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会社の備品を持ち帰った従業員を解雇できるか 2015.04.14
ボールペンなどの文房具や、トイレットペーパー、お茶、コーヒーなどを自宅に持ち帰ることはもちろんよいことではありません。許可を得ず会社のお金で買った備品を私物化することは、厳しい言い方をすると横領や窃盗に当たります。
ただし、だからと言って解雇をできるかというと、解雇と言う処分は「重すぎる」と見なされることが多いでしょう。
懲戒の相当性:
懲戒、つまり会社から従業員へのペナルティーは、「悪いことをしたことを認識させて、もう一度同じことをしないように指導する」目的で行います。そして、悪事に対してあまりにかけ離れたペナルティーを科してしまうと、あとで労使紛争に発展した時には「ペナルティーが重すぎる」と見なされてしまう可能性があります。
例えば今回のように、ちょっと会社のコーヒーを持ち帰って私物化したことに対して、いきなり懲戒解雇をすることは重すぎる懲戒処分とみなされるでしょう。解雇は労働者の生活を一気に脅かすペナルティーですから、それ相応の悪事を働いた場合に限られます。
対策:
会社の備品を私物化しているという事態がわかったら、始末書などの事実確認文書を提出させ、内容について注意と指導を行い、さらに指導日と指導内容を記録しておくことです。
再発するようならば、備品を持ち出せないような保管方法に改めるなど労働環境の整備を行うことも必要でしょう。
このように、会社としては指導や改善を繰り返し試みたにもかかわらず悪事を続ける場合は悪質ですので、だんだんと厳しい処分にしていってもよいでしょう。
最低賃金はどのように決まるか 2015.03.30
最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低額を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。例えば漫画家のアシスタントという仕事において「憧れの○○先生のもとで働けるなら時給1円でいいです!」と労働者側が言ったとしても、その金額が最低賃金を下回っているので、法律によって「無効」とされ、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。
使用者が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはなりません。
地域別最低賃金
「地域別最低賃金」とは、産業や職種にかかわりなく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金です。各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。毎年10月~11月に最低賃金が決定されます。
特定(産業別)最低賃金
「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業について設定されている最低賃金です。関係労使が基幹的労働者を対象として、「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定されています。
罰則
地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、罰則(50万円以下の罰金)が定められています。なお、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、労働基準法に罰則(30万円以下の罰金)が定められています。
「業務委託」とは何か 2015.03.30
業務委託とは、書類上、形式的には「取引業者のひとつ」として業務を引き受ける形式ですが、実態としては雇用関係、つまり労働者であるものを言います。なぜ企業が労働者を業務委託と偽るかというと、次の理由が考えられます。
・労働者でないなら、残業代の支払いが不要になる
・労働者でないなら、社会保険加入が不要になる
・労働者でないなら、労災の責任所在をあいまいにできる
・労働者でないなら、労働基準法上の「解雇」という高いハードルを越えなくてもよい
つまり、企業側にとって経済的利益が大きいことが理由です。
業務委託関係と雇用関係の最大の違いは「発注者が指揮命令をすることができるか否か」です。指揮命令権の有無は具体的には以下の点を参考に判断されます。
1、仕事の依頼に対して引き受けた側が断ることができるか
2、仕事を進める上で本人の裁量の余地が相当程度あるか
3、勤務時間について発注者から拘束されるか
4、本人のかわりに他の者が労務提供することが認められているか(代わりがきくか)
たとえば美容室などでの業務を命じられている美容師の場合、形式的には業務委託契約であっても、①仕事は原則として断れない、②業務遂行について裁量の余地は少ない、③出勤簿などで勤務時間管理を受ける、④労務提供の代替性も認められていないという状況であれば、労働基準法上の労働者と判断される可能性が高いでしょう。
一方で、社会保険料や残業代の負担を想定しなくてすむ分、当人に高い報酬を支払うことができる可能性もありますから、いわゆる「仕事のできる人、あれこれ指示されたくない人」にとっては、業務委託という形式で働くことはメリットもあるかもしれません。
いずれにせよ書類上だけで業務委託契約を整えたことになりません。実際の仕事の命令の方法や業務の管理実態まで注意しなければなりません。
労働組合との団体交渉の注意点① 2015.03.19
労働組合との団体交渉の場では、会社側にはとにかく冷静な対応が求められます。会社側出席者は、大声で怒鳴る、法律違反の言動を不用意にするなどの行為がないようにしなければなりません。ただし、弱気な態度でいると相手のペースに巻き込まれてしまいます。あくまでも「堂々と」交渉に臨む気持ちをもちましょう。
以下に団体交渉の際の注意点を紹介します。
1、出席者は必ずしも社長でなくてもよい
労働組合側は、社長や代表者が団体交渉に出席するよう要求してきますが、必ずしも社長である必要はなく、人事課長や総務課長が出席しても構いません。ただし、その出席者は交渉内容について社長と同等の決定権をもっていなければなりません。
社長が出席すると、相手は労働法に関する知識不足をわざと社長に向けて集中的に指摘し、交渉を優位に進めようとしてくる可能性があります。社長が激高してしまう性格であるなど、キャラクターによっては他の出席者の方が良い場合もあるので、出席者の選定は慎重に行いましょう。もちろん弁護士を代理人として立てることも有効です。
2、団体交渉の場所はできれば社外で
団体交渉の場所として社内の会議室や、合同労働組合の会議室などを指定して来ることがありますが、それも応じる必要はありません。社内会議室を使用した場合、労働組合側は団体交渉が行われていることを他の社員に知らしめようとする可能性もあります。また、わざわざ相手の土俵で交渉をする必要もないでしょう。会議室に余裕がないなどの理由を伝えて、外部の貸し会議室などを用意したほうがよいでしょう。
団体交渉は通常1回では終わらず2回3回と続きますが、第1回の団体交渉での進め方が以後の事実上のルールになってしまう傾向があります。最初のルール決めは相手のペースに乗ることのないように慎重に準備をして進めましょう。
労働組合からの団体交渉について 2015.03.19
団体交渉とは、労働組合側が団体で労働条件についての交渉を持ちかけることをいいます。
労働組合が自社になくても、労働者が社外にある「合同労働組合」に加入して団体交渉を要求してくるケースが近年では増えてきています。最近は労働組合を組織している会社も多くないので、一部の大企業を除けば、合同労働組合が交渉相手にあることがむしろ目立っています。
合同労働同組合とは
合同労働組合とは、所属する職場や雇用形態に関係なく、企業の枠を超えて、産業別、業種別、職業別、地域別に組織する労働組合です。組合のない中小企業の社員が個人単位で加入するほか、社内労働組合に加入している大手企業の社員が加入するケースもあります。
合同労働組合からの通知
自社の社員が合同労働組合に加入すると、たいていはいきなり「労働組合加入通知」を会社に送ってきます。これは「あなたの会社の社員○○が労働組合に加入した」と知らせる物ですが、もちろん加入したことだけを伝えたいわけではなくて、「これから労働条件について団体交渉をします」という意思表示と取っていいでしょう。
団体交渉の申し入れ
団体交渉で多く取り上げられる議題は「未払い残業代」「有給休暇」「解雇や労働条件引下げ」です。これらについて話し合いに応じるよう求めてきます。団体交渉の申し入れは文書で送られてきます。
団体交渉は断ってよいか
団体交渉をする権利は法律で保障されていますので、団体交渉のテーブルに着かずに放置することはできません。放置してしまうと「団体交渉を断るようなヒドい会社だ」という、会社にとって悪い事実ができてしまいます。交渉が不利に進むことのないよう、冷静に対応をすることが経営者には求められます。
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