労務コラム

整理解雇の4要件について   2012.06.07

解雇のうち、主に会社の財務や戦略上の必要性から行うものを「整理解雇」といいます。

(俗に言う「リストラ」とほぼ同義です)

 

整理解雇が認められるのは、判例上以下の4つの要件を満たす場合とされています。



1、整理解雇の必要性があること財務上、または経営戦略上、当該解雇が「どの程度必要であったか」が問われます。例えばある部門の業績が著しく悪い場合などは、部門下の社員の解雇必要性が比較的高いと言えます。


2、解雇を回避する努力をしていること日本では特に解雇に対して高いハードルを設けていますので、整理解雇の是非を問う時は「解雇回避のために会社がした努力の程度」を加味されます。例えば、他の部門への配置転換を打診したか、希望退職を募ったか、などがこれにあたります。


3、人選に妥当性があること解雇対象となる労働者を選ぶ基準が公平であることも要件になります。例えば、高年齢者のみを解雇対象とすることは、人選の公平性をはかる上で会社にマイナスに働きます。


4、説明責任を果たしていること解雇にあたり事前に十分な説明を行っているかも重要です。唐突な解雇通告は労働者の生活を脅かしかねないため、この要件があるものと思われます。



整理解雇の是非を問う時、以上の4つの要件がどの程度みたされているかがポイントになります。リストラ事案に直面している会社の人事担当者の方は、上記の4要件に照らし合わせてみてください。


以上整理解雇についてでした。

解雇予告について②   2012.06.01

解雇予告の義務とは、労働者が解雇により急に職を失い、生活に窮することのないよう(または再就職への時間的猶予を確保できるよう)、使用者に課せられた30日以上前の予告義務のことを指します。

労働基準法では解雇予告が不要なケースも定めています(天災地変による場合や重大な労働者の悪事など)が、この場合も会社側の主観による判断だけでは足りず、「労働基準監督署の解雇予告除外認定」を受ける必要があります。

この「解雇予告除外認定」ですが、実際には労働関係実務を日々取り扱う専門家である社労士でもめったに取り扱わないレアケースです。「そんなヒドイ労働者は解雇予告不要だから、即時解雇して問題ない」とまで言える解雇事案はほとんどないと思うほうが、のちのトラブルリスクを考えると賢明でしょう。

では実際に巷で見聞きする「即時解雇」は解雇予告除外認定を受けているかというと、まずほとんどのケースで受けていないと思われます。ただし、解雇予告に代わる「解雇予告手当」の支払いをした上で即時解雇するケースはしばしばあります。

以上解雇予告について②でした。

解雇予告手当とは何か①   2012.05.23

労働基準法は、解雇に「合理的な理由が必要である」と「予告が必要である」という二つの要件を定めています。これらは、解雇には労働者の生活の安定を脅かす可能性があり(多くの労働者にとっては賃金が唯一の収入源である)、その点で雇用契約は特に慎重に保護される必要性があるからです。

そのうち「解雇予告」は、いわば「再就職先を見つけるための期間」を設けるものですが、次のようなルールがあります。

1、
①30日以上前に予告するか
②平均賃金の30日以上分の解雇予告手当を支払うか
③予告と予告手当を組み合わせるかのいずれかが必要である

一般に「1ヶ月前予告」や「1ヶ月分の解雇予告手当」と誤解されがちですが、正確には「30日以上」です。つまり、解雇予告時期によっては1ヶ月前予告では法律違反となり得ますのでご注意ください。

また、「解雇予告手当には残業代などの手当を含めないでよい」という誤解も起こりがちですが、計算根拠となる平均賃金の計算には残業代その他手当を含めますので、手当を除かずに計算をしてください。

因みに解雇予告手当は「精神的苦痛」「残業代」等と比べて金額が正確に算出できるため、解雇を巡る労使トラブルの際に労働者側が主張しやすいものです(退職した労働者からの「内容証明郵便」の文面に解雇予告手当がしばしば登場します)。

以上解雇予告について①でした。

解雇を損得で考える   2012.05.23

解雇を「するか」「しないか」という場面に直面したとき、 経営者・担当者は何を拠り所にその決断をすればよいのでしょうか。

解雇をめぐる事案には大抵多面性があるため、その決断は慎重に行わなければなりませんが、 それを「損得」という二元論で考えた場合には、次の各要素を対比させて考えることができます。

(解雇を是(得)とする理由)

1、下記の例のように、その者を雇い続けることで回避できるリスクがあるから

  • 素行に問題があり企業秩序維持に著しい支障をきたす
  • 生産性が著しく低く、雇用継続が人件費の無駄以外の理由を持たない
  • 業務上外の素行不良事実を看過すると企業モラルの低下が起きる

2、財務上や、ワークフロー上の無駄が減ることで効率化を期待できるから

(解雇を非(損)と考える理由)

1、法律要件たる「合理性・相当性」が十分でない場合、解雇無効を巡る訴訟が起きるかもしれないから

2、残業代未払いなどの法律違反が明るみになり、さらなる金銭ダメージが起こるかもしれないから

3、助成金が不支給になるなどの副次被害があるかもしれないから

会社は上記を踏まえて、状況に則した判断をしなければなりません。

以上「解雇を損得で考える」でした。

解雇について①重要な2つのポイント   2012.05.10

こんにちは、カウンター&パートナーの柳原です。
今日は解雇について。

解雇について①

「日本では解雇をしにくい。だから正社員雇用は慎重にしなければ・・・」と巷で言われていますが、その根拠はどこにあるのでしょうか。本稿では、解雇にまつわる法律について解説します。
解雇の有効無効については、次の二つが重要なポイントとなります。

1、解雇は、「客観的にみて合理性があり」、「社会通念上の相当性がある」ことを求められる。

客観的な合理性の有無とは、『解雇という重いペナルティーに見合うほどの事実があったか』と解釈できます。その事実は「労働者の問題(横領や無断欠勤など)」と「会社の問題(業績悪化など)」に分類され、過去の判例を拠り所にしてその合理性を判断することになります。

また、社会通念上の相当性とは、「いわゆる一般人10人に解雇の是非について聞いてみたとして、8人~9人が『解雇止むなし』と考えるかどうか」と解釈できます。
上記を満たさない場合は、解雇無効(効力なし)となり、その人との雇用関係は継続することになります。


2、解雇が有効だったとしても、多くの場合「事前予告」をしなければならない。

1の要件をみたす解雇であったとしても、急なクビをするとその人の生活に支障がでる(かもしれない)ために、30日以上前の予告が求められるわけです。※予告についてはさらに詳細な決まりごとがあります。

「合理性・相当性」と「予告」。労使トラブルを防ぐためにも、解雇のことを考えるときにはまず思い浮かべて欲しいポイントです。

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