労務コラム

セクシュアル・ハラスメントの境界線とは   2013.09.20

セクシャルハラスメント、いわゆるセクハラは、その境界が極めてあいまいで、正確な答えはありません。

大きく言うと、性的な意味合いを持つ言動を「相手が望まなければ」セクハラとなります。

Aさんに言われたらセクハラだけれども、Bさんなら問題ないというケースも当然の様にあります。

 

 

セクハラには2種類あります。

 

1、 対価型セクハラ

セクハラ被害者が、それを拒否したために解雇、降格、減給といった不利益を受けること。

 

2、 環境型セクハラ

セクハラ被害者の就業環境が不快なものとなり、仕事に支障が出ること。

 

セクハラというと、男性が加害者、女性が被害者というイメージですが、実際はどちらが加害者であってもセクハラとなります。男性が女性の言動を不快に思えばセクハラになります。年上の女性が、若手男性社員の男女交際関係をしつこく聞き、男性側が不快に思えばそれもセクハラでしょう。

 

その他、「髪の毛切った?」「最近太った?」「女のくせに」「男のくせに」「キレイだね」などの言葉も、受けて手の気持ちによってセクハラになりえます。

 

セクハラの責任はどこにあるか

会社には、「従業員が働きやすい環境を維持する義務」があります。セクハラの発生を知りながらそれを放置する行為があるとすればそこには会社の責任を追及される可能性があります。

セクハラについての職場環境整備の具体的方法としては、例えば相談窓口の設置があります。セクハラの受け手が正直に事実を相談できる仕組みを備えた相談窓口にすることで、実態確認とセクハラ発生予防に努める姿勢が企業には求められています。

 

 

労働基準法における休憩時間の考え方   2013.09.10

労働基準法では、1日6時間を超えて働く場合には、休憩時間は必ず取らなくてはならないと定められています。1日6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩が義務づけられています。6時間を超えない場合には、休憩時間を付与する必要はありません。

この休憩時間は、1日の合計数なので、例えば、1日の所定労働時間が8時間の会社で、30分と15分と分割して休憩しても問題ありません。

 

さらに、休憩の与え方には、以下の3つの原則があります。

 

1、途中付与の原則

ですから、勤務終了時間前にまとめて休憩を取り、1時間早く退社する、ということは出来ません。休憩時間は、休憩後の仕事も頑張ってこなせるようにリフレッシュするための時間ですので、途中に取らなければなりません。

 

2、一斉付与の原則

周りの人が休んでいないと、休憩を取りにくくなってしまいます。周りに気を使わないで休憩出来るよう、休憩は一斉に付与しなければなりません。しかし、接客業などでは、一斉に休憩をとってしまうと、接客が出来なくなってしまいます。下記の業種は、例外的に一斉に休憩を与えなくてもいい業種とされています。

 

①    運輸交通業

②    商業

③    金融・広告業

④    映画・演劇業

⑤    通信業

⑥    保険衛生業

⑦    接客・娯楽業

⑧    官公署の事業

他の業種でも労使協定を結ぶことで一斉に休憩を取らなくても良いことになっています。

 

3、自由利用の原則

休憩時間は自由に利用させなければなりません。つまり、電話番や接客応対を休憩時間にさせる場合、厳密には休憩の自由利用の原則に反することになります。

ただし、自由利用の原則があるからといって何をしても良いというわけではありません。周囲に迷惑のかかる行為や、休憩後に支障の出る行為は行ってはなりません。

よく似た言葉:退職願と退職届の違い   2013.09.09

自己都合退職をする場合、退職を申し出る書面を会社に提出することが日本の雇用関係上慣例となっていますが、その書面の名称は「退職願」「退職届」のふたパターンあります。

この両者はどのように異なるのでしょうか。

 

退職願:

退職願は文字通り、従業員が会社に「退職させて下さい」とお伺いを立てる(お願いする)物です。従業員からお願いされたことに対して、会社がわかりました、退職意思を受け入れます。と受理した時点で退職することが成立します。

 

では、会社が退職願を認めない場合は、退職できないかと言うとそういうわけでもありません。会社が認めない場合であっても、民法上は「従業員が退職したいという意思表示をしてから2週間たてば退職できる」となっています。

 

この退職願の場合、会社が正式に受理するまでは、従業員側からの退職願の撤回や、退職日が変更できます。

 

退職届:

退職届は従業員が会社に「退職します」と断言する物です。

ここに会社の受理というプロセスはなく、あくまでも従業員の意思のみで退職を決めます。

退職届の場合、退職することは一般に「届出をした日」に確定となりますので、会社が変更しても構わないと言わない限り、従業員が退職届の撤回や日付を変更できないことになります。

 

ただし、現実的には退職前に当然行うべき引継ぎがあるはずですから、相当の期間をおいて退職するよう日付を設定することが常識でしょう。慣例ではすくなくとも1か月前には届け出ることが多いでしょう。

 

トラブルに発展しそうなときは書面で確認を:

退職について意見が労使間で食い違い、トラブルに発展しそうなときは、退職願の正式な受理を証明する資料として書面で「退職願受理承諾書」を発行したほうがよいでしょう。

これによって会社が正式に退職願を受理したか証拠として残すことが出来ます。

 

 

 

企業が守るべき安全配慮義務とは何か   2013.09.03

会社には、従業員の安全や健康に気を付けなければいけないという「安全配慮義務」があります。

 

・安全配慮義務違反とは

安全配慮義務とは、従業員が安全で健康に働くことができる環境を確保できるように配慮しなければならないという会社の義務を言います。

危険な作業で怪我をしないように気を付けることはもちろん、怪我以外でも長期間の残業や過度のストレスがかかるような状況がある場合には、会社はその状況を改善するように配慮しなければなりません。

 

もし、安全配慮をすべき状況であるとわかっていながら会社が何も対策をせずに放置して、従業員が倒れてしまうようなことになってしまえば、会社は「安全配慮義務違反」として従業員やその家族から訴えられて、多額の損害賠償を請求されてしまう可能性もあります。安全配慮義務違反は、労働者側からの訴えの一つの拠り所となるものです。

 

安全配慮で特に注意すべき事項:

長時間勤務や残業・休日出勤時間に特に注意すべきです。

長時間働いていたために心疾患や脳疾患を患い、またはうつ病を発症したり、最悪の場合、病気による死亡や自殺に至ってしまうケースなどがあります。

従業員がストレスを溜め込んで体調を崩すのは、その原因の全てが会社にあるとは限りませんが、長時間労働やパワハラが無関係とも言えないでしょう。

特に、月80時間超える時間外労働は「過労死」との因果関係が出てくるため注意が必要です。

 

行政では、過労死について仕事との関連性が高いかどうかを一定の判断基準を設けています。

・過労死の確認基準

発症前1ヶ月から6ヶ月にわたって、1ヶ月あたりおおむね45時間を超えた時間外労働があった場合

⇒仕事との関連性が徐々に強まる

 

発症前1ヶ月間におおむね、100時間の時間外労働または発症前2ヶ月から6ヶ月にわたって、1ヶ月あたりおおむね80時間を超えた時間外労働があった場合

⇒仕事との関連性が強い

 

長時間労働を抑制しつつ、生産効率を高めるための取組に注力することは簡単ではありませんが、「安全配慮」の面からも「労働生産性」の面からも大切なことです。

 

社長の労災事故に備えるには   2013.09.02

仕事中にケガなどをして労災保険が適用される場合には、本人が窓口で診察代を支払うことはありません。本人の自己負担額は0円になります。

しかし、労災であったとしても、相手のある交通事故の場合には、相手方の自賠責保険等から優先して請求することとなります。また、治療に必要のない差額ベット代のかかる部屋に入院した場合には、その部分は自己負担となります。

 

労災保険の対象は従業員ですので、経営者や取締役は対象となりません。つまり、社長が仕事中にケガをした場合は、労災保険は使えないことになります。また、仕事中のケガですので、健康保険も使うことが出来ません。全額自己負担をしなければならないことになってしまいます。

 しかし、中小企業では社長もプレイヤーとして現場で働いていることが多いため、仕事中のケガや病気について全額自己負担では社長がかわいそうだということで、下記2つの条件に当てはまる場合は、仕事中のケガであっても健康保険を使うことが出来ます。

 

①    健康保険の被保険者数が5人未満の事業所に所属している

②    通常の従業員と変わらない仕事をしている

 

なお、この場合には、「傷病手当金」の請求は出来ないので、注意が必要です。傷病手当金とは、健康保険から支給される休業中の所得補償です。連続3日以上休業した場合、4日目から標準報酬日額の3分の2が支給されます。

 

因みに、通常労災保険の対象とならない人が労災保険に加入できる、「特別加入」という制度があります。特別加入することが出来るのは、以下の方です。

 

前提:

労働保険事務組合に労働保険事務を委託している会社であること

対象者:

①    中小事業主とその従事者(常時300人以下の労働者を使用)

②    一人親方その他の自営業者とその事業に従事する者(従業員を雇わずに仕事をしている)

③    特定作業従事者

④    海外派遣者

 

仕事中のケガや病気に見舞われてしまう可能性の高い方は、労働保険事務組合への委託をし、特別加入を検討するのもよいでしょう。

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