労務コラム

社内恋愛を会社が禁止することはできるか   2015.05.29

結論から先に書くと、社内恋愛を会社が禁止をすることはできないと解されます。男女が誰と交際しようともそれは当人たちの自由であり、憲法でも私的領域の確保が保障されているため、たとえ就業規則などで社内恋愛を禁止する条文を設けたとしてもそれは「無効」となります。

 

ただし、社内恋愛行為が「結果として」会社の運営に支障を与えた場合、その支障を与えた部分については会社がペナルティーを科すことができます。

 

例えば同じ部署の者同士が社内恋愛をしていて、仲が悪くなった結果社内のコミュニケーションや連携に支障が出たとか、部下と不倫関係にある上司が人事評価を不当に高くしたりといった問題が起きた場合、その社内秩序を乱した行為に応じて配置転換を命じたり、減給などの懲戒を行うことは可能です。

 

就業規則上の規定

社内恋愛について就業規則上ルールを決めたいのであれば、「社内恋愛を禁止することはしないが、社内恋愛が結果として会社に迷惑をかけた場合、一定のペナルティーの可能性がある」旨定めておくとよいでしょう。ただ、社内恋愛禁止と言うルールを公言すると、障害があることでかえって恋愛が盛り上がるという可能性もあります。ルール化する際は「本当に社内恋愛の抑止になるか?」という観点でよく考えることをおすすめします。

 

逆に社内に男女がいることで、(異性によいところを見せようとして)それぞれのモチベーションやパフォーマンスが上がるという側面もあります。一律に社内恋愛ご法度とするばかりが労務管理ではないかもしれません。

 

 

懲戒処分を段階的に行う方法   2015.05.19

懲戒処分は会社が行う教育的指導ですので、指導は段階的に行う必要があります。例えば学校で軽微な校則違反に対してすぐに退学処分をすることは「罰と違反行為が釣り合っていない」と言えるでしょう。同様に軽微な就業規則違反についてただちに解雇処分をすることは、あまりに罰が重すぎると判断される可能性が高いでしょう。

 

懲戒処分はつまり段階的に、ふさわしいものを科すべきであるという原則をまずは知りましょう。そのうえで懲戒処分において大事なポイントをご紹介します。

 

大事なポイント1:「本人の言い分を聞く」

懲戒処分を行うということは何か「悪いこと」をしていたからでしょうから、その悪いことが本当にあったのか、本人にその言い分を聞くことが必要です。例えば遅刻に対して直ちに懲戒を行うのではなく、なぜ遅れたのか、事情を汲んでやる必要はないかを検討してください。始末書などで本人の言い分や事実関係の情報を集める方法もあります。

 

大事なポイント2:とはいえ「始末書」は強制できない

ところが始末書は会社が提出を強制することができません。憲法19条において「思想、良心の自由」が保障されてるという趣旨から、本人の意に反する意見を強要することはできないとされてます(もちろん事実を報告するように言い渡す権限はあります)。悪かったことを認めさせようと高圧的に出過ぎてしまうとパワハラの可能性が出てきますので注意してください。

 

大事なポイント3:就業規則上の根拠を調べておく

会社が懲戒処分を行うことができるのは、原則として「これをしたら懲戒する」と就業規則などで規定されている内容に限ります。就業規則に根拠が求められるかを懲戒処分前に確認しましょう。

 

 

 

妊産婦にかかる労働基準法 その2   2015.05.19

妊娠中及び産後1年を経過しない女性に関して、労働基準法その他の法律では一定の保護を与えています。その1で紹介したルール以外のものを紹介します。

 

1、労働基準法上のルール

・妊婦の軽易業務転換(法第65条第3項)

妊娠中の女性が請求した場合には、今やっている業務から他の軽易な業務に転換させなければなりません。

 

・妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限(法第66条第1項)

変形労働時間制がとられる場合であっても、妊産婦が請求した場合には、1日及び1週間の法定時間を超えて労働させることはできません。つまり、妊産婦が求めた場合は変形労働時間を適用することができません。

 

・妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限(法第66条第2項及び第3項)

妊産婦が請求した場合には、時間外労働、休日労働、又は深夜業をさせることはできません。

 

・育児時間(法第67条)

生後満1年に達しない生児を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求することができると労働基準法で定められています。

 

2、その他の法律でのルール

男女雇用機会均等法において、「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止」が決められています。会社は従業員が妊娠出産またはそれに付随して認められる権利を使ったことなどを理由として本人に不利益な取り扱いをしてはいけないと定めています。

 

※ 不利益な取り扱いと考えられる例

○ 解雇すること

○ 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと

○ あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること

○ 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと

○ 降格させること

○ 就業環境を害すること

○ 不利益な自宅待機を命ずること

○ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと

○ 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと

○ 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと

 

 

労災の休業補償について   2015.05.08

従業員が仕事中の事故などで怪我をして会社を休む場合、労災保険から休業補償が支給されます。労災保険の休業補償を「休業補償給付」といいます。

 

休業補償給付の支給要件

休業補償給付の支給要件は以下の通りです。

 

①業務上の事由による負傷または疾病によって、療養していること

仕事と関係ない負傷や病気によって休んでも対象となりません。

 

②その療養のために労働することができないこと

労働することができない、つまり「労務不能」の証明は医師にしてもらいます。休業補償給付の医師証明欄に一定期間労働することができなかったと証明してもらう必要があります。

 

③賃金を受けていないこと

休業補償給付は、賃金が出ない日のみに支給されます。例え労災事故が原因で休んでいても給与が出ている場合は休業補償給付は出ません。ただし、一部のみ賃金を受けた場合は、減額して支給されることがあります。

 

④通算して3日間の待期期間を満たしていること

休業補償給付は休み始めて3日間は支給されません。待機期間中に休業状態を確認するという趣旨です。

 

上記を満たした場合、賃金を受けていない日の4日目から支給されます。支給額は休業1日につき、給付基礎日額(平均賃金)の100分の60です。また同時に労災の「特別支給金」という制度から給付基礎日額(平均賃金)の100分の20が支給されるため、合計として100分の80の休業補償が受けられます。

 

休業補償給付は任意の期間で支給申請をすることができますが、通常は給与締め日に合わせて請求することが多いでしょう。つまり、給与締め日が来て、その期間の賃金の支払いが確定してから請求した方が合理的であるためです。

 

妊産婦にかかる労働基準法 その1   2015.05.08

育児に関する関心がますます高まっている今、妊産婦への対応も重要な労務管理ポイントです。労働基準法で定められている妊産婦に関するルールは以下の通りです。

 

1、産前産後の保護

女性労働者が出産する場合、産前6週間(多胎妊娠の場合には14週間)、産後8週間の休業が認められています。産前休業は労働者本人からの請求があれば休ませなければならないとなっていますので、出産直前ギリギリまで働くことを本人が選ぶことができます。

産後休業は本人の請求や意思を問わない強制的なものですが、産後6週間を経過した女性が請求した場合、医師が支障がないと認めた業務に就かせてもよいとされています。

産前産後休業中の賃金の支払いは使用者に義務付けられておらず、就業規則等に有給の定めのない限り無給でもかまいません。

 

 

2、母性機能に有害な業務への就業禁止

母体に有害であるとされる一部の業務について、女性を働かせてはならないとされているものがあります。

例えば坑内労働については、会社は、妊娠中の女性および坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性を、坑内で行われる全ての業務に就かせてはなりません。また、上記以外の満18歳以上の女性についても、坑内で行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるものに就かせることはできません。そのほか、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務、その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせることはできません。

また、使用者には、妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な業務に転換させることが義務付けられています。

 

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