労務コラム

制服に着替える時間は、労働時間か   2013.04.04

2つの要件を満たす場合は、労働時間です。

①その行為が業務を行う上で必要不可欠である。 

②その行為が使用者(会社)の指揮命令下で拘束強制的に行われている。

 

 

(解説)

①の「必要不可欠」とは、防護服の着用など、法律で義務づけられた着替えや、社内の規則や慣習で義務づけられているものを指します。②の「指揮命令下」とは、業務の準備などを事業所内で行うことを義務づけられている、又は余儀なくされている場合等、そこに使用者(会社)の強制力が働いている場合を指します。

 

就業規則では、よく「着替えに要する時間は労働時間にしない」旨定めることがありますが、たとえ規則で定めていたとしても、上記の2つの要件を満たせば労働時間となります。着替えなどの作業に付帯する行為が労働時間にあたるか否かは、就業規則や労働協定の文面で決まるわけではなく、実態で判断されます。

 

 

【例1】労働時間と認めた場合(ある造船所のケース)

このケースでは、業務の準備行為を事業所内で行うよう義務づけていました。よって、着替え行為も「指揮命令下」であると判断され、始業時刻に着替えを始めたとして従業員の賃金をカットしたことにつき、裁判所はカットした賃金の支払いを会社に命じました。

 

【例2】労働時間と認めなかった場合(ある自動車会社のケース)

「着替えは準備行為であって、労働力の提供そのものではなく、特段の事情がなければ使用者の支配下ではない」と判断されました。よって、労働時間に含めるか否かは就業規則又は職場慣行によって決するのが妥当とされました。

 

 

→会社は、所定の場所で所定の服に着替えさせれば、着替え時間も含め労働時間であると考えましょう。

Q、 休日の出張旅行は休日出勤になるのか。   2013.04.03

A、使用者からの特別な指示がない限り、移動だけの旅行日は休日労働になりません。

 

 

(解説)

【移動時間=通勤時間】

移動時間は通勤時間と同じと考えられています。つまり、出張先までの移動は業務を遂行するために不可欠ですが、移動時間中は業務に従事しているとはみなされず、通勤時間と同じとされます。したがって、出張のために移動するだけの旅行日は、たとえ社員の休日であっても休日労働にはなりません。

 

【特別な指示とは】

しかし、移動中に貴重品を運搬したり、監視したりといった特別な指示があれば、移動時間も労働しているとみなされます。この場合、移動するだけの日も労働日です。

 

 

休日労働には36協定が必要です

会社が社員に休日労働を命じるには、36協定(労働基準法第36条の時間外及び休日の労働についての取り決め)の締結が必要となります。また、法定休日労働に対しては、通常賃金の3割5分増しの賃金を払わなくてはなりません。

 

→会社としては、なるべく休日にかかる出張をさせない等の配慮が必要です。なぜなら、休日に出張にかかる移動を命じられ、プライベートな時間を拘束された場合、出張をしていない同僚と比べて損をしていると感じる社員もいるかもしれないからです。たとえ法律的には労働時間に当たらなくても、感情的なことにも配慮したほうがトラブル防止になるでしょう。

 

やむを得ず命じなければならない時は、休日の振替を行うのが望ましいでしょう。また、出張手当(出張の必要費用を補填する目的で支払われる手当)などを支給するとトラブル防止につながります。

転勤命令について   2013.03.25

社員を転勤させるとき、会社は一方的に勤務場所を変更できるのでしょうか?

 

回答:

完全に勤務地を限定していれば同意なしの変更はできないが、そのような特約がなく、就業規則や雇用契約書に転勤の可能性が記してある場合には、常識的範囲の転勤命令ができます。

 

(解説)

労働契約を結ぶ際には、「就業の場所」や「職務の内容」など重要な労働条件が明らかにされることになっています。転勤の可能性についてはこの際に明示すべき事柄のひとつです。その労働条件明示の際に、「勤務場所限定」としていたのであれば、転勤命令は認められないでしょう。

 

逆に、そのような特約をしていない場合で、長期の雇用を見込んで期間の定めのない契約(いわゆる正社員としての雇用契約)を結んでいるようなときは、一定の期間が経過して条件がそろえば、会社は業務命令として社員の職務内容や勤務地を変更する権限を有すると考えられています。

 

その条件とは、次のようなことです。

1、 就業規則、雇用契約書などに、転勤を命じる場合があることを明記していること

2、 業務上の必要性、合理性があること

3、場合によっては前例があること

 

まずは、(1)就業規則や雇用契約書に転勤の可能性について記載されていることが求められます。そして(2)人員の適正配置や、会社組織編成の変更、組織活性化等の目的で人員を移動する必要性がある、対象者の選定に一定の合理性があることも必要でしょう。さらに、(3)その会社で同じように転勤命令が慣習化されているという状況も場合によっては必要です。

 

これらの条件が整っている場合、原則として社員は特別な事情がない限り転勤命令を拒否することはできません。

ただし、次のような場合にはその転勤命令は無効となることもあるでしょう。

1、 業務上の必要性もなく転勤を命じる場合

2、 ほかの不当な目的で転勤を命じる場合

3、 その転勤命令が、社員に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせることになる場合

転勤については会社はその命令権をもつものの、持病を持つものや家族の介護をしている者など、私生活上特に配慮が必要な社員に対する転勤命令は慎重に判断する必要があるでしょう。

 

以上、転勤命令についてでした。

労働者からの退職申し出について   2013.03.24

社員が会社の慰留を受け入れず、一方的に退職をした結果会社が損害を受けた場合、損害賠償を請求できるものでしょうか?

 

回答:

期間の定めのない雇用契約をしている社員が2週間前に退職を申し出ている場合、退職は民法上認められ、退職を理由とする損害賠償を請求できないと考えられます。

 

解説:

労働契約には、期間を定めたものと、期間の定めがないものとがあります。

期間を定めた契約を結んでいるときは、やむを得ない事情がない限り、期間が満了するまで退職することは認められません。

しかし、期間が定められていない契約の場合には、基本的に社員は会社の許可を得ることなく、いつでも退職できます。

 

とは言え、社員が任せられている職務を引き継ぎせずに即日退職をすると、会社の営業に不利益を与えることになります。やはり事前に申し出をすることが「社会通念上」は求められます。では法律上はどのようになっているのでしょうか。

 

実は労働基準法をはじめとする労働諸法令では、社員側からの退職申出の期日についてはとくに定めていません。一方で民法では以下の様に定められています。

 

民法第627条第1項

期間の定めのない労働契約については、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができ、解約の申し入れから2週間を経過することによって終了する。

 

つまり社員側からの退職申し出については、一般法である民法の規定が適用され、原則として2週間以上前に申し出ればよいことになっています。つまり今回のケースでは2週間前という条件を満たしていれば退職申し出そのものは有効になります。

 

ところで、就業規則上はしばしば「一般社員は1ヶ月前、役職者は3ヶ月前」などと民法上の規定よりも長めに期間を定めていることが多いですが、これは実は会社独自のルールとして定めているにすぎず、法律上は民法の規定が優先します。ただし、それでも就業規則には長めに期間を定め、会社の慣習として退職社員の協力を求めるほうが実務上はよいでしょう。

 

以上労働者からの退職申し出についてでした。

残業代の定額支給について   2013.03.01

残業代の定額支給を行うとき、支給額より多く残業した社員をどう扱うか?

 

回答:

差額分の残業代の支払いが必要となります。社内ルールで残業上限時間を決めるなど、労働時間増加を抑制する取り組みを検討しましょう。

 

【残業代(時間外労働にかかる給与)】

会社が定める所定労働時間を超えて働く場合、その分の残業代支払いが必要です。またその残業が法定労働時間を超えている場合、通常より割増して支給をする必要があることはご存じのことと思います。

 

サービス業など一部の業種では、

 

①1日8時間

②1週40時間(44時間のこともあり)

 

という法定労働時間内に労働時間を抑えることが難しく、残業が常態化してしまうこともあります。そのようなときによくとられる選択肢が「定額残業代」という支給方法です。

 

【定額残業代とは】

定額残業代(固定残業手当・残業見合い手当等)とは、1ヶ月の見込残業時間数を元に残業代を計算し、固定的手当として支給するものを指します。例えば、1日1時間は常に残業をしているなら、1時間×月間22日出勤=22時間分の残業代を定額支給するという支払い方です。

 

この場合、「定額で払っているから、追加での残業代は払わない」という理屈は通用しません。なぜなら、賃金は「事実としての」残業時間数に応じて支払わなければならないからです。先の例で言うと、タイムカード集計の結果残業時間が「25時間」であったとすると、その差(25-22=3時間)分の残業代支給の必要があります。

 

残業が常態化することは、労働者の健康面、人件費の面、社内モラルの面(時間生産性が低いダラダラ残業)などの面で弊害があります。

例えば、定額残業で見込んだ残業時間数を上限と社内で定めたり、ノー残業デーを導入したりといった取り組みにより、効率的な業務を奨励するとよいでしょう。

 

以上残業代の定額支給についてでした。

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