労務コラム

連絡が取れず行方不明になった社員を解雇にできるか   2015.04.30

突然連絡が取れなくなり、自宅や実家に連絡しても行方がわからなくなった社員の多くはもう働くつもりはないでしょうから、ほとんどの場合辞めてもらうのが妥当でしょう。

 

辞めてもらう場合は①解雇(会社からの一方的な雇用契約打ち切り)という取扱いと②就労の意思がないとみなして「自己都合退職」としての取り扱いの2パターンがあります。

 

解雇として取り扱う場合

解雇にする場合、就業規則の解雇事由に「○日以上無断欠勤が続き、連絡が取れない場合は解雇として取り扱う」などの取り決めをしていなければなりません。通常14日以上の無断欠勤は解雇事由として妥当と言われています。

ここで問題になってくるのは、「どうやって相手に解雇を伝えるか」です。解雇とは会社側からの一方的な契約打ち切りを「通告」することですから、会社の解雇の意思が相手に到達しなければ効力を発揮しません。

現実的な順序としては、①本人に電話やメールなど通常の連絡を試みる②ダメなら実家や保証人などに連絡をする③それでもだめなら「○○日以内に連絡がなければ解雇として取り扱う」という文面を配達が記録される方法で郵送するという流れになるでしょう。

簡易裁判所に公示送達という手続きを申し立てて法的に解雇の意思表示を有効にする手段もありますが、面倒ですし費用も掛かるのであまり用いることはないと思われます。

 

自己都合退職として取り扱う場合

この場合も就業規則に「○日以上無断欠勤が続き、連絡が取れない場合は就労の意思なしとみなして自己都合退職をしたものと取り扱う」などの規定をしておくことが前提になります。

ただし、「連絡が取れない」だけでは「連絡をとるつもりがない」のか、「事情があって取れない」のかがわかりませんので、厳密には自己都合退職として取り扱うことには疑問が残ります。退職処理をした後で本人がひょっこり現れた場合、退職処理の取り消しをしなければならない場合もあるということを心得ておきましょう。

ただし、ユニフォームを返却している、保険証を返納してきているなど、状況から考えて辞める意思が見られる場合は自己都合として取り扱ってもよいでしょう。

 

人事労務の環境整備不足を「負債」であると考える   2015.04.30

会社の財務状態を表す「貸借対照表=バランスシート」の見方はご存知でしょうか。左右に分かれているバランスシートは、右側が「資本および負債:お金をどうやって調達したか」を表し、左側が「資産:そのお金が何に姿を変えているか」を表します。

 

健全な会社は「負債」つまり借金や未払い金が少なく、「資産」の中ですぐに現金化できるものが多いと言われています。例えば借金が少なく自己資本で多くのお金を調達しつつ、それを現金や貯金の状態でたくさん持っていれば、いざというときに支払いに困らずに済みます。

 

人事労務の環境の整備状況は基本的にこのバランスシートに表れない数字ですが、実は「目に見えない負債」にあたると考えられます。

 

つまり、残業代や過重労働への対策を何もしていなければいつかそれがトラブルになり、100万円単位のお金が出ていくことになるかもしれません。

 

この人事労務の環境整備の不足とは、例えば次のようなことがあります。

 

・残業代対策ができていない

・休日労働が多い

・健康診断をしていない

・うつ病の人が増えているが対策をしていない

・退職金規程がバブル時期のままで、たくさん支払いが生じる予定がある

・育児休業制度の未整備

 

これらを放置しておくと、会社の財務状態に一気にダメージを与える可能性があることを経営者はよく意識しておく必要があります。専門家の意見を聞きながらしっかり整備を進めていくことをオススメします。

 

家庭や個人の事情で遅刻、早退する場合、半日単位の有給休暇を取らせる必要があるか   2015.04.20

年次有給休暇については、原則として「1日単位」で与えなければならないとされています。その1日とは「午前0時から深夜24時まで」を指します。

 

なぜ1日単位で有休を取らせなければならないかと言うと、有休が「労働者の疲労回復、リフレッシュ」を目的としているからです。疲労回復、リフレッシュのためには、まるまる1日仕事をしなくてよいという状態にしなければならない、と法律では決めていることになります。

 

ところが、実際には「通院をする」「子供の急なお迎え」など、まる1日は休まなくてもよいという事情があります。この場合、つまり労働者側の要望があった場合、会社は半日単位で有給休暇を与えてもよいことになっています。別の言い方をすると、「うちには半日単位の有休制度を認めない」としてもよいです。ただし、従業員の満足度や利便性を考えるとやはり半日有休は認めたほうが実運用しやすいでしょう。

 

半日の考え方:

半日単位の有給休暇については、以下のふたつの考え方があります。

①午前と午後にわける

②所定労働時間を半分にわける

 

例えば午前9時から午後6時までの8時間が所定の会社であった場合、午前3時間、午後5時間なわけですから、午前よりも午後に有休を取ったほうがその日の労働時間は少なくなります。公平にするなら②を選ぶべきということになりますが、実際には①のルールの方が使い勝手がよいため採用されていることが多いでしょう。

取引先の接待で飲食をしている時間は残業になるのか   2015.04.20

業種や職種によっては、取引先や営業先の接待があります。夜にお酒を飲むことはあるでしょう。この接待の時間中が労働時間になるのかどうかは、次のポイントをもとに決まります。

 

  1. 会社命令の有無

接待の席に「行かなければならない」状況であったか、をまず考慮します。上司から命令を明確に受けた場合であれば労働時間となるでしょう。同様に、強制はされていないが実質的には強制的であった場合も労働時間となる可能性が高いと言えます。

 

  1. 接待の「目的」と業務性の有無

取引先と商談をするのであれば、仕事に関連していると見ることができるでしょうから業務性があります。ただし、単に親睦を深めるといった理由では業務性がないと判断されるかもしれません。あくまでその接待時間の「目的」によって業務性が判断されます。

 

「残業代」よりも「労災」が争点になる

この基準をもとに労働時間であるかどうかを判断するわけですが、この種類の事案では「残業代」ではなく「労災」を巡って争うことの方が多いでしょう。

労働時間であると判断された場合、その飲み会でケガをした場合労災として認められます。ただし、二次会、三次会と続いて、帰りに酔っぱらって転んでケガをした場合など、「もはや労働時間とは言えない段階でのケガ」であれば、労災対象にならないこともあります。

 

ちなみに、主席に女性を意図的に同席させ、お酌をさせるなどの行為はセクハラやパワハラという別の問題が出てきますので注意が必要です。

 

 

 

従業員から休職を申請されたら断れないか   2015.04.14

休職とは、病気やけが(業務上の理由でないもの)によって働けない場合に、労働義務を免除することをいます。よく勘違いされていますが、休職は労働者の権利ではありません。あくまでも会社が「休め」と命令するものであることに注意が必要です。

 

雇用契約に基づく義務:

会社と従業員の間には「雇用契約」が結ばれています。雇用契約を結んでいる以上、法律的にはそれぞれ次の義務があります。

 

①会社側は給与を支払う義務がある

②従業員側は働く義務がある

 

ですから、従業員側が自分の病気やけがで働けないことは、雇用契約上の義務に違反していることになります。厳しい言い方をすれば自分の都合で働けない状態になったわけですから、本来であれば解雇事由にもあたるはずのものですが、病気は仕方がないということで一定期間の猶予期間を設けて「療養しなさい」と命令することを休職といいます。

 

よって、従業員から休職を求められたらといって、必ず認めなければならないわけではありませんし、就業規則に載せる義務もありません。あくまで会社側が主導権を持って命令します。

 

「ウチに休職制度はないから、病気になったら有給休暇を取得してくれ」というスタンスでも問題ありません。

 

ただし、現実的には「働けなければ辞めてくれ」とバッサリ切り捨てることもなかなかできないでしょうから、必要に応じて療養に協力して、安心して勤めることができる環境づくりをしていくとよいでしょう。

 

 

 

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