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問題社員の解雇について② 2012.09.19
問題社員の解雇、特に能力不足の社員を解雇する場合には、問題点の改善のため の教育・研修をしているかどうかが重要になります。 また、問題社員の「問題」とは何かを客観的に証明できるかも重要です。 以下、問題社員の解雇事案の際に裁判所が重視する点について説明します。 (問題の程度) 1、勤務態度不良の程度 お客様からのクレーム事実が、「日付」「状況」「クレーム内容」など詳細に記 録されているでしょうか。 たとえばクレームがあった場合には、「クレーム報告書」などの所内書式に基づ いて本人から報告をさせることでそのクレーム事実を証明しやすくなります。 2、問題発生の回数 何回も同様の種類のトラブルを繰り返していることは解雇しやすい方向の要素に なります。 「何回も指導したのだけど改まらなかった」という状態であることです。 3、問題点、問題行動について会社の指導があったのか 解雇する前に十分な注意、指導、教育を行っているかが大事です。長期間複数回 にわたってきっちりとした注意指導をするほど解雇しやすい方向になります。 指導の事実は「指導書」などの書面化するほか、口頭や電話、メールなどでの指 導も「〇月〇日に〇〇という事案について△△という方法でこのように指導し、改 善の意思を確認した」などの記録しておくべきでしょう。 4、改善指導について、本人の態度はどうだったか 改善指導、いわゆるイエローカードに対して本人がどのようにリアクションした かも重要です。 5、他の社員との公平性はあるか 同じような問題行動・ミスをした他の社員はどんな処分を受けていたかも重要で す。そこに不公平がある場合は解雇しにくくなります。 以上のことから、「教育指導をしつつ、その指導事実を記録しておくこと」が、 解雇の有効性を考える上で重要になるでしょう。 以上、問題社員の解雇について②でした。
問題社員の解雇について① 2012.09.19
問題社員の解雇については、ご存知のようにかなり高いハードルがあると言えます。 日本では、終身雇用制度を前提とした労働理論が発展しており、社員を一人前に 育てて、その能力を高めるのは採用した会社の責任であるという考え方がベース になっています。 つまり、問題社員(特にその能力不足による)の解雇については、「会社側がそ の問題点を注意・指導する段階があるかないか」が重要になってきます。 以下、問題社員の解雇事案について裁判所で重視される要素を示します。 1、解雇する前に、配置転換や職種の変更などで様子をみたか? 他の上司のもとで異なる職務をさせると、能力を発揮しだすこともある。その チャンスを与えているのかを見られます。環境か仕事内容を変えてみたか、とい うことです。 2、会社側に落ち度はないのか? 問題社員の問題について、会社の制度や体制に落ち度がないかを見られます。会 社にも原因がある場合、一方的な解雇は不公平とされる可能性があります。 例えば、教育や研修が不十分である、上司の指示が明確でない、不適切であるなど。 3、即戦力として中途採用された者か、新卒か? 新卒であれば、とくに会社の教育責任の度合いは高いでしょう。単に期待された 能力がないことだけで解雇をすることは難しくなります。一方、即戦力として中 途採用された者について、その採用面接で「即戦力として求めている能力」を はっきりとさせ、かつ、それが一定の常識的な条件下で出来ないときには解雇等 もあり得ると伝えている場合は、解雇の有効性が高くなるでしょう。 4、勤続年数はどのくらいか? 勤続年数が長ければ、基本的な能力には問題がないはずだという推定が働きま す。つまり、「基本的な能力が足りないならばもっと早い段階で処分や再教育が あったはず」という考えが出てきます。 これらを考えると、経営者は雇入れの段階から「教育コストはかかるもの」とい う認識でいたほうがよさそうです。 以上、問題社員の解雇について①でした。
社会保険の被保険者について 2012.09.04
社会保険の被保険者とは、どのような働き方をする従業員を指すのでしょうか。 なお、社会保険とは【健康保険(介護保険)・厚生年金保険】のことです。 社会保険の被保険者となるには、以下の要件があります。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 【原則】 適用事業所に使用される者は、適用除外の者を除き、法律上当然に被保険者となる この場合、法人の理事・監事・取締役・代表社員・無限責任社員など、法人の代 表者または業務執行者であっても、法人から労働の対償として報酬を受けている 者は、その法人に使用される者として被保険者の資格を取得します。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 【適用除外】 以下の従業員は適用除外となります。 正社員と比べて、労働時間か労働日数が3/4未満の者 いわゆるパートさん・アルバイトさんが社会保険適用除外となるには、上記の条 件を満たす必要があります。 臨時に使用される者 ・日雇いの者 ・2ヶ月以内の期間を定めて使用される者 季節的に使用される者 ただし継続して4ヶ月を超えて使用されるべき場合には、初めから被保険者とな ります。 臨時的事業の事業所に使用される者 ただし、継続して6ヶ月を超えて使用されるべき場合には、初めから被保険者と なります。 国民健康保険組合など、他の保険制度に該当している者 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 社会保険の調査がある場合、主に「加入すべき人がきちんと被保険者になってい るか」を確認されます。その際、上記の適用除外項目に該当していないにもかか わらず加入していない場合、加入するよう指導されることになります。 多くは、以下のケースが問題になります。 勤務時間の長いパートアルバイトで社会保険に加入していない 正社員で「入社から〇ヶ月経ってから社会保険に入れる」というルールで 社内処理をしている 自社の条件を改めて確認してみましょう。
以上、社会保険の被保険者についてでした。
就業規則の不利益変更について 2012.09.04
就業規則に書かれている賃金・勤務時間・福利厚生などの労働条件は、使用者が 一方的に変更することはできません。例えば、以下は労働者の同意が必要です。 ペナルティーによらない賃金の減額 労働時間・日数の増加 休職・特別休暇などの規定の見直し ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 【根拠】 (労働契約法第9条) 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者 の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。 つまり、一方的に就業規則を変更するだけで労働条件を引き下げることはできな いのです。 ただし、以下の様に例外があります。 (労働契約法第10条) 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業 規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程 度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等と の交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである ときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるとこ ろによるものとする。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 【判断ポイント】 この場合の合理性を判断するポイントは以下の通りです。 1.労働者が被る不利益の程度 2.使用者側の変更の必要性の内容・程度 3.変更後の就業規則の内容自体の相当性 4.代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況 5.労働組合との交渉の経緯 6.他の労働組合又は他の従業員の対応 7.同種事項に関するわが国の社会における一般的状況 ----------------------------------------------------------------------------------------------------- 「会社全体で利益が出ているのに給与を引き下げる」「福利厚生を減らす」な ど、不利益の程度が大きい場合、不利益変更に合理性がないと判断される可能性 が高くなります。 一方で、既存の就業規則やルールが、業界水準や会社規模から見ても高待遇であ り、そのアンバランスを是正するための変更である場合、合理性があると認めら れることもあります。 いずれにせよ、労働条件の変更については、個別の労働者の合意を取り、または 説明をしっかりとして慎重に行うほうがよいでしょう。 以上、就業規則の不利益変更についてでした。
傷病手当金について 2012.09.04
労災でない私生活上の病気や怪我により会社を休んだ場合、健康保険から「傷病 手当金」が支給されます。 【傷病手当金の条件】 傷病手当金は、被保険者(健康保険の加入者)が以下すべての条件に当てはまっ た際に支給されます。 ① 病気やけがのために働くことができない ② 会社を休んだ日が、連続して3日間ある(いわゆる待機期間) ③ 4日目以降も休み ただし、休んだ期間について事業主から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を 受けた場合には、傷病手当金は支給されません。 【いくら支給されるか】 支給額は、病気やけがで休んだ期間、1日につき、標準報酬日額の2/3に相当する 額です。なお、働くことができない期間について、ア、イ、ウに該当する場合 は、傷病手当金の支給額が調整されることとなります。 ア.事業主から報酬の支給を受けた場合 イ.同一の傷病により障害厚生年金を受けている場合 (同一の傷病による国民年金の障害基礎年金を受けるときは、その合算額) ウ.退職後、老齢厚生年金・老齢基礎年金・退職共済年金などを受けている場合 (複数の老齢給付を受けるときは、その合算額) ア~ウの支給日額が、傷病手当金の日額より多いときは、傷病手当金の支給はあ りません ア~ウの支給日額が、傷病手当金の日額より少ないときは、その差額を支給する こととなります 【支給の例】 標準報酬月額20万円、9月1日~9月3日有休消化、9月4日~9月30日無給で休んだ場合 20万円÷30×2/3×27日分=119,880円 上の例で、待機期間の3日は有給・無給を問いませんので、有休消化した場合も 「待機」として扱われます。ただし、連続して3日の待機期間が必要ですので、 飛び飛びに休んだ場合は「待機」として扱われません。 【その他注意事項】 1.医師の証明について 傷病手当金の支給申請には、以下2点が必要です。 ① 医師が労務不能と証明すること ② 会社が給与支払なしと証明すること ①をもらうには、証明書発行の手数料がかかります。傷病による休業期間があま りに短い場合(例えば給付対象が1日しかない場合など)、その証明書発行手数 料を差し引くと実質的支給額が少なくなることがあります。 2.申請のタイミングについて また、傷病手当金は、前述②のように「会社が給与を支払っていない証明」が必 要なため、給与締日の途中までの医師証明を取っても、その月分の給与締日が来 て、給与支払額が確定しなければ申請できません。できれば、会社の給与締日に 合わせて医師の証明を取ることをお勧めします。 以上、傷病手当金についてでした。
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