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就業規則について 2013.02.19
就業規則を作成した時、すべての社員に同じ規則が適用されるのでしょうか?
回答:
対象者ごとに別規程を設けなければ、同一の規則が全社員に適用されるべきだと考えられます。多様な働き方に合わせてパートタイマー規程など別規程を検討しましょう。
(就業規則の意味合い)
就業規則には、その会社において「統一的に」労働力の管理を行うための手段という側面があります。この意味では、原則として会社におけるすべての社員が、等しくこの適用を受けることになります。
ただし、現代は働き方が多様化していることから、統一的な管理がなじまないことが想定できます。例えば、入社時の必要提出書類はパートタイマーの方が簡略化されることもあります。また、労働時間や休日などの条件は正社員と非正規社員とは異なることもあるでしょう。
(就業規則を分けて作成する)
これらのことから、正社員用とパートタイム労働者用といった異なる就業規則を作成することが認められています。
ただし、この場合、それぞれの規程についての「適用対象者」を明らかにしておく必要があります。
雇用形態によってその権利義務が異なる場合、それぞれの適用対象者を定めて、各形態ごとにルール作りをしましょう。
(届出上の注意)
就業規則を作成する義務がある会社(常時使用する労働者が10人以上)の場合、正社員用の就業規則だけ作成してパートタイム労働者用の就業規則を作成しないということは認められません。パートタイム労働者用の就業規則を変更する場合でも、やはり労働基準監督署に届け出る必要があります。
なお、平成20年4月に改正されたパートタイム労働法では、このような無用なトラブルを避けるために、雇い入れ時と契約更新時に「退職手当」「昇給」「給与」の有無を文章等の交付により明示することが義務付けられました。
以上、就業規則についてでした。
内定取り消しについて 2013.02.18
採用内定を取り消すことはできるのですか?
回答:
取消は不可能ではありませんが、多くの採用内定は労働契約が成立したことを意味しますので、解雇と同様に慎重に行う必要があります。
「採用内定」は、一般医「解約権留保付始期付雇用契約」が成立したものと言われます。
言い換えると、「解約権も残っている、スタート時期を定めた雇用契約」ということになります。
採用内定の仕方は様々で、どんな内定でも解約権留保付始期付雇用契約が成立したことは一概に言えませんが、内定通知に「最終的な採否の決定は追って連絡します」といった(採用が確定していないような)記載がない限り、雇用契約は成立したものと考えられます。
こうして解約権留保付始期付雇用契約が成立すると、もう使用者は正当な理由なく内定を取り消すことはできません。なぜなら、雇用契約が成立しているということは、労働基準法上の解雇に関する定め(解雇理由に合理性および社会通念上の相当性が必要)の適用を受けることになるからです。
(採用内定取り消しができる具体例)
判例では、正当な理由とは「採用内定当時知ることが出来ず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らし客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認することができる」ものとされています。
具体的な例をあげると、次のような場合が考えられます。
1、 新規学卒者が卒業できなかった場合
2、 提出書類などに虚偽の記載があったり、虚偽の事実を述べた場合
(虚偽の内容が軽微であるときは、内定を取り消しが認められない場合もある)
3、 採用後の業務に支障が出るほどの健康異常が発生した場合
4、 その他不適格事由があった場合(犯罪を犯した等の場合)
これらは客観的合理性、社会通念上相当性という原則に照らしてみると、内定取り消しが認められる可能性が高いでしょう。しかしこれらの場合でも、内定時に「これらのことがあったら内定取消が起こること」を相手方に通知しておく等のリスク対策をすることをお勧めします。
(業績悪化による内定取り消しについて)
たとえば、予定通りの内定者を雇い入れると人件費が経営を圧迫していきづまることが明らかであり、すでに雇用している社員の解雇を回避するためには、内定取り消しはできるのでしょうか。
この場合は、上記の経営ひっ迫の事実のほか、内定取り消しを回避するために最大限の努力をしていたこと、内定のやむなきに至った時点ですみやかに取り消しの補償をするなど、
とり得る措置を尽くす必要があります。内定取消回避のための努力の程度を見られるということです。
以上、内定取り消しについてでした。
試用期間の延長について 2013.02.15
試用期間を延長したい場合、どんな理由なら延長できるのでしょうか?
回答:就業規則などの根拠がない試用期間の延長は原則としてできないが、たとえ明文化されている場合でも、会社側からの恣意的な延長は難しいでしょう。
前提:
まず、試用期間を設ける場合には、就業規則などでその期間をあらかじめ定めていかねばなりません。そして、「延長があるかもしれないこと」が明記されていない限り、この期間は原則として会社が一方的に延長できません。
また、たとえ明文化されていたとしても、一方的な試用期間延長は認められません。
なぜなら試用期間中は、会社側からみて解雇の有効性を主張しやすく、社員にとって不安定な状況であるからです。
ですから、たとえ試用期間を延長する場合がある旨の規定があったとしても、これだけを根拠として使用者が期間延長することは許されず、延長することについて合理的な理由が求められます。
では、合理的な理由とは何でしょうか。
例:当初の試用期間中に採否の判断をできない場合
試用期間中に交通事故や私傷病等でやむを得ず欠勤をした結果、(会社としては試用期間に適格性を判断したかったのに)正社員としての適格性を判断できないことが考えられます。
この場合は合理性がある程度認められる余地がありますが、それにしても一方的な延長をせず、理由を説明して労働者の合意を取ることがトラブル回避のためには重要です。
なお、過去の判例では、「会社の慣行として長年にわたって試用期間の延長が随時行われてきており、社員も慣行によるものとして延長を受け入れた事実がある場合については、試用期間を延長することを認めた」ものもあります。
それぞれの会社の文化や風習も合理性判断の一因となります。
いずれにせよ、試用期間延長の判断は慎重に行ってください。
以上、試用期間の延長についてでした。
退職願の撤回について 2013.02.14
退職願が提出されたとき、いったん受理された後で撤回できるのでしょうか?
回答:退職願の二つの性格によって撤回の可否が決まります。
退職願には二つの意味があると言われています。
1、 退職の申し込み(相手の合意を要する)
2、 労働者の一方的な意思表示(相手の合意を要しない)
「退職の申し込み」の場合は、退職願を出したあとでも、その後の話し合いによっては取下げられる余地があります。
しかし、2の労働者の一方的な意思表示は、会社の意思に関わりなく、期日の到来をもって自動的に労働契約関係を終了させるものです。
(1、退職の申し込みの場合)
1の退職の申し込みの時は、会社が退職に合意したことをもってはじめて労働契約が終了します。この場合、会社による合意したという意思表示が、当該労働者に到達するまでの間は、社員は一方的にこれを取り下げることができることになります。反対に、到達後であれば、原則として社員は会社の承諾がなければ、これを取下げることができません。
ただし、例外として、社員が会社から詐欺とか脅迫によって退職願を出させられた場合には、撤回することが認められます。
(2、退職願が「一方的な意思表示」の場合)
一方、2に一方的な意思表示である場合は、社員が退職願を提出した時点で、もう原則として社員は会社の承諾なしに取り下げることができません。
(何を持って二つの性格のどちらであるかを判断するか)
社員が退職願を出したいきさつや理由を総合的に判断する必要があるのですが、一般的には社員が「慰留は受け付けない」とか「すでに転職先と約束してある」など、一方的な意思表示であることを明らかにする合動をとらない限り、退職の申し込み、つまり「会社の合意をもって初めて成立する」ことになるでしょう。
なお、会社側からの合意は必ずしも書面による必要はありません。口頭でも有効となります。
以上、退職願の撤回についてでした。
退職社員への賞与について 2013.01.30
辞めた従業員にも在社期間の賞与は出すべきでしょうか。
回答:
賞与支払いに関するルールを整備していれば、賞与支給日に在籍していない社員には支給しなくてもよいでしょう。ただし、トラブル予防のため自社におけるボーナスの性格をきちんと定義付けましょう。
(支給日在籍要件)
賞与の支給条件として、ボーナスはあくまでも支給日に在籍していなければ支払われない。という「支給日在籍要件が明確」に定められていれば、支給対象期間すべてにわたって在籍していてもボーナス支給日に在籍していなければ支給対象者とはならず、賃金の不払いにはなりません。
(賞与の性格)
法律上は賞与についての明確な定義はありませんが、一般には以下の3つの性格のいずれかを有すると言われています。
① 賃金の後払い的性格のもの
② 功労報酬的性格のもの
③ 成果分配的(給与や賞与の支給額を、経営の成果に結び付けて決定する)性格のもの
賞与が①の「賃金の後払い的性格のもの」である場合には、前述のような支給日在籍要件を設けるのは論理的に難しいでしょう。
しかし、②の「功労報酬的性格のもの」であるならば、支給日在籍要件を設けることができます。功労報償とは、将来に向けたインセンティブ、つまり、「今後もしっかり働いてください」という動機づけであると解釈できるからです。
いずれにせよ、就業規則・賃金規程その他の規則で、賞与の支払い要件をきちんと定義しておく必要があります。
以上、退職社員への賞与についてでした。
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