労務コラム

個別の従業員の労働条件を変更することはできるか?   2013.12.27

勤務時間や賃金などの労働条件について、いったん決定し合意した労働条件を会社が一方的に変更することはできませんが、社員の同意があれば変更することはできます。

 

特に賃金や休日休暇などの条件を「引き下げる」場合は、変更は慎重に行わなければなりません。一方的に書面交付をして、押印を迫るような乱暴な同意の取り方をすると後々トラブルになってしまいますので、冷静に話し合いの場を持ちましょう。

 

【労働契約書の変更した条件で合意が得られた場合】

新しい条件の契約書を必ず結びましょう。

何らかの理由で条件を下げる場合は、必ず「合意」の証明として、新しい条件を記載した労働契約書を作成しましょう。

 

【就業規則との関係】

労働条件変更の内容によっては、就業規則との兼ね合いから意味をなさない場合があります。個別に交わした労働契約書の内容が就業規則に定めてある条件に満たない場合、その部分については無効となり、就業規則に定める内容で契約をしたものとみなされます。

就業規則に定めてある規定の

 

・対象者はだれか(適用範囲)

・内容は労働契約書と矛盾しないか

・就業規則は現状とそぐわないもののままになっていないか

 

などを注意してください。条件変更の理由を真摯に説明してください。

 

 

 

労働条件変更は、たとえ社員から(表面的には)合意が得られたとしても、社員のモチベーション低下にもつながります。

 

 

 

在宅勤務の労働時間管理   2013.12.21

在宅勤務者の労働時間は把握が困難です。そのため、会社の所定労働時間を勤務したものとみなす「みなし労働時間制」を活用しましょう。みなし労働時間制は、就業規則に明記することで適用することが出来ます。

 

事業場外のみなし労働制の対象となるのは、「事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指示監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務」です。在宅勤務者の業務がすべて「労働時間を算定することが困難な業務」とされるわけではないので、注意が必要です。

 

みなし労働制の対象となるかの判断基準は、以下の通りです。

①業務が、起居寝食等の私生活を営む自宅で行われていること。

②業務に用いる情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態に置くとされていないこと。単に回線がつながれていて、情報通信機器から離れることが自由ならば、常時通信可能な状態には当たりません。

③業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと。目的や期限等の基本的事項の指示は具体的な指示には含まれません。

 

また、みなし労働制によってみなすことが出来るのは、労働時間だけです。在宅勤務者に対しても原則として週1回以上の休日を与えなくてはなりませんし、1日の労働時間が6時間を超える場合には45分、8時間を超える場合には1時間の休憩を付与する必要があります。さらに、深夜業を行った場合には割増賃金を支払わなくてはなりません。

 

みなし労働時間を導入したとしても、労働時間の把握は必要です。特に残業の取り扱いに関しては、トラブルになりやすいので事前に対策を行いましょう。

みなし労働制を導入する以上、在宅勤務者に残業はないものとし、業務上の必要が出た場合に限り報告させ、承認したもののみ残業として取り扱います。在宅勤務についてのルールブックを作成・配布し、個別に雇用契約を結びましょう。

 

在宅勤務のメリット・デメリット   2013.12.20

在宅勤務は多様な働き方の選択肢を拡大するものとして注目されています。在宅勤務が企業や労働者にとって、どのようなメリットとデメリットがあるか紹介します。

 

【メリット】

・ワークライフバランスの実現

・優秀な人材の確保がしやすい

・必要な人材の退職を防ぎ、新たな社員を教育する手間が解消される

・通勤負荷の解消による効率性・生産性の向上

 

【デメリット】

・会社の情報漏えいのリスクが高まる

・労働時間の把握が困難

・業務上の指示をタイムリーに出せない

・業務評価が難しい

・自宅での私的行為での事故は労働保険の適用外だが、同じ場所なので区分があいまい

 

労働者が1つの事業場に勤務している場合は、災害等で事業所が機能しなくなったり、流行性疾患で外出が制限されたりした場合、業務が停止してしまします。事業存続性の確保の観点からすると在宅勤務は有効です。

しかし、上記で上げたようなデメリットも存在するので、導入の際はデメリットへの対策が重要となります。

 

具体的なデメリット対策は、次の通りです。

①対象業務、対象者の範囲を限定する

在宅勤務に向いているのは、以下の職種や仕事です。

・外部の顧客対応が少ない自己完結性の高い仕事

・対面によるコミュニケーションが少ない仕事

・成果の評価を客観的に行いやすい仕事

・自己の裁量で仕事を進められる立場の社員

 

②情報漏えい対策

会社所有のパソコンを業務専用とする方が安全です。また、最新のウィルスソフトを装備し、ソフトウェアのダウンロードは承認制としましょう。

 

③労災保険の適用を意識したルールを作る

・始業就業時刻を記載し業務日報の提出を義務づける

・自宅以外の場所では業務を行わない

 

 

家族従業員を労働者として扱うときの問題   2013.12.06

事業主と同居している家族は、原則として労働基準法の「労働者」にあたりません。同居家族については雇う、雇われるという関係が認められないはずだということですが、例外的に「労働者」とみなされることがあります。 

 

具体的には次の条件をすべて満たせば例外的に「労働者」となります。

 

①同居の親族のほかに一般社員がいること

②就労の実態が、当該事業所における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。

③労働時間の管理方法や給与の決定、計算方法が明確に定められており、他の労働者と同様に管理されていること。

④事業主の指揮命令に従っていることが明らかなこと

 

なお、別居の親族であれば原則として労働者として取り扱ってもよいですが、念のため上記の条件の通り労働者性を確認できる状態にしておくほうがよいでしょう。

 

労災との関係:

労働者であるかないかは、労災保険の適用について問題になります。労働者でない場合、労災保険は適用されません。

 同居の親族の他に一般社員がいたとしても、親族に対して給与や労働時間を特別に扱っていた場合、労災保険は不支給となる場合があります。

 

そのため、業務災害が起きる前に、①例外的に労働者の対象となるよう、上記に挙げた条件を満たすように管理をする②労災保険の特別加入制度を利用する③民間の傷害保険に加入するなどの整備を事前にしておくとよいでしょう。

 

雇用保険の手続きを忘れていたときの対処法   2013.12.06

雇用保険の資格取得(入社手続き)を忘れていた場合、過去に遡って手続きを行うことはできますが、原則として2年間しか遡ることができません。

2年以上前から入社をしていた場合、本人の雇用保険加入期間が少なくなり、本人が退職した時に失業給付の額に影響が出る可能性があります。(失業給付は、加入期間によって支給額が変わります。)

 

ただし、例外として2年以上遡って手続きすることも可能です。

この場合は、当該2年以上前の期間について雇用保険料を天引きしていた事実が必要となります。つまり、過去の賃金台帳を提出して「前から雇用保険に加入しているという前提で保険料天引きをしていたが、たまたま手続きを忘れていただけだ」という状態でなければ2年以上の遡り手続きはできません。

 

 

加入手続きが済んでいるかどうかを確認するには:

管轄のハローワークで「事業所被保険者台帳提供依頼書」を届け出ることで、現在の被保険者一覧表が観覧できます。

現在の被保険者一覧表で雇用保険の加入漏れかどうか確認できます。

 

 

加入漏れは会社への信頼感を損なうことにもなりかねませんし、社員にとって失業保険給付に関わる一大事となりますので注意してください。

できれば2年に1回は加入漏れがないかを確認するような体制を整えておくとよいでしょう。

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