労務コラム

掃除時間は労働時間か?   2015.07.17

社内の掃除や着替えなど、働く前の準備や後片付けの時間は労働時間なのでしょうか。

 

労働時間には次のような判断基準があります。

 

①    朝の掃除、準備

この場合、仕事前の掃除が会社に命じられていたり、当番制によってやらざるを得なくなっている場合など、会社からの命令だと考えることができる場合は労働時間となります。

ボランティアで行っている場合には労働時間になりません。

 

 

②    作業準備時間、後片付けの時間

仕事を進めるために必要な作業であれば、労働時間となります。

 

 例:デパートなど、開店と同時に全員が職場につき、お客様を迎えるための開店準備作業をする場合や、閉店後、翌日の仕入れを決めるために後片付けを兼ねて売上と在庫を計算したりする場合など

 

 この場合も労働者の意思で業務を行う場合は労働時間になりません。

 

③    更衣時間

会社内において着替えを行うことを会社から強制されている場合には、

会社の命令であると考え、労働時間となります。

 

④    仕事前の朝礼の時間

仕事前の朝礼の時間に関しても、「会社の命令なのかどうか」で判断されることになります。

また、命令ではないにしろ朝礼に参加するかどうかで会社からの評価が変わってくる場合は労働時間となります。朝礼で当日の仕事の説明をする場合にも同様です。

 

以上をまとめると、準備や後片付けを労働時間とするかどうかは、会社に命じられたことか、仕事を進めるために絶対に必要なことかどうかで変わってくるという事です。

 

仕事が始められる状態で始業時間になり、終業時刻になって後片付けを始めるのは当たり前のことのように思えます。

 

しかし、そのための準備や片付けの時間が労働時間に当てはまった場合、給料の支払いが必要になってしまいます。労働時間を決める時には、「世間一般の常識」だけではなく、このような「法律で決まっていること」があることに気をつけましょう。

割増賃金について   2015.07.10

 労働者は労働が1日8時間を超えた時間(時間外)について、通常の賃金の計算方法よりも割増してお金を受け取ることができます。また午後10時~午前5時の深夜時間に働いた時間についても同様です。この場合の計算方法は以下の場合に分けられます。

 

①    1日8時間を超えた労働時間が1ヶ月60時間以内の場合→2割5分以上で計算

 

②    1日8時間を超えた労働時間が1ヶ月60時間を超えた場合→5割以上で計算

※中小企業については適用が猶予されているため2割5分以上

 

③    午後10時~午前5時に働いた場合→2割5分以上で計算

 

④    法定休日に労働させた場合→3割5分以上で計算

※法定休日:労働基準法などの法律で決められた休日のこと。

 

割増するお金の計算のベースとなる賃金には、家族・通勤手当などの賃金は入れません。

 

 

例:会社指定の労働時間が午前8時から午後5時(休憩1時間)までの実働8時間、

1か月45時間、1年360時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を3割

とする大企業の場合

 

 ○1か月45時間以内の時間外労働について

 

17時から22時→1時間当たり賃金×1.25 (時間外労働)

 

22時から5時→1時間当たり賃金×(1.25+0.25) (時間外労働+深夜労働)

 

5時から8時→1時間当たり賃金×1.25  (時間外労働)

 

 

 ○1か月45時間超~60時間以内又は1年360時間超の時間外労働について

 

 

17時から22時→1時間当たり賃金×1.30 (時間外労働)

 

22時から5時→1時間当たり賃金×(1.30+0.25)(時間外労働+深夜労働)

 

5時から8時→1時間当たり賃金×1.30(時間外労働)

 

 

 

○1か月60時間超の時間外労働について

 

17時から22時→1時間当たり賃金×1.50(時間外労働)

 

22時から5時→1時間当たり賃金×(1.50+0.25)(時間外労働+深夜労働)

 

5時から8時→1時間当たり賃金×1.50(時間外労働)

 

 

○法定休日労働の割増率

 

5時から22時→1時間当たり賃金×1.35(法定休日労働)

 

22時から5時→1時間当たり賃金×(1.35+0.25)(法定休日労働+深夜労働)

 

 

学生が内定を辞退した場合、内定者への損害賠償請求はできるか   2015.07.10

内定辞退は会社にとって困ったことですが、内定辞退について学生に損害賠償請求ができるかというと、厳しいのが実情です。

 

内定は「解約権を留保した始期付雇用契約」という法的な性格があります。

入社日(例えば4月1日)から働くという『始期』と、従業員として不適格であると入社日前に分かった場合には、会社が内定を取り消すことができる『解約権』が含まれています。つまり内定は、期限や会社の解約権などの条件が付いた雇用契約であると言われています。

 

したがって内定辞退についても普通の雇用契約の対象と同じように考えることができます。

 

雇用契約終了は2週間前に言えばよい

契約期間が決まっていない労働契約では、2週間前に会社を辞めることを伝えれば、会社を辞めることができます。

従って、内定した場合でも、学生は入社の2週間に入社を辞めることを会社に伝えれば入社を取りやめることができます。この場合、学生の会社に対する損害賠償は発生しないでしょう。逆に2週間前という期限を守らず、突然内定を辞退して、会社に損害を与えてしまった場合、会社に対して損害賠償を支払わなければならない可能性があります。ただ、まだ働いていない入社前の学生が内定を辞退したからといって、すぐに会社に大きな損害が出る可能性は低いです。なので、学生に対して損害賠償が命じられることは珍しいと考えられます。

 

学生が入社直前に内定を辞退したとしても、会社に損害賠償しなければならない場合は珍しいですが、社会の常識からいって、できるだけ早く会社に辞退の旨を伝えるにこしたことはないでしょう。

フレックスタイム制とは   2015.06.30

フレックスタイム制とは、始業時刻と終業時刻の決定を社員自身に任せる制度です。

 

○フレックスタイム制のメリット

労働者が自由に出社や退社の時刻を決定することで、仕事と生活のバランスがとりやすくなったり、通勤ラッシュを避けられるなどのメリットがあります。使用者は、フレキシブルタイム(労働者がその選択により労働することができる時間帯)を定めたり、会議などのために従業員の出社を確保する必要に備えて、コアタイム(労働者が労働しなければならない時間帯)を設定することもできます。

 

○フレックスタイム制を採用するには

 

フレックスタイム制を採用するには、始業・終業時刻の決定を労働者に委ねる旨を就業規則で定める必要があります。これにより労働者は、労働契約上、始業・終業時刻の決定権を取得します。このほかに、使用者は事業場に過半数労働者を組織する労働組合があればその組合、そうした組合がない場合は過半数代表者と労使協定を締結し、フレックスタイム制の対象者範囲、1カ月以内の期間(フレックスタイム制導入の単位期間を「清算期間」といいます)、清算期間の総労働時間、および1日の標準労働時間を決めます。また、コアタイムやフレキシブルタイムを設ける場合はその時間帯を定めることが必要になります。

 

○フレックスタイム制における残業代

フレックスタイム制では1日・1週の労働時間ではなく、清算期間内の労働時間合計を超えたかどうかによって時間外労働の有無が判断されます。

 

 

 

 

1ヶ月単位の変形労働時間制とは   2015.06.30

1ヶ月単位の変形労働時間制とは1ヶ月を平均して1週間の労働時間が週40時間以下になっていれば、 労働時間が1日8時間、週40時間を超えても、時間外労働の扱いをしなくて済むという制度です。この制度は1ヶ月の中で繁閑に差がある場合に導入することが適しています。

 

 

○ 労使協定などに定めること

労使協定または就業規則その他これに準ずるものにより、この制度に関する規定を設ける必要があります。

この際、各日および各週の労働時間を具体的に定めておく必要があります。つまり、勤務カレンダーなどで勤務日やその日ごとの勤務時間を毎月決めなければならなりません。会社が業務の都合によって自由に労働時間を変更することはできません。

 

 

○ 時間外労働となる場合

1日または1週の法定労働時間を超えて労働させることができますが、以下の場合には時間外労働となります。

 

①    労使協定などにより8時間を超える時間を定めた日はその時間を、それ以外の日は8時間を超えて労        働した時間。

 

②    労使協定などにより40時間を超える時間を定めた週はその時間を、それ以外の週は40時間を超えて        労働した時間。(①で時間外労働となる時間を除く)

 

③    変形期間については、以下の式により計算される変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労        働した時間。(①または②で時間外労働となる時間を除く)

       →40(時間)×変形期間の暦日数/7

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