労務コラム

就業規則について②   2012.11.29

就業規則にはどのような情報を書かなければならないのでしょうか。

 

(就業規則に記載する情報の種類)

就業規則には「絶対的必要記載事項」と「相対的必要記載事項」の二種類を記載します。

絶対的必要記載事項とは、就業規則に記載が義務づけられている事項、相対的必要記載事項とは、その定めをする場合には記載義務のある事項をいいます。

 

(絶対的必要記載事項)

次の事項は必ず就業規則に記載しなければなりません。

(1)始業及び終業の時刻、休憩時間、休日・休暇、労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合における就業時転換に関する事項

(2)賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切及び支払の時期、昇給に関する事項

(3)退職に関する事項

 

(相対的必要記載事項)

次の定めをする場合には就業規則に記載しなければなりません。従って、定めをしない場合は記載する必要がありません。

(1)退職手当の定めをする場合は、労働者の範囲、退職手当の決定・計算・支払いの方法及び支払の時期に関する事項

(2)臨時の賃金等及び最低賃金額の定めをする場合は、これらに関する事項

(3)労働者に食事、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合は、これに関する事項

(4)安全及び衛生に関する定めをする場合は、これに関する事項

(5)職業訓練に関する定めをする場合は、これに関する事項

(6)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合は、これに関する事項

(7)表彰及び制裁の定めをする場合は、種類及び程度に関する事項

(8)当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合は、これに関する事項

 

退職に関する事項(退職年齢等)は絶対的必要記載事項ですが、退職手当(退職金)に関する事項はその定めがある場合は記載しなければならない相対的必要記載事項です。従って、退職手当を支給しない場合は記載する必要はありません。相対的必要記載事項は、その定めをしない場合は記載する必要はありません。

(労働条件の明示義務との違い)

これらの「絶対的必要記載事項」「絶対的必要記載事項」の多くは、雇用契約書などの必要期再事項と一致していますが、例外があります。

つまり、「労働契約期間」「就業場所(転勤の有無)」「仕事の内容」については、個別の労働契約の際には別途定めなければなりません。

 

以上就業規則に就いて②でした。

就業規則について①   2012.11.28

就業規則とはどのような会社が作成しなければならないのでしょうか。

 

(就業規則の作成の基準)

就業規則はすべての事業場で作成を義務づけられているものではありません。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。就業規則を変更したときも同様です。

つまり、常時10人未満の会社の場合は就業規則の作成及び届出をしなくてもよいとなります。

 

(常時10人未満の場合でも就業規則を作ったほうがいい場合)

10人未満であっても、例えば「労働時間が総じて長く、残業に対するトラブルリスクがある場合」や「有給休暇や休職について労働者から質問されるなど、ルールの明確化が必要な場合」「企業秘密情報の管理ルールを定める必要がある場合」などの場合、事前に会社のルール明確化のために就業規則を作ったほうがよいでしょう。

 

(トラブル対策としての就業規則)

具体的には、以下のような就業規則作成のリスク対策ポイントがあります。

1、労働時間が長い、休日が少ない等、残業代トラブル

→定額残業制度を新たに導入したり、変形労働時間制の導入したりすることで、残業代を巡ってトラブルになったときに予想外の金銭リスクがないように調整するなどして対策します。

 

2、休暇、休職など

→年次有給休暇の取得に際して、会社に事前○日前までに書面で申請するなどのルールを明確にしたり、休職や休職からの復帰の基準を明確にすることで対策します。

 

3、企業秘密情報や競業避止など

→会社の重要な情報(顧客の個人情報や技術ノウハウなど)を管理する基準を明確にし、その規定に違反した者を懲戒するなど定め情報漏洩等トラブルを抑止します。

 

就業規則の記載事項は、記載が義務づけられている事項(絶対的必要記載事項)と、その定めをする場合には記載義務のある事項(相対的必要記載事項)があります。

 

以上、就業規則について①でした。

 

賃金の支払い形態について   2012.11.17

賃金の支払い形態の種類

 

賃金の支払い方には様々な種類があります。どのような種類があるのでしょうか。

 

(賃金支払い形態の種類)

月給制、日給月額制、日給制、時間給制などのように分類されます。

 

①    月給制(完全月給制)

基本給の額が月額で決定され、欠勤などがあっても減額されることなくその月額で支払われます。

 

②    日給月給制

基本給の額は月額で決定されますが、欠勤や遅刻・早退があると、その日数や時間数分が差し引かれます。日給月給制のことを単に月給制と呼ぶことも多く、誤解の元となりがちです。日本では、正社員給与の多くがこの「日給月給制」でしょう。

 

③    日給制

基本給の額が1日いくらという日額で決定されます。その他の手当は月額単位という場合もあり、1か月分をまとめて支給します。

 

④    時給制

1時間を単位として賃金額が決定され、1か月間の勤務時間数に応じて計算します。

 

⑤    出来高払い制(歩合制)

労働の結果として出来高により決定されます。ただし、労働基準法27条に、「出来高払い制その他の請負制(いわゆる歩合給制)で使用する労働者についても使用者は労働時間に応じ一定額の賃金を保障しなければならない」と定められています。一定額の保障とは平均賃金の6割程度とされています。

 

⑥    年俸制

個人の年間の賃金総額が、1年を単位として決定されます。しかし年俸制であっても賃金支払いの原則から、12分の1ずつ毎月支給、あるいは16分の1を毎月支給し、残りを賞与時期に支給する、などとします。

 

(賃金の控除について)

賃金は全額支払うことが原則ですが、所得税や住民税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の本人負担分は給与から天引きして支払うことが、法令で認められています。

また、労使協定を結べば、団体保険の保険料や親睦会費、旅行積立などを控除することもできます。

 

 

以上、賃金の支払い形態についてでした。

平均賃金について   2012.11.16

平均賃金とは

 

労働基準法で定められている手当や補償等を算定するときの基準となる金額です。

 

最低賃金の計算が必要となる事由

1、 解雇予告手当(即解雇の時)

2、 休業手当(使用者の責めによる休業時の補償給)

3、 年次有給休暇の賃金

4、 業務上の災害補償

5、 減給制裁の制限

 

平均賃金は労働者の生活を保障するためのものですから、通常の生活賃金を算定することが基本です。

原則として自由の発生した日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額となります。

 

賃金総額とは実際に支払われた賃金のすべてです。賃金総額を通常の支払われる基本給+諸手当だけであると誤解して計算している事業所も見かけられますが、残業手当や通勤手当、歩合給などもすべて含めて算出します。

 

賃金総額について

次のものは、賃金総額に含みません。

1、 臨時に支払われた賃金(結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金等)

2、 3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

3、 特別に法令や労働協約で定められていない現物給与

 

以上平均賃金についてでした。

 

会社都合で休業をする場合の補償について   2012.11.15

不景気や業績悪化による会社都合の休業の場合、従業員の賃金を補償しなくてはなりません。そのための「休業手当」とはどのようなものでしょうか。

 

休業手当とは

労働基準法では、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合、(会社の都合により従業員を臨時に休業させた場合)使用者は休業期間中、その労働者に、平均賃金の60%の手当を支払わなければならないとされています。

 

労働契約にしたがった就労の意思がある労働者に対して、会社の都合で就労させずに賃金を支払わないことを安易に認めず、労働者の生活保障をはかるための規定です。

 

民法によると債権者の責めに帰すべき事由がある場合は、賃金の全額について請求することができるとされています。

 

しかし、民法は任意規定ですので、当事者の合意、つまり就業規則や労働協約、労働契約があればこれを排除することができるのです。

 

なお、労働基準法は強行法規ですから、当事者の合意があってもこれを下回ることはできません。

 

使用者の責めに帰すべき事由とは、

工場の焼失、機械の故障、原材料不足、資金難、生産過剰による操業短縮、監督官庁の勧告による操業停止など、かなり広範囲です。

 

使用者の責めに帰さない事由とは、

天災事変による不可抗力などで、この場合は使用者に休業手当の支払い義務はありません。

 

この休業手当は、労災による休業(労災保険による補償)、従業員の自己都合による欠勤とは別物として考えなくてはなりません。

 

以上休業手当についてでした。

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