面接官の、立場は対等なものであることを意識しましょう。

必要以上に横柄になってもダメですし、極端にへりくだるのもよくありません。そして、候補者には誠実、公平に接し、たとえ「全然ダメな候補者」が応募してきても丁寧に対応しましょう。

2 注意点
・威圧感や緊張感を与えても、企業イメージを損ねるだけです。ストレス耐性をチェックするにしても、過去のストレスに対する対処法を聞くなどの方法が良いでしょう。
・面接官に先入観と固定観念があると、こちらの主張ばかりを言ってしまいます。できるだけ相手の話を引き出し、傾聴するようにしましょう。
・説教はしないようにしましょう。
・プライバシーや基本的人権に関わる質問はしないようにしましょう。

【質問すべきでない事項】
・本人の本籍地、出生地、生い立ち等
・家族の職業、勤務先、収入、地位、学歴、人柄、続柄等
・家庭の資産状況、住居状況、家の所在地や環境等
・思想、信条、宗教、支持政党、尊敬する人物、愛読書(新聞、雑誌等含む)
・障害者差別、性差別、部落差別、外国人差別につながるもの
・本人の容姿、スタイル、服装
・その他面接とは明らかに関係のない私的な事項

社会保険適用拡大について   2017.12.20

平成28年10月から、週に30時間以上働く方に加え、従業員501人以上の会社で週に20時間以上働く方などにも厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象が広がりました。

その内容について解説します。

1 社会保険の4分の3要件とは

社会保険の被保険者になる人は、原則として「通常の労働者」です。いわゆる正社員をイメージしてもらうと良いでしょう。

この通常の労働者と比べると短い時間や日数で働くパートが、それなりの時間働いている場合には社会保険被保険者にならなければなりません。その「それなりの時間」の基準が、「正社員と比べて4分の3以上の時間働くこと」と定められています。

 

労働日数または労働時間で比較します。

 

週40時間(正社員)× 4分の3 =30時間

月間22日(正社員)× 4分の3 =16.5日

 

このように「パートが社会保険に入る基準の労働時間(日数)が決められます。

 

2 大企業の社保適用拡大

平成28年10月から、まずは従業員規模が大きい企業から基準時間を「引き下げ」る事になりました。週20時間以上働くパートに対して社会保険加入が義務付けられてたという事です。

 

3 中小企業の選択適用

平成29年4月からは、さらに中小企業に対しても適用基準を引き下げました。ただし全企業に強制するのではなく、労使で合意があった時に週20時間の基準が適用されることとなりました。

 

4 加入するメリット

パートタイマーが社会保険に加入することのメリットとして次のようなものがあります。

 

①将来もらえる年金が増える

②医療保険(健康保険)の給付も充実する(第3号では受けれない給付もあります)

③障害がある状態になり、日常生活を送ることが困難になった場合なども、より多くの年金がもらえるようになる

④会社と労働者が半分ずつ保険料を支払うことになるため、労働者自身が国民年金保険料・国民健康保険料を払うより安くなることがある

 

会社側が労働者の年金や医療の給付を充実させ安心して就労できる環境を整えることは、雇用に伴う会社の責務であり、結果として労働者の健康保持や労働生産の増進につながりうると考えられます。さらに、短時間労働者への社会保険の適用が企業の魅力を向上させ、より長く働いてくれる人材も確保しやすくなるでしょう。

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