労務コラム

必ず会社に保管しておかなければならない労基法上の帳簿とは   2013.10.22

【法定帳簿とは】

労働基準法上、会社に必ず備えておかなければならない書類があります。これを法定帳簿と言います。

 

法定帳簿とは特に

①労働者名簿

②賃金台帳

③出勤簿(タイムカードなど)

この3つをいいます。

 

労働基準法で、どんな規模の会社であっても作成することが義務付けられている書類です。

法定帳簿は、その終了の日から3年間会社で保存しなければいけません。

※終了の日とは、退職日や死亡の日等を指します。

では、それぞれの書類にはどんな内容が記載されている必要があるでしょうか。

 

【法定3帳簿に記載されているべき内容】

◆労働者名簿には、労働者の

  1. 氏名
  2. 性別
  3. 生年月日
  4. 住所
  5. 履歴
  6. 雇用した年月日
  7. 退職した場合、退職年月日とその事由

が記載されていなければなりません。

 

◆賃金台帳には、給与支払いの都度(つまり毎月の給与を支払う度に)、労働日、労働時間(残業時間等を含む)、給与や天引き額などを記載します。

賃金台帳には、この「労働日」「労働時間」の記載が漏れていることが多く、これが労基署の臨検の際に是正を受けやすい事項ですので注意しましょう。

 

◆出勤簿とは、従業員の働いた日数、働いた時間、時間外労働等を把握するために作成します。単に出勤印のみを押印するだけでは、始業・終業の時刻が明確でない為、臨検の際には是正指導を受けてしまいます。

【それ以外の書類の保存期間】

法定帳簿以外も、一定期間保存します。

 

退職金に関わる書類                  5年間

雇用保険の資格得喪に関する書類         退職日から4年間、できれば7年間

労働保険のお金に関する書類や労災保険に関する書類    3年間

健康診断個人票                     5年間

 

自社で必要な書類が備え付けられているか、今一度確認してみましょう。

 

 

社員の副業を禁止してよいか   2013.10.10

副業については、法律の制限はありません。つまり会社が許せば社員が副業を行うことができます。しかし、社員は労務を提供することで給与をもらっている以上、健康に注意して良質な労働力を提供する義務があり、良質な労働力の提供の邪魔になるような副業は、会社の判断で禁止することも出来ます。

 

副業を禁止する場合、就業規則の服務規定にその旨の文言を明記しましょう。服務規定に入れておくべき内容は以下の通りです。

・健康に留意して、良質な心身状態で勤務するように努めること

・会社の機密、不利益事項を他に漏らさないこと

・会社の許可なく他社の役員、従業員又は個人事業主となり、営利を目的とする業務を行わないこと

・会社の許可なくアルバイトなどをしないこと。ここでいうアルバイトとは、営業上の技術を使用して個人的に報酬を得る行為を含む

 

ペナルティーについて:

副業が発覚した場合、懲戒処分を行うかについては、次の項目から判断します。

①    副業を行うことで、本業にどのくらいの影響が出ているか

②    競業他社での副業かどうか

③    副業により、自社の秘密漏漏洩の危険性があるか

 

アルバイト等副業行為とあまりに釣り合わないペナルティーをしないように注意する必要があります。懲戒解雇が有効となるような副業行為は、背任的に自社のノウハウを漏えいさせている場合や、競業行為を意図的に行うような悪質なものに限られるでしょう。

 

副業を許可制や禁止にしている場合は、パートや短時間勤務者について、配慮が必要となります。これらの社員は、他社に勤務している確率も上がります。また、正社員とは違い空き時間を有効活用しているにすぎず、正社員の副業とは解釈が変わってきます。

正社員の副業とは違った基準で、ある程度副業を認めてあげる配慮が必要になります。

 

遅刻が頻繁にある社員への対処   2013.10.09

口頭注意をしても、遅刻が改善されない場合は、書面通知で改善指導を行いましょう。即座に解雇するとトラブルにつながります。トラブルを防止するために、処分を行う場合には、手順をふむことが大切です。

 

①    口頭注意=戒告、譴責

遅刻をした場合には、その都度注意をし、改善するように伝えましょう。遅刻を繰り返す社員をそのままにしておくと、本人だけでなく他の社員にも悪影響を与えます。

注意をした日付をメモで構わないので記録しておいてください。

 

②    書面による改善指導

口頭注意だけで改善が見られない場合、「始末書の提出」「業務改善指導書」「承諾書」のような書面で厳格に対応することで、社員の意識向上が望めます。

書面の中の重要な要素としては、

・遅刻の事実を本人に認めさせること

・改善のためにどのようなことをするかを宣言させること

・日付、誰から誰に提出したものかを明らかにすること

です。

文書を残すことで改善されなかった場合に、会社が改善の努力をしたという証明になります。

 

③    減給・降給

書面でも改善しない場合、減給や降格へ進むこともできます。

ただし、減給には、1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額の1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならないという制限があります。減給を行う場合は、制限を超えない範囲で行いましょう。

 

④    退職勧奨、普通解雇(懲戒解雇)

それでも改善しない場合、「改善のために会社は指導教育を尽くしたけれど直らなかった」ということで退職勧奨や解雇も検討しなければならないかもしれません。

ただし、解雇は最終的な手段です。遅刻を繰り返すという理由だけで、いきなり解雇することは相当に難しいと考えましょう。

 

いずれにせよ、上記のような手順をしっかり踏んだうえでの段階的対応が重要です。

 

労働基準監督署の臨検の種類   2013.09.26

「労働基準法などの労働関係諸法令を守っているかをチェックするために、労働基準監督官が会社に立ち入り調査をすることがあります。この調査を「臨検」といいます。この臨検には主に3つの種類があります。

 

1、 定期調査

最も一般的な調査で、臨検のほとんどはこの定期監督に該当します。

年度ごとに重点的に調査する業種等を決めて行われるようです。

定期調査で調べられる項目の相場は大抵決まっていて、

①労働時間は多すぎないか、休日数は適法か

②残業など割増賃金の計算方法は適正か

③36協定(時間外協定)を届出しているか

④就業規則は適法に整備されているか

⑤労働者名簿、出勤簿、賃金台帳は適法なものが備え付けられているか

⑥健康診断を毎年実地しているか

のような労働基準法や労働安全衛生法の違反はないかを調査します。調査の対象となる会社は、ある意味ランダムに決められます。特に法違反の事実を掴んで調査されるものではありませんので、必要以上に心配しなくてもよいものです。

 

2、 申告調査

従業員や退職者が「会社は労働基準法違反をしている」など直接労働基準監督署に申告(内部告発)したときにその内部に基づいて調査をします。従業員や退職者が会社に改善を求めるために労働基準監督署へ申告し、その内容を確認するための調査をします。

労働基準監督署へ申告する人は、在職者より退職者のほうが多いようです。労働基準監督署に申告があった場合はほぼ100%の確率で臨検されます。

 

3、 災害時調査

労災が起こった場合に、その災害の実態確認や原因究明、再発防止のために調査します。

 

 

臨検の連絡があった場合も慌てずに、社会保険労務士等専門家に相談し、善後策を検討しましょう。

派遣と請負の違い   2013.09.21

〈派遣〉

派遣とは、派遣元会社自身が雇用している従業員に、派遣先で働いてもらう仕組です。派遣社員の雇用主は派遣元会社となります。しかし、実際に働いてもらう場合には、派遣先での指示に従います。

つまり、派遣元会社と派遣社員が雇用契約を結び、指揮命令は派遣先(受け入れ側)が行う、派遣会社と派遣先は派遣契約を結ぶ、という三角関係になります。

 

〈請負〉

請負は派遣と似ていますが、指揮命令の部分で異なります。

請負は、仕事を完成させることを約束し、仕事の結果に対して報酬をもらう契約です。ですので、仕事を依頼する発注者と請負会社があった場合、発注者はどのような方法で仕事を完成させるか一切指示してはいけません。あくまでも仕事の完成だけです。

仕事のスケジュールを発注者が管理していたり、仕事の報告を発注者に行うことが義務付けられたりした場合などは、請負ではなくなります。途中で指示を行った場合は、「派遣」になってしまいます。

 

派遣社員の給与や労働保険料、社会保険料は派遣元会社の負担となります。従って、派遣先で時間外労働をしたとしても、割増賃金の支払い義務は派遣元会社にあります。派遣社員は派遣元会社と雇用契約を結んでいるためです。派遣先の会社は、派遣社員の働いた時間分の料金を派遣元会社に支払うだけとなります。

 

 

派遣を依頼する場合、下記業務は派遣が禁止されているので、注意が必要です。

①    建設業務

②    港湾運送業務

③    警備業務

④    病院・診療所での医療業務

⑤    人事労務関連の一定業務

⑥    弁護士・税理士・社会保険労務士等の士業の一部

⑦    管理栄養士の業務

 

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