労務コラム

雇用保険料の内訳・構造   2012.04.11

こんにちは。柳原です。

毎月の給与から天引きされている雇用保険。
一般に「失業保険」という呼び名で認識されていることから、
やめたときの失業保険のために納めているという感覚があります。
しかし本当にそれだけのためのものなのでしょうか。
その保険料内訳やお金の行き先についてはあまり知られていないことから、
今回はこの雇用保険料の内訳と構造について説明します。


1、雇用保険料は会社と従業員で分け合う
雇用保険料は、会社に対して「年度ごとに」かかります。
その計算方法は以下の通りです。

その年度の賃金算定基礎額 × 雇用保険料率

つまり、雇用保険加入者に支払う賃金総額に、雇用保険料率をかけてもとめます。

この雇用保険料率は、年度はじめに見直しがなされることがあります。
(平成24年4月からは雇用保険料率が少し下がりました。)

現在、一般の事業の場合、1000分の13.5(つまり1.35%)
というのがその率です。

そしてこの1000分の13.5のうち、
1000分の5(0.5%)が従業員負担分
1000分の8.5(0.85%)が会社負担分
という内訳になっています。

例えば給与20万円の人の場合
従業員は1000円の負担
会社は1700円の負担
ということになります。

会社のほうが600円多く負担していますね。
ではこの多く負担している分は何なのでしょうか。



2、助成金等事業のため、会社負担分が少し多い

実はこの会社が多く負担している分は「雇用保険二事業」という
いわゆる助成金などの財源にあてられます。
人を採用したり、解雇を防いで継続雇用をしたりといった「雇用の安定のために」なることを
してくれた企業に対して、助成金制度により再分配をしている構造になっています。

言い方をかえると、「助成金を活用しない企業」が「助成金をよく活用している企業」のために保険料を負担しているという性格があります。
無理に要件に該当させることはありませんが、
自社に助成金受給の資格があるならば、積極的に活用したい制度ですね。


今回は雇用保険料の内訳と構造についてでした。

トラブルを予防する雇用契約書の書き方のコツ②試用期間について   2012.04.05

 

こんにちは。柳原です。
雇用契約書に潜むトラブルのタネ、今回は「試用期間」についてです。

試用期間は法律上定めなければならないものではありませんが、実際には社員としての適格性を見るために(あるいは労働者側が会社の風土にならって働けそうかを判断するために)試用期間を定めることが多いです。
また、試用期間は1~3ヶ月とするケースが最も多いです。これについても法律上の根拠があるものでなく、半年でも1年でも構いませんが、あまり長い試用期間が実際には採用されていないことから、長すぎるものは実用性に欠けるのでしょう。
では試用期間にどこにトラブルのタネが潜んでいるか。
トラブルポイントとして
①試用期間中ならいつでも即時解雇できるという会社側の誤解
試用期間で適格性の判断ができない場合の取り扱いについてのルール未整備
この二つが挙げられます。
①試用期間中であっても雇い入れから14日を経過した場合は、30日以上前の解雇予告が必要です。また、解雇には合理性と社会通念上の相当性が必要です。
試用期間の延長の可能性についても雇用契約書上で言及するとよいでしょう。
同時に、就業規則上も試用期間延長の規定をしておきましょう。
試用期間はよく「お見合い」に例えられます。
ミスマッチが起らないように自社に合った定めをしましょう。
最後までお読み頂きありがとうございます。

 

トラブルを予防する雇用契約書の書き方のコツ①転勤について   2012.04.03


新入社員を迎える4月、雇用契約書を取り交わすことも多いことでしょう。
この雇用契約書、実はいろんなところに労使トラブルの種が潜んでいます。

例えば「就業の場所」。
就業の場所は労働基準法上明示しなければならない項目ですが、そこに転勤の可能性を明記していますか?
全国規模で事業展開をされている場合、将来転勤をさせる可能性が少しでもある場合、その旨記載しておきましょう。

転勤拒否を巡る解雇等トラブルを防ぐには

・雇用契約書にきちんと記載する
・就業規則にも同様に記載する
・一方的に決めずに家庭の事情も考えた話合いの機会を持つ

上記の三つが出来ていることが必要です。

チョットしたコツで防げる労使トラブル、今回は転勤について取り上げました。

ご質問ご相談はお気軽にお寄せください。

エンドユーザーが社員のやる気を上げる理由 ~リーダーの言葉で社員が動かないときに~   2011.09.13


「社員の数字意識が低い」

「どれだけ叱咤激励してもモチベーションが上がらない」

「仕事にやりがいを感じていないようだ」

 これらの、ある意味で組織のリーダーが抱える普遍的な悩みを解決する方法とは何でしょうか。

この記事では、「どれだけ言葉を尽くしても社員がやる気になってくれないリーダーの歯痒さ」を解決するために『エンドユーザーの力を借りる方法』を、事例を紹介しながら述べていきます。

 

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【社員のモチベーションアップに成功した事例】

・W銀行(米)のマネージャーは、行員たちに「低金利ローンによってどれだけ深刻な借金から救われたかを語る人々を映したビデオを見せる」ことで、融資業績を向上させた。


・某大学の奨学金事業における寄付の勧誘をする電話事業部において、電話営業担当者と奨学生を会わせ、奨学金がどのように自分に役に立っているかを語ってもらった。一か月後、電話営業担当者の電話をかける時間が142%増え、獲得した寄付金も171%増えた。


・レストランを営むA社(米)において、顧客が大切な出来事を祝うために同社を選んだ理由について書かれた手紙をリーダーがスタッフに見せることで、その接客態度が向上した。


・リッツカールトンにおいては、自分たちのサービスが顧客の人生に影響を与えたエピソードを「WOW!(ワオ!)ストーリー」として社員間で共有することで、サービスレベルの維持向上を図っている。

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これらの事例に共通していることは、

リーダーがエンドユーザー(自社の商品やサービスの最終的な受益者)とスタッフを引き合わせる手段を講じていることです。

これらは、場合によっては昇給昇進などのインセンティブ以上に、社員のモチベーションを上げることがあるようです。

古典的な「現場・顧客に学べ」という理論に通じる施策とも言えます。

そもそも顧客の反応を収集する作業は、元より商品開発や業務改善にも通じる経営上の重要課題であることは異論のないところであると思います。

 

上記のような成果が見込め、同時に経営上も合理性がある以上、これを単に「心理的洗脳」と見て毛嫌いせず、実際に試してみることは無意味ではなさそうです。

つまり、

① 自社の製品・サービスが誰にどんなふうに影響を与えているかの情報を収集・調査し、

② その事実を(場合によっては適切な演出をしたうえで)部下に伝えてあげることで

③ 業績あるいは社員のモチベーションにどのような変化があったかを測る

という作業が、ひょっとしたらリーダーが抱えがちな冒頭の悩みを解決できるかもしれません。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。


参考文献:ハーバード・ビジネス・レビュー2011年10月号

責任の組織化~ドラッカー読む会レポート~   2011.09.06

こんにちは。カウンター&パートナーの柳原です。

9月上旬です。台風や大雨もあり、あわただしく過ぎつつある毎日です。

異常気象をすなわち地球の異変と結びつけるというのも短絡的に思いますが、実際のところはよくわかりませんね。

東京は結局台風の影響もそう多くはなかったですが、みなさんの地域はいかがてしたか。

 

さて、恒例となっている「ドラッカーを読む会for美容室」のレポートです。

今回は新しくご参加いただいた方もお迎えして、6人で話し合いました。ご参加いただいた皆様、いつもありがとうございます。

 

今回のテーマは「仕事への責任」について。

「責任感を持って仕事をしてくれない」「数字に対する責任意識が低く、会社の業績に協力的でない」「給料や有休などの権利ばかり主張して、責任を果たそうとしない」

社長さん、店長さん、マネージャーさんからよくお聞きする、ある意味で古典的な悩みです。

日々ぎりぎりに体をすり減らして業務に臨む経営者からすれば、部下の責任意識の低さはやたらと目につく。その温度差に着目した議論が盛り上がりました。

 

問い:数字意識の低く、協力的でないスタッフ。その原因が自分にあるとしたら、何だと思いますか?

 

このような問いに対しては、

「売上などの数字を公開していないから」「根拠のある目標数字をスタッフに落とし込んでいないから」「感情的に経営サイドと対立しているから」

そんなご意見を頂きました。なるほど。

この回答からは新たな問いを生むことができますね。

 

では、数字意識を高めるために公開すべき数字は何か?また公開すべきでない数字は何か?

では、最も根拠のある目標数字とは何か?

では、感情的な対立は何を原因としているか?報酬なのか、労働環境なのかそれとも他の何かなのか。


ドラッカーの本では、とかくこのように「問いの発展」の論法が用いられていて、それが読んでいてわくわくする要因である、僕はそう感じています。

「これらの問いのどこかに、責任感を持たせるためのヒントが隠されてはいないか」、そのように考えながら、問い自体を深めていくこと、それがマネジメントに求められていることなのだと思っています。

 

私の中では、参加者のお一人が仰った次の意見に合点がいきました。

 

「ウチの店では全体の売上数字目標ないしは実績を公開し共有することに重きを置いています。スタッフには楽しく働いてほしいが、彼らの多くは自分個人に課せられている数字の根拠がわからない。個人の指名売上に固執させるよりも、店全体の売上に重点を置かせるようにするほうが協力意識を育てるには有効です。』

 

別の経営者から聞いたお話ですが、震災の影響で売り上げが激減したときに、次のように話したそうです。

「ボクたちみんなで作った貯金が今これだけある。今の状況だと〇ヶ月でその貯金がなくなってしまう。でも給与は下げない。だからみんなで解決策を練ろう」

この言葉かけの結果、売り上げはV字回復し、スタッフの数字意識とその数字に対する責任感も高まったと言います。

美容室のサービスの最高点が「全体接客の達成」にあるとすれば、上記2つのご意見はそれと矛盾しないものですね。勉強になります。

いや、勉強になるのは実際に自分たちで決めて「数字を公開する」という行動を起こしてからですね。話を聞いただけ、文章を読んだだけでは、世界はちっとも動いていませんから。

 

 

問い2:スタッフが給与に対して不満を言ってきました。あなたはどのように対応しますか?

 

次の問いはこれです。こちらも盛り上がりました。

「平均以下の売り上げのスタッフなら、数字的根拠を持って諭す」「ただしトップスタイリストなら給与アップも検討する」

このようなご意見で概ね統一されていました。

これも「問いの発展」論理に従って展開してみるとどうでしょうか?

 

では、その平均以下の売上のスタッフが、半年前はバリバリ売上を上げていた人ならどうしますか?

では、その平均以下の売上のスタッフが、個人的な家庭の悩みを抱えていると知っている場合はどうしますか?

では、そのトップスタイリストが、独善的で上司を軽視したり、職場の和を乱しがちな人ならどうしますか?

 

このように設定を少し変えて発展させると、自らの意見が論理的に正しくはないかもしれない、そう思わされませんか?

 

「責任感のないスタッフ」は、自分の立ち位置と仕事がわかっていないだけかもしれない。それを悪としてしまった自分は間違いではなかったか。自分自身の過去の経験を振り返ってみると恥ずかしい思いがします。

ドラッカーが繰り返し言う「責任の組織化」、組織として戦うことを決めた美容室オーナーならば、きっと真面目に取り組むべき課題だと思います。

 

以上レポートでした。最後までお読み頂きありがとうございます。

 

 

 

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