- ホーム
- 労務コラム
管理職には残業代を払わなくてもよい? 2013.01.15
「管理職には残業代を支払わなくてよい」という考え方が巷にはありますが、本当でしょうか。
(法律根拠)
労働基準法では、第41条で「監督若しくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」といいます)については、「労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しない」となっています。
週40時間・1日8時間といった労働時間の制限や、週1日は休日を与える義務があるといった労働基準法の規定が適用されない。つまり、管理監督者には、この条文を根拠として「時間外労働手当や休日労働手当を支払わなくても良い」ということになっています。管理者は「経営者と一体的な立場」にあって、自分自身が労働時間についての裁量権を持っているので、労働基準法で保護する対象としてふさわしくないからというのが理由です。
(管理監督者にあたるかどうかの判断)
よく誤解されていますが、「役職がつけばそれが管理監督者」ではありません。役職名・肩書きには関係なく、実態で判断されます。通達によると、管理監督者とは、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされています。具体的には以下の4つを基準として判断されます。
①重要な職務と権限が与えられていること
企業の経営方針や労働条件、採用の決定に関与していて、経営者と一体的な立場にあることが求められます。例えば「採用決定に関与している」「社員の人事考課の重要な決定をなす」「社員の勤怠管理を担う」「経営戦略などの作成に関与する」などの職務を行っているかどうかで判断されます。
②出退勤について管理を受けないこと
始業・終業時間を拘束して、遅刻・早退の際に給与を減額したり、懲戒処分の対象としているような場合は、自由裁量がないと判断されて管理監督者とは認められません。ただし、管理監督者であっても深夜勤務手当の規定の適用は除外されていませんので、タイムカード管理をしているだけで管理監督者として認められないとは限りません。
③賃金面で、その地位に相応しい待遇がなされていること
管理監督者という立場にふさわしい給与が支払われているか否かも判断のよりどころになります。通達でも「定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等」とあります。
④現場に出て他の一般労働者と同様の業務を行っていないこと
管理監督者として「監督される側」の作業を行っていることは、管理監督者でない根拠を強める事になります。例えば、工場長だがラインに混じって作業をしている場合は管理監督者として認められない可能性が高いでしょう。
以上の3つの点について総合的にみて、管理監督者であるかどうか判断されます。
以上の事から、日本の労働環境に置いては「管理監督者として認められる管理者はほとんどいない」と言えるでしょう。
以上、管理監督者についてでした。
配置転換による給与を引き下げ 2013.01.15
配置転換(人事異動により、従業員の勤務地・職務などを変更すること)により手当をなくしたり、給与を引き下げたりすることはできるのでしょうか。
回答:部署の異動や仕事の内容変更に伴って給料の額を変更することはできますが、変更は慎重に行う必要があります。
給与条件引下げがみとめられるか否かは、賃金のどの部分が、どんな理由で変動するかがポイントになります。
その部署や仕事の変更による「手当」の変更は、場合によっては部署移動によるメリットとも認められ、合理性は認められやすいでしょう。
例えば、営業部員が事務職に配転になったために、その人は営業手当をもらえなくなるという場合、その営業手当が「営業職を行う上で必要な出費」として支給されていたのであれば、配転によって、その社員のその出費もなくなるため不当な賃下げにはあたらず、配転命令は有効とみられます。
一方で、生活給である基本給が大幅に下がるようなときは、いかに使用者の裁量権が認められているといっても「権利の濫用」とされ、配転命令は認められない可能性が高いでしょう。
社員がそれまでついていた職務がなくなることとなり、雇用を維持するためにはどうしても基本給の減額を伴う配転を行わなければならないなどの特別な事業がある場合には、その内容を対象者に十分に説明し、納得を得ることが必要でしょう。
以上、配置転換による給与引き下げについてでした。
広告と別条件での労働契約について 2013.01.11
求人広告と異なる条件で労働契約を結ぶことができるか?
求人広告と異なる条件で労働契約を結ぶとき、広告の内容通りの労働条件を結ぶべきでしょうか?
これは、かならずしもその通りの労働条件にする必要はありません。
[広告掲載の条件は見込みである]
求人広告に記載された賃金額はあくまでも見込みであり、必ずしも広告どおりの労働条件で受け入れる必要はありません。
[労働契約申し込みの誘引]
一般に会社が社員を雇い入れようとする際には、新聞や求人雑誌に求人広告を出したり、ハローワークに求人票を提出したりします。
当然これらには、求職者が応募するかどうかを検討するために賃金や労働時間などの条件を提示します。
こうした募集にかかわる行為は、法的には「労働条件申し込みの誘引」と考えられ、求人広告などを見て求職者が応募する行為は「契約の申し込み」となります。そして、この契約の申し込みを受けた事業主が、採用面接などの段階をへて採用を決定した時点で、はじめて労働契約が成立します。つまり、求職者が応募してきた時点では、まだ労働契約は結ばれていないのです。
[実際の条件が違いするのは問題である]
求人広告で示した条件で雇い入れる必要はないとしても、求人者は提示された条件を判断材料として応募したのですから、あまりに条件が違いすぎることも問題です。
ですから、広告や求人票などの条件は一応の目安であるといってもなるべく実際の労働条件もこれに合わせることができる程度に柔軟な対応をするのが望ましいといえます。
実際の判例でも、求人広告は就職申し込みの誘引なので、採用面接で広告の賃金額を異なる合意があれば「労働者を保護する特別の事情がない限り、その合意に従って賃金額が決定される」とされており、広告の条件と面接で合意した条件が異なることは何ら問題がないとされています。
ただ、「求人者はみだりに求人票記載の見込み額を著しく下回る額で賃金を確定すべきではないことは信義則から明らかである」という制約があることを覚えておきましょう。
以上、広告と別条件での労働契約についてでした。
試用期間について 2013.01.10
本採用の前に試用期間を設けるとき、試用期間はどの程度の長さまで認められるか?
一晩的には1ヶ月から6ヶ月くらいの期間が設定されます。
[試用期間]
会社が本採用を決定する前に、社員の職務遂行能力や適性などを判断する期間を言います。
[試用期間の長さに法の規制はない]
試用期間の長さについては、法の規制はありませんが一般的には1ヶ月から6ヶ月くらいの期間が設定されます。
なかには1年間の試用期間を設ける例も見受けられますが、社員の立場が不安定であることから、あまり長すぎる試用期間は無効とされることがあります。
また、試用期間中であっても、雇い入れの日から14日を経過すると、解雇予告が必要です。さらに、「おおむね6ヶ月を経過すると、最低賃金法の適用除外者でなくなるとする」という判例もありますので、注意が必要です。
[試用期間が不当に判断される場合]
(例1)すでにパートタイム社員として務め、正社員と同じ業務について2年間務めている人を1年の試用期間ののち、正社員として採用する場合。
すでに一般社員と同じ業務について相当の期間が経過しているとういう事実があるので、適性を判断するには、ごく短い期間で十分と考えられます。したがって、設定した試用期間は不当に長いものと判断される可能性が高いです。
(例2)試用期間の本来の目的を逸脱し、賃金を低く抑えることを目的とした試用期間
実際、あるメーカーが1年を超える試用期間を設けて争われた判例では、まず、試用期間中の労働者は、賃金や雇用の面で不安定な地位に置かれることを認め、1年を超える試用期間は公序良俗に反すると判断しています。
つまり、1年を超える試用期間は必要以上に長すぎると認めたわけです。
もちろん、業種や職種、本人の経歴など、様々な要因によって必要とされる試用期間の長さはまちまちですが、使用者は、試用の目的に沿った形で試用期間を設ける必要があります。
以上、試用期間についてでした。
就業規則について③ 2012.11.30
就業規則はただ会社が一方的に作成するだけでなく、従業員の意見を聞かなければなりません。
(労働者の意見をもらう方法)
会社は、就業規則の作成と変更について、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、労働組合がない場合には労働者の過半数代表者の意見を聴かなければなりません。そのため過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表者の意見書を就業規則に添付して、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。
意見書には法定様式はありませんが、①「意見書というタイトル」②宛先(○○株式会社代表取締役○○など)③日付④意見の内容⑤労働者代表者の署名または記名押印という情報を入れておいてください。
なお、過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表者の意見書は添付してあればよく、内容が反対意見であっても構いません。
(就業規則の周知とは)
就業規則は、前述のとおり労働者代表の意見書を添付の上、管轄労働基準監督署に届出します。さらに、事業場の労働者に周知してはじめて効力がでます。
周知の方法に就いては、①事務所の棚に備え付ける②就業規則データを会社PCなどに保存し、閲覧可能な状態にしておく③全体の説明会を開催するなどの方法が考えられます。
周知は、必ずしも全員にプリントアウトして配布するまでしなくてもよいです。
(その他:育児・介護休業規程など)
育児介護休業法による育児休業及び介護休業に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項です。従って、育児休業及び介護休業の対象となる労働者の範囲等の休業の付与要件や、取得に必要な手続、休業期間については、就業規則に記載する休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項です。この休暇には育児休暇や介護休暇も含まれます。育児介護休業法による育児休業、介護休業も育児休暇、介護休暇に含まれます。従って、絶対的必要記載事項になります。
実際には、「育児・介護休業規程」などの別規程を定めて、就業規則に添付するなどします。
(古い就業規則はいつ変更するか)
就業規則を10数年前に作成し、その後変更等をしていない場合、現行法規通りになっていない可能性があります。10年前と比べると労働基準法も大きく改正されていますし、企業の労働条件も変更されていると思われます。変更内容の労働者への説明は当然必要ですが、それに伴い就業規則の変更、所轄労働基準監督署長への届出も忘れずに行う必要があります。
労働条件が変更された場合、就業規則の該当部分を変更する必要があります。しかし、中小企業の場合はおろそかにされる場合が多々あります。就業規則の変更は労働基準監督署長に届け出る必要もありますが、これを確実に行っている中小企業は少ないと思います。必要な手続は確実に行い、就業規則と実態を合わせましょう。
(就業規則は会社の自由に変更できるか)
就業規則は会社が自由に変更できますが、変更が労働者に不利益になる場合、合理的な理由がないとして変更が無効とされた裁判例もありますので注意が必要です。
以上就業規則に就いて③でした。
新着エントリー
- 障害者雇用率制度の概要
- 労務関係の書類保管について
- 社内恋愛を禁止する正当性
- 業務外でトラブルが発生した社員の対応
- アルバイトも有休を取れるのか
- 夏休みや冬休みを有給扱いにできるか
- 在宅勤務のみなし労働時間制度
- 社員を雇った時の書類をきちんとしよう
- 「会社側の」面接のマナー
- 社会保険適用拡大について
カテゴリ別エントリー
月別エントリー
- 2017年12月 ( 15 )
- 2017年5月 ( 3 )
- 2017年4月 ( 3 )
- 2017年2月 ( 2 )
- 2017年1月 ( 2 )
- 2016年12月 ( 5 )
- 2016年11月 ( 19 )
- 2016年8月 ( 3 )
- 2016年7月 ( 3 )
- 2016年6月 ( 4 )
- 2016年5月 ( 7 )
- 2016年4月 ( 4 )
- 2016年3月 ( 4 )
- 2016年2月 ( 2 )
- 2016年1月 ( 3 )
- 2015年12月 ( 8 )
- 2015年10月 ( 4 )
- 2015年9月 ( 6 )
- 2015年8月 ( 6 )
- 2015年7月 ( 5 )
- 2015年6月 ( 6 )
- 2015年5月 ( 6 )
- 2015年4月 ( 6 )
- 2015年3月 ( 8 )
- 2015年2月 ( 6 )
- 2015年1月 ( 4 )
- 2014年12月 ( 7 )
- 2014年11月 ( 6 )
- 2014年10月 ( 5 )
- 2014年9月 ( 6 )
- 2014年8月 ( 6 )
- 2014年7月 ( 6 )
- 2014年6月 ( 6 )
- 2014年5月 ( 10 )
- 2014年3月 ( 4 )
- 2014年2月 ( 5 )
- 2014年1月 ( 4 )
- 2013年12月 ( 8 )
- 2013年11月 ( 5 )
- 2013年10月 ( 6 )
- 2013年9月 ( 7 )
- 2013年8月 ( 4 )
- 2013年7月 ( 8 )
- 2013年6月 ( 3 )
- 2013年5月 ( 5 )
- 2013年4月 ( 7 )
- 2013年3月 ( 3 )
- 2013年2月 ( 4 )
- 2013年1月 ( 10 )
- 2012年11月 ( 10 )
- 2012年10月 ( 9 )
- 2012年9月 ( 10 )
- 2012年7月 ( 6 )
- 2012年6月 ( 3 )
- 2012年5月 ( 3 )
- 2012年4月 ( 3 )
- 2011年9月 ( 2 )
- 2011年8月 ( 1 )
- 2011年7月 ( 3 )
- 2011年6月 ( 3 )
- 2011年5月 ( 5 )
サービス一覧
代表やなばらのブログ
- 2015.08.16
- 【必死で泳ぐ、好奇心、ハイボール】
- 2015.08.10
- 【部下へのアドバイスはやめましょう】
- 2015.08.10
- 【笑顔は結果ではない】
- 2015.05.27
- ドライとウェットの二択で迷う前に。
- 2015.05.01
- 労働市場は変わっている
労務コラム
- 2017.12.20
- 障害者雇用率制度の概要
- 2017.12.20
- 労務関係の書類保管について
- 2017.12.20
- 社内恋愛を禁止する正当性
- 2017.12.20
- 業務外でトラブルが発生した社員の対応
- 2017.12.20
- アルバイトも有休を取れるのか
SRP認証事務所です
当事務所はSRP認証事務所です。個人情報保護の基準を満たしていることを全国社会保険労務士会連合会より認証されています。(認証番号:131535)