日本的経営と美容業の照合 2011.07.29
こんにちは。カウンター&パートナーの柳原です。
7月も終わり、夏休みを迎える時期になりました。
今年は震災の影響もあり、業種によっては変則的な休暇も多いと聞きます。顧客の余暇充足型産業にとっては、それに合わせてキャンペーンを行う、なんてことも検討できるかもしれませんね。
昨晩、経営者の皆様とドラッカーについて話し合う会があり、参加してきました。
ドラッカーによると、日本的経営は「責任の組織化」ができている好事例であるということです。
以下、「マネジメント」の一節を引用(または要約)します。
「日本では、(エンジニアは)現場と一体となって、仕事をする。むしろ現場の職場グループが、仕事を総合的にまとめる。エンジニアはそれを助けるだけである。日本ではツールの改善は現場に任される。現場が機械の設計に関与することも多い」
※エンジニアとは、製品などの組み立てから製造されるまでの工程を考える仕事、という定義。
「日本では、仕事とツールへの現場の関与は「継続訓練の一環」として行われる。トップマネジメントを含むあらゆる人間が、退職するまで、研鑽を日常の課題とする。週1回のサークル活動が、仕事の一部として日程化されている。サークル活動は特定のスキルについて学ぶのではなく、職場が必要とするあらゆるスキルを取り入れている。商店は、特定の仕事、人ではなく、職場全体の仕事である」
「日本では、学ぶことの目的は修養である。今行っている仕事をより高度のビジョン、能力、期待値を持って行うためのものである」
私なりの解釈としては、
「日本の場合、自分の仕事のことだけ勉強すればいいのではなくて、職務ごとの連携や、全体に対する自分の役割も考えることが奨励(あるいはそう教育)されており、その結果イノベーション(技術革新)や改善を生むことができる」
と言っているのではないかと思います。
その考え方を裏付ける現象として、
◆アメリカ等では、とかく上司は部下に仕事を教えない(なぜなら部下の上達が自分の地位の脅威になるから)
◆日本では、部下に仕事を教えるのは、職務として命令されずとも「先輩は後輩を教えてあげるもの」として習慣化されている
という違いがあるといいます。なるほど納得できます。
日本の終身雇用が、その日本的「団結」という良い面を影で支えているというドラッカーの分析にも合理性がありそうです。
このドラッカーの分析が正しいと仮定して、「ではそれを美容室経営と照合した場合、現在の美容室経営は日本的であるか?」と考えると、やはり個人売り上げに対する歩合制度が異質なものに思えます。
(しつこく歩合制のことばかり言ってすいません)
たとえば美容室の給与を完全固定給(一定年齢以上で給与が頭打ちとなる)とした場合、短期的には経営の硬化を招くのではないか、
つまり、
①人件費の硬化により、売り上げ減少リスクに対して弱い
②がんばらなくても給与が保障されるということによるモチベーションの低下
③人員の流動性の鈍化によるマンネリ化
などが起こることを心配される方が多いでしょう。
その反面、
①多くの美容室が目指す「全体接客」というテーマに対しては論理的整合性がある。
②安定雇用により、相互教育や職場の連携といった「よく経営者の方が望んでおられること」の実現が可能である。
③流動性の鈍化≒定着率の向上につながる
というプラスの面も考えられます。
ただし、固定給の水準が低すぎる場合、固定給は安心感を生めない。アシスタントの初任給で都内で一人暮らしできるのかというと、厳しい現実があります。それが社会保険未加入や離職を生む循環になっていると指摘せざるを得ません。
きわめて優等生な考え方かもしれませんが、ではこうは考えられないでしょうか?
1、最低で20万円、スタイリストデビューで25万円、マネージャーで35万円という固定給を支払って、みんなに安心して働ける環境を整えたい
↓
2、その要件を満たす店の売り上げはいくらか?
↓
3、目標数値に対する不足を補うために、顧客あるいは見込み顧客のニーズを満たす取り組みは何か?また、その問題意識をスタッフと共有するためにどんな情報開示(売り上げの開示)が適切か?
↓
4、その取り組みと、1のスタートの考え方をリンクさせて、責任の組織化をすることはできないか?
昨日ある女性に美容室のことについて話したときに、
「私の場合は最重要視するのはステータスです。美容室に入って、接客がさわやかで、雑誌の取り揃えが店のコンセプトと合っていて、いい気分になれるために1万円なりの対価を払っています。担当してくれたスタイリストさんの腕や相性はその次ですね」
とおっしゃいました。全体接客を求める声ですね。そして経営者様としては、お店はこんなお客様のリアクションを欲していらっしゃると想像します。
どうも重要なヒントが隠されているように思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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