労務コラム

協調性のない社員を解雇できるか   2015.02.20

社内行事に参加しない、協力して行うべき掃除などの雑務をしないなど、協調性がない社員を解雇することはできるのでしょうか。

 

一般的には、単に協調性のなさをもって解雇することは難しいでしょう。

判例では「協調性のないことが業務を遂行する上で重大な障害となっている状態」でなければ解雇は難しいとしています。

「協調性の無さが重大な障害である」とする場合は、以下の点に注意しなければなりません。

 

前提:

就業規則などの解雇理由に「協調性がない場合は解雇とする」などの規定があること。

 

必要なポイント:

1、その行為が繰り返し行われていること

2、その行為が起きた日時を記録していること

3、会社がその者を教育・指導するなど、改善のための努力を行っても改善が見られないこと

4、会社が教育・指導をした事実・日時を記録していること

5、その行為により業務の遂行に具体的な支障があった事実を記録していること

6、その者より勤務態度が悪い者を不問にしていないこと

 

裁判では会社には広く従業員を教育指導する義務があると考えられます。会社として「これだけの指導をして協調性を促したのだが更生せず、結果的に○○という損害や支障が出た」と言えなければ解雇は難しいと考えてください。

 

一方で、協調性とは何かを定義し、その行動を客観的に評価した結果昇給・昇格などの処遇に影響させることはできます。協調性のなさが会社にとって問題であることを理解させるには、人事評価制度とリンクさせて指導することも有効でしょう。

 

 

 

 

 

法定労働時間の原則と例外②   2015.02.11

毎月月末は忙しいが、月初から中旬は忙しいような業種の場合、「1日8時間、1週40時間」という法定労働時間の原則だけでは柔軟な対応ができません。そのため労働基準法では、「変形労働時間制」という例外的な制度を認めています。

変形労働時間制は以下の種類に分かれます。

 

1、1ヶ月単位の変形労働時間制

「1ヶ月単位で労働時間を日ごとに設定し、1カ月平均で見れば法定労働時間を上回っていなければOK」というものです。

例えば暦上の日数が31日の月(所定労働日数22日)において、

①    前半の10日は1日10時間働く

②    後半の12日は1日6時間働く

という月間カレンダーを定め、就業規則その他で対象者や対象期間などを定めます。

この場合①の期間中は「1日8時間、1週40時間」を超えていますが、月間平均をすると平均約39時間で、週40時間以内に収まっています。このように1ヶ月の内に繁閑の差がある業種の場合、この制度の導入が検討できます。

 

2、フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、「1ヶ月の総労働時間のみあらかじめ設定し、始業、終業の時刻は従業員が自由に決めてよいことにする。1ヶ月で締めたときに法定の労働時間を上回っていなければOK」という考え方の労働時間制です。フレックスタイム制の場合、「各自の好きに出社や退社ができる時間帯=フレキシブルタイム」と「絶対出勤しなければならない時間帯=コアタイム」を設定することもできます。毎日同じ時刻に全員が出社する必要がない業種の場合、効率的に働くことができるでしょう。

 

3、1年単位の変形労働時間制

変形期間を1ヶ月超~1年とする変形労働時間制です。季節によって繁閑の差がある業種であれば効率的な労働時間を設定することができるでしょう。1年単位の変形労働時間制の場合、労使協定を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。

 

4、1週間単位の変形労働時間制

その他1週間単位の変形期間を定めることも可能です。小売業、旅館、料理店および飲食店の小規模事業に限り認められます。

 

変形労働時間制の導入については専門家の意見を聞きながら正しく行ってください。

法定労働時間の原則と例外①   2015.02.09

原則:

法定労働時間については原則として1日、及び1週間単位で以下の通り定められています。

 

1日       8時間まで

1週       40時間まで

 

逆に言うと、この時間を超える労働時間を設定することはそもそも違法であるということになります。例えば毎日9時から19時まで(休憩1時間)の勤務は1日8時間を超えているため原則から外れることになります。

 

例外:

ただし、この法定労働時間には以下のような例外があります。

 

①    規模や業種による例外

従業員10人未満の「商業、映画・演劇業(映画製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業」については、1週44時間までの労働時間設定が認められます。これは、週の法定労働時間が48時間だった時代の名残で、法定労働時間の短縮の影響がとくに大きいとみられる中小企業については要件を緩和する必要があったためです。詳しくは以下の業種が44時間制の対象となります。

 

商業      

卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、駐車場業、不動産管理業、

出版業(印刷部門を除く。)その他の商業

 

映画・演劇業      

映画の映写、演劇、その他興業の事業(映画製作・ビデオ製作の事業を除く。)

 

保健衛生業          

病院、診療所、保育園、老人ホーム等の社会福祉施設、浴場業(個室付き浴場業を除く。)、その他の保健衛生業

 

接客娯楽業          

旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業

 

自分の事業場の法定労働時間が何時間であるかによって労務管理のやり方が変わってきますので、ご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

定額残業制導入の注意点   2015.02.05

時間管理や計算の煩わしさから、残業代を含めて基本給で支払うという方式をとることがあります。しかしこの場合、たとえ「この給料は残業代込だから」という説明を従業員にしたとしても、それだけで実際に発生した残業代を支払ったことにはなりません。残業代を定額で支払う際は次の点に注意してください。

 

1、残業代を他の給与と明確に区分する

残業代を定額で支払う場合、まず「どれが残業代相当分なのか」を明確に分けておく必要があります。「総支給30万円、残業代込」としているならば、例えば「基本給25万円、定額残業手当5万円(合計27時間分)」などの表現にあらためてください。定額残業手当が何時間分の残業に当たるのかも明記する必要があることにも注意してください。

 

2、就業規則と雇用契約書、給与明細に制度を明記する

会社のルールブックである就業規則、その他給与明細や雇用契約書にも定額残業代のルールについて明記しましょう。定額残業代は「○時間分の残業分を固定で払うという基準を定め、残業が少なくても減額なし、残業が多くてオーバーする分は別途計算して払うと」いう趣旨ものでなくてはなりません。

 

3、実際に時間管理をする

定額残業代であることを主張するには、実際に労働時間が管理され、「定額残業代で定める時間を超えているかどうか、超えているとすればどれだけ超えているか」を毎月チェックしている状態でなくてはなりません。タイムカードや出勤簿がない状態では定額残業制が運用されているとはみなされないため注意が必要です。

 

定額残業制の導入には専門家の意見を聞きながら進めましょう。

 

 

ストレスチェック実施の義務化について   2015.02.02

労働安全衛生法が改正となり、平成27年12月1日から一定規模の事業主に対してストレスチェックが義務化されます。ポイントは以下の通りです。

 

1、概要

常時使用する労働者に対して、医師、保健師等※1による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック※2)を実施することが事業者の義務となります。ただし、労働者数50人未満の事業場は当分の間努力義務とされています。

 

※1 ストレスチェックの実施者は医師、保健師のほか、一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士を含める予定。

※2 検査項目は、「職業性ストレス簡易調査票」(57項目による検査)を参考とし、今後標準的な項目を示す予定。検査の頻度は、今後省令で定める予定で、1年ごとに1回とすることを想定。

○検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人通知され、本人の同意なく事業者に提供することは禁止されます。

○検査の結果、一定の要件※3に該当する労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施することが事業者の義務となります。また、申出を理由とする不利益な取扱いは禁止されます。

※3 要件は、今後省令で定める予定で、高ストレスと判定された者などを含める予定。

○直接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置※4を講じることが事業者の義務となります。

※4 就業上の措置とは、労働者の実情を考慮し、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を行うこと。

 

労働者のメンタル部分のケアについてもますます重要度が高まります。快適な職場づくりのため、法律に先駆けて対策を検討するとよいでしょう。

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